文化祭2日目①
文化祭2日目。
昨日はクラスを全く手伝わなかった分、今日はこちらに付きっ切りとなる。
まあ俺の役目といっても注文が来たときに料理をするだけ。
ドリンクやデザートなどももちろん提供しているが、メインとなる料理としてはオムライス、ホットサンド、ミートソーススパゲティの3種。
そしてキッチンでは各員作る料理が固定化されており、俺はオムライス担当だ。
昼食時が終わり客足が緩やかになってきたところで一度ホールに出る事になってはいるが、それを除けばオムライスbotになりきればいいのだから比較的楽といっていいだろう。
「悠ー、オムライス1つよろしくー」
「んー」
また注文が入ったようだ。
というか紅葉がオムライスの注文を持ってくる回数が少し多い気がするが、まさか「オムライスがおすすめですー」なんて言ってないだろうな……いやさすがにないか。
そうして慣れた手つきでオムライスを作り始めた俺は、暇つぶしにと昨日の夜の事を思い出す。
▽
「ねえお父さん、悠の部活って悠を含めて3人って言ってたじゃん?残りの2人って女の子なんだよ?知ってた?」
「初耳だな」
「ご飯を食べながら喋るんじゃありません」
いきなり何を言い出すんだこの妹は。
たしかに「俺以外女子でさー」なんて伝えてないけど、何かやましいところがあるから隠していたわけじゃない。
わざわざ言う意味など端からないし、なにより年頃の女子に話すとめんどくさいことになると思ったから黙っていた。
そして実際めんどくさいことになっているのだから俺の選択は間違っていない。
「いっつも自分がぺちゃくちゃ喋ってるくせに。でね、2人とも感じの良さそうな人で、今度はうちでバーベキューしませんか?って誘っちゃったんだけどいいよね?」
感じの良さそうな人?
少なくとも結城に関しては違うだろ。あれは最も感じの悪い人間だ。
というかやけにテンション高いな。
「うちバーベキューするための道具無いしだめだよね。任せて、俺から断っとく」
「いいだろう。いつもお世話になっているんだ。バーベキューセットなど買えばいい」
……父さん?
男は男で団結するべきだと思うんだよね。じゃないと女という一大勢力に一方的に嬲られることになるよ?
だからお願い、俺のウインクで察して!
「お父さん、そんなのに流されちゃだめだからね」
「ああ」
悲しきかな、俺に味方などいないらしい。
「アウトドア部のことが嫌いなわけではないんだろう?私も一度会っておきたいと思っていたんだ。保護者として挨拶をしなければならんしな。まあ悠が普段そういうことを話さないのも悪い」
最もらしい理由織り交ぜてるけど、絶対好奇心に負けただけでしょ!保護者が部員に挨拶する必要性とかないから!
しかし父さんが女子高生に会いたがっていたなんて……そういえば前に入院した時、父さんに助けたい人がいる的なことを言った気がするけど、同じ部活の人間って当たりをつけてるわけじゃないよね?
そう考えるとさらに嫌になってきた……。
「それにね、うちではアウトドア部とか言ってるくせに外遊部って名前なんだってさ」
「本当に知らない事ばかりだな。悠、この際だ、高校でのことを話しなさい」
そして尋問が始まった。
俺は巧妙に嘘を混ぜながら高校の事を話すが、なぜかその度にツッコまれ、結局はクラスと部でそれぞれどんな感じで過ごしているのかを話すこととなった。まあかなり大雑把にではあるが。
「多井中先生がまじめで実直なことは知っているが、その橘さんと結城さんはどんな子なんだ?」
部長と結城がどういう人間かを改めて考えてみるが、正確に言い表すのは正直難しい。説明するだけでぐちゃぐちゃしてしまいそうだ。
「うーん、個性的な子。というか先生がまじめ……」
「違うのか?私は2度話しただけだから悠より把握しているわけじゃないが……しかし人格者なことには変わりないだろう」
「そう言われればそうかな。まあ部長や結城にしても、先生にしても自分で確かめた方が早いと思う。あ、でも父さんがバーベキューに参加するなら先生は来る必要ないか」
そう、先生はあくまで監督する大人がいないから、毎度スケジュールを調整して参加してくれていただけだ。
保護者が同伴しているならばわざわざ参加する必要はない。
「先生にも都合があるだろうから無理を言ってはいけないが、一度声は掛けてみなさい」
「わかった」
外遊部でも家でも、既にバーベキューをする体で話は進み外堀は埋まりきってしまった。
今になって外遊部員と家族が接近するのがなんだかむずがゆく感じて抵抗してしまったが、こうなってしまってはもう無理だ。
それに考えてみれば一度部長の家でお世話になっておいて、自分の家は嫌なんて虫が良すぎるな。
「そういえば紗由、明日は文化祭に来ても俺キッチンだから会えないからな」
「どうしよっかなー」
「紅葉がいるけど?」
一発だった。




