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文化祭1日目②

振り向いた時に2人から受けた印象はなかなかに強烈で、思わず半歩後ずさってしまった。


しかし、この後も共に行動しないといけないのだから恐る恐る「あの」と話し掛けると「部室に帰る」と返ってきたかと思えば2人して部室の方向へときびすを返し、その背中が喋るなと告げていた気がしたので俺も黙って後を追うしかなかった。

笑顔が溢れる中でそんな俺達3人は明らかに浮いており、周りからは百鬼夜行のように異質に見えていたのではないだろうか。

……なんか俺の文化祭、試練すぎない?何かしたっけ?


そう思っていたのだが、そんなことはまるで俺の気のせいだったとでもいうように、部室に帰って改めて見た2人はいつもと変わらぬ様子に戻っていた。

もしかしたら俺は幻想を見ていたのかもしれない――うん、きっとそうだ。


「高崎、土御門先輩と知り合いだったんだ」


部長が口を開く。

そういえば部長も元は園芸部に所属していたからそりゃ知ってるか。

……ああ、なるほど。文芸部関連で何か思うところがあったというところだろうか。


「ええ、学校で花を見てたらちょうど世話をしにきた先輩と話すことがありまして」

「そう。先輩は花狂いで有名だからきっと高崎が花を見ていたことが嬉しかったんだと思う」

「そんなところでしょうね」


俺が土御門先輩から受けた印象もまさにそれだった。

しかし部長は土御門先輩と関わりはあったんだろうか。

……いや、さっきの部長の雰囲気からして下手に詮索しない方がいいな。


「いいから腹が減った。さっさと食うぞ」


そこでちょうどよく結城が話を逸らしてくれる。

結城がなぜに俺を睨んでいたかは分からないが……よくよく考えてみれば睨まれるなどいつも通りのことだった。

既に結城の中では食い意地が不機嫌に押し勝ったようだし気にすることでもないな。


結城だけでなく俺も部長もお腹が減っていたし、食べながら話せばいいだろうということで買ってきた食べ物を並べ遅めの昼食を始める。


「フンッ、どれもこれも、高い割には平凡だな。部長のポトフを見習うべきだ」

「いやうちの値段設定がおかしかっただけで別に高くないから。まあ文化祭の屋台の味ってこんなもんでしょ。基本に忠実だからこそのおいしさってのはあると思うし」


それにしても結城はよく喋るようになった。1学期の頃は今のように思ったことを口にすることすらほとんどなかったからな。

さらにいえば、貴様呼びはいまだに直っていないもののたまに俺のことを高崎とも呼ぶようになった。


それが何を要因としているのかはわからない。外遊部として過ごした時間が関係しているかもしれないし、結城の人としての成長かもしれない。もしかしたら俺が結城を助けたことで少しは打ち解けた、なんて理由もあるかもしれない。


まあいずれにせよ良い変化なのだろう。前までは剣山のような奴だったしな。

今ならば俺の聞きたかったことも少しは教えてくれるかも?


「なんだ」

「いやなんでも」


まあ焦る必要はない。

そのうちさらに距離が縮まり、俺のことを悠!なんて呼ぶ日も……いや、ないな。


「そういえば明日はどうする?」

「俺は明日はクラスの方を手伝うって約束しちゃったんで、さすがに向こうを手伝います。ただこっちに人手が必要なら言ってくれればこっちに来ますけど」


曽我に約束した手前、明日までズル休みするわけにはいかない。

まあ外遊部に来るとしても長時間というわけにはいかないだろうが。


「結城は?」

「私は特に何も言われていないのでここにいるつもりです」


は?ずるっ。


「私も部長としてここにいる。2人もいるし、特にすることもないから高崎は気にせずクラスの方を頑張って」

「すいません」


もしかしたら気を遣わせてしまっただろうか。


「おい、なぜ私の時は不満そうな顔をしていたのに部長には申し訳なさそうにしているんだ?」

「部長には思いやりがあったというか、まあ普段の行いのせいかな。それが嫌ならもっと俺に優しくならないとな」


そんな会話をしていると、教室に響き渡る足音がポトフを配り終わって以来の来客を知らせる。

普通に見えるところで屋台で買った食べ物広げちゃってるんだけどまずいかも……。


「ここが悠の入ってる部活?」


心配な心持ちの中、背後から聞こえてきた声に俺の中の焦燥が霧散する。


「あれ、来るなんて言ってないよな?」

「来ちゃ悪いわけ?」

「いや……」


分かっていながらも振り返ると、そこにはむすっとした表情の妹様が立っていた。

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