文化祭1日目③
でもなんでここに紗由がいるんだ?
……そういえば昨晩のご飯時「明日友達と遊ぶから」なんて言ってたな。微かにいやらしい笑みを浮かべていた気がしたがこういうことだったか。
まあ多少のいたずら心があったにしても、本人の主目的は志望校の下見なんだろうけど――兄妹でこんなサプライズなんていらないから!
「で、友達と来たんだろ?どこにいんの?」
友達と来たはずなのに紗由の周りには誰も見当たらない。
「ああ、悠と直接の面識があるわけじゃないし連れて来てもあれだから2人で回ってもらってる」
確かに友達の立場になって考えれば、初めて訪れた高校で外遊部を探し出し、その挙句知らない人間との場を強要されるなどただの罰ゲームか。
俺がその立場なら土下座をしてでも避けようとするかもしれない。
「……誰?」
「悠がいつもお世話になってます。妹の高崎紗由って言います」
部長の言葉に紗由は俺の時とは違い丁寧に返す。
ホント妹という生き物の見せる顔は家族の前と他人の前で160度くらい違う――いやまあ他の妹を知らないけどさ。
紗由がいなければ、俺も妹という存在にアニメやラノベのような幻想を抱いていたのだろうか。
というか俺から先に紹介すべきだったのに急の家族の来訪で頭から抜け落ちてしまっていたな。
「……妹、そう。よかったら高崎妹も何か食べていく?屋台で買った食べ物がまだいっぱいある」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて」
瞬く間に打ち解けてしまった。
紗由が人当たりがいいのもあるが……部長が初対面の人と普通に喋れてる!
なんだか今日は驚いてばかりな気がする。
しかし紗由としても嬉しいんじゃないだろうか。友達とよく遊ぶ紗由にとってお小遣いのやりくりは俺以上に死活問題らしいしな。
「でも、悠の部活にこんなきれいな人達がいるなんて知りませんでした。えっと、お二人の名前をお聞ききしても?」
「そうだった。橘雪奈、この部活の部長をしてる」
まあ部長が抜けているのはいつも通りか。
さて、結城はどうするだろうか。
俺と同じDNAを持った人間からの質問だ。無視や反発も十分あり得る。
「結城幸だ」
そうですか。つまりお前の敵は俺だけと。
「橘先輩に、結城先輩ですね。どうです?悠はご迷惑をおかけしてないですか?」
「私がしっかり面倒見てる」
「手は焼けるがどうにか手綱は握れている」
いや、家族の前なんだから少しは遠慮しようよ?これだからコミュ障は。
しかも半分くらいは事実無根だし。
今は黙って聞いてやっているが、こうなったら家に帰って普段俺がどれだけ苦労しているかを紗由に言い聞かせるべきかもしれないな。
「フフッ、楽しそうな部活じゃない」
俺が文句でも言ってやりたいと思っているのに反して、なぜか紗由はとても嬉しそうだ。
自分の兄が無能のように言われてるわけだけど、お前は本当にそれでいいの?
「そう見えるか?」
「高崎、遠慮すべきじゃない。外遊部を結構気に入ってることは既に調べがついている」
確かにそんなニュアンスのこと前に言いましたけど!
なんか、こう……家族の前で言うのやめてくれません?
「悠も素直になればいいんですけどね。そういえばこの部活ってバーベキューしたりもするんですよね?前は橘先輩の家でやったって聞いたんですけど、今度やることがあれば是非うちを使ってください!」
「お前、自分も一緒に食べたいだけだろ」
「いいじゃん。それに私もこの学校目指すんだから、親睦を深めることは悪いことじゃないでしょ?」
それは単に同じ学校の人間とって意味だよな?まさか紗由までこの部活に入ろうとしてないよな?
「わかった。近いうちに高崎の家でバーベキューしよう。結城もいい?」
「はい」
えっ、なにこの決断力。
3人寄れば文殊の知恵とはまた違うかもしれないが、女3人になってからいきなりパワーを増したんだけど。
ちょっと肩身狭いよ?
「やった!あー名残惜しいですが、友達を放置しすぎるわけにもいかないですしそろそろ行かなくちゃ……今日はお二人に会えてよかったです。不束な兄ですがこれからもよろしくお願いしますね。それとごちそうさまでした!」
そうして台風の目は去って行く。
無事に外遊部の次の活動が、俺を置き去りにして決まったようだ。
「高崎妹、いい子」
「あれは本当に貴様の妹か?輝いていたぞ?」
「俺も元はあんな感じだったんですけどね」
「「??」」
いや、冗談でもなんでもないからね?




