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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
9/88

なにそれ知らない

中学の頃はほとんどの人間と表面上うまく付き合っていたし、内心でもただただ無関心でいれた。

だがそれは全員というわけではない。藤堂久愛、仲良しグループの中でも特に仲の良かった男子2人、そしてこの夕陽紅葉だけは無理だった。

それぞれに対しての感じ方は違うが、この夕陽紅葉は藤堂と並んで強烈だった。間柄で言えば1番近かったのだから当然といえば当然だろう。


「悠ってさ、何の部活入るか考えてる?」

「んー、今のところは入るつもりないかな」

「え、何言ってんの?この学校部活強制だよ?」


え、初知りなんだけど。部活が強制とは思わなかった。てっきり進学校の高校ってものは、どこも勉強に専念できるように部活に入るかどうかは個人の裁量に(ゆだ)ねられるのだと勝手に思い込んでいた。


「まじで?」

「まじまじ。私は去年うちの中学から涼高にきた先輩に聞いたんだけど、悠は誰からも聞いてなかったみたいね。確か5月になるまでに決めないといけないんだったかな?でもこの高校普通の高校よりもいろんな部活があるみたいよ」

「へー、紅葉は目星ついてんの?」


紅葉と同じ部活に入らないために情報収集だ。


「私は中学の頃と同じでテニス部にしようって思ってる。ここのテニス部もそこまでガチガチって感じじゃないらしいし、私自身体は動かしたいしね。あ、予鈴(よれい)鳴ったね。じゃあ私席に戻るから、またね」

「ん」


オッケー第一関門突破。


先生が来るまであと5分はあるし、部活の事でも考えてみよう。

運動部はまあ基本どこもきついよな。紅葉が言ってたガチガチじゃないテニス部だって朝錬なんかはあるだろうし、毎日練習があると思っていいだろう。もしも体を動かしたくなったらランニングでもすれば俺的には十分だし運動部を選択する必要性がない。

ならやっぱり文化部になるだろうな。文化部の中でも吹奏楽部なんて運動部と同様にきついだろう。美術部はなんか楽そうだけど、絵心もないし気は進まない。まあどんな部活があるか見てみないとわからないから今考える意味は薄いだろうけど、やっぱり本命は文芸部だろ。読書は結構好きだしな。漫画だけど。

でも、紅葉も一般的な高校に比べて部活動が多彩みたいなことを言っていた。なら掘り出し物のような部活もあるかもな。


「……あなあ、聞いてるか?」


ん?と前を向くと男子生徒が俺に話しかけてきてることに気付く。


「ん、あ悪い。ちょっと考え事してて自分の世界に入ってた」

「心ここにあらずって感じだったけど、もしかしたら俺無視されてんじゃないかとちょっと怖かったわ。俺曽我茂男(そがしげお)。よろしくな」


曽我氏?


「よろしく。俺は高崎悠。下の名前でも上の名前でも好きに呼んでくれ」

「じゃあ悠な。なあなあさっき上の空なときに聞こうとしたことなんだけど、さっきの悠の彼女かなんかか?」

「あー違う違う。中学が同じだったんだよ」

「よかったー!」


なんかすごく安心している。もしかして紅葉に一目惚れでもしたか?顔は結構いいからな。


「よかった?」

「いきなり友達を失わずに済んだ。ほらさ、入学早々彼女連れとかなんか腹立つじゃん?」

「あーそういうね、まあさっきの子だけじゃなくて彼女自体いないから安心して。あ、先生入ってきたぞ」

「あ、ほんとだな」

「静かにしろ。席につけ」


先生がそう言って、立っている生徒が席に着こうと移動を始めると同時に本鈴も鳴る。


「おはよう、そして入学おめでとう。今日から君たちの担任を務める多井中(たいなか)だ。いろいろ話したいことはあるが、まずは体育館に移動して入学式に参加する。体育館の場所は分からないだろうから私が先導する。今君たちは出席番号順で座っているので、そのままの順で廊下に並び直してくれ」


俺たちの担任はずいぶん若そうな女性だ。20代後半~30代前半といったところだろうか。しっかりしてるように見えて、そこはかとなくくたびれた雰囲気を(かも)し出している。まあ本当にだるいなんて事もなくそういう性質なのだろう。

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