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出来損ない外遊部

時間が経つのは早いもので、ついに明日には文化祭1日目を迎える。


コスプレ喫茶の準備では調理方法の確認、机や椅子のセッティング、適当に装飾を施しただけであとの事にはノータッチ。

残りやる事と言えば買い出しのみで、これから行ける人でスーパーへ向かうと話していたがそれにも無関係だ。

つまりクラスの準備で俺にできることは既に残っていないことになる。


このまま教室に残っているのは居心地が悪くなるだけなので、今俺は外遊部に向かっている。


外遊部の展示の方は、遅れを取り戻さんが如く3人で張り切ったこともあり思った以上に早く終わった。

出来の程は……ポトフでごまかせるだろきっと。


「どうもー」

「なぜ貴様が先生より来るのが遅いんだ」


あれ、先生早っ!

なんか俺が悪いみたいな空気を出しているが、俺は別に道草を食っていたわけではない。集まった後にトイレに行くより、予め済ませておいた方が効率的だろうと思っただけ。


粗があれば嬉々としてつついてくるのは結城の悪癖だ。

こういう場合は無視に限る。


「そういえば先生はなんでここにいるんです?今日の買い出しは俺らだけで行くはずだったと思うんですけど……まさか車出してくれたり?」

「違う。教室で高崎に渡そうと思っていたんだがな、ついうっかりと忘れていた。ほら、これだ」


それを見て、俺はあの時の事を思い出す。



「今日は先生もいる。だから集合写真を撮る。先生、デジカメちゃんと持ってきてる?」

「ああ」


展示に集合写真が必要かと聞かれれば必要ない。

しかし、集合写真を撮って貼ることは部長の1つのこだわりのようだ。


「で、どこで撮るんですか?」

「ここ」


もっと景色のいい場所ならいくらでもある気がする。

隣接する憩いの広場だってひらけた景色で集合写真を取るのにもちょうど良さそうだが。


「私達の学校の活動場所はここだけ。所縁のある場所で撮ったほうがいい」


なるほど。

てっきり写真なんてどこで撮っても変わらないなんて考えかとも思ったが、部室で撮ることこそが部長の中では重要なようだ。写真としての完成度よりも、その写真の意味を重視している――そう考えれば部長らしい考えだと言えるな。


「ちょうど今はテントを展示用に貼ってる。高崎のやつは見た目が地味だからこっちのをバックに写真を撮る」


あってよかった女子力テント。


「タイマーを使ってとりあえず1枚撮ってみる。あれ高さが……」

「調整難しそうですし、俺そこらへんに歩いてる人捕まえてきますよ」

「任せた」


任された俺は廊下に出る。

ちょうど誰かいればいいけど……いない。

そう思っていると、4つ隣の部室の扉が開くのが見えたので意識を向けると、そこからは同じクラスの黒峰さんが出てきた。


「ねえ黒峰さん。ちょっと頼みたいことがあるんだけど今暇?」

「あら高崎君、なんでしょう?」


部活動の写真を撮るから撮影者になって欲しいと伝えると、黒峰さんは快諾してくれたので部室へ招き入れる。


「連れてきました」

「あら、多井中先生はこちらの顧問だったんですね」

「なんだ黒峰か。新聞部と外遊部の顧問を兼任していてな。高崎から聞いたと思うが写真を1枚撮るだけだ。頼んだぞ」

「はい」


カメラを黒峰さんに手渡し、俺達はテントの前に並ぶのだが


「順番どうする?」

「部長と先生を真ん中にして俺と結城が端とか?」

「なんで顧問の私が中心なんだ。私は1番端でいいからな」

「じゃあ部長が1人座って3人で囲むように立つとか……」

「それ、私だけ浮いてるみたいだから嫌。前2人後ろ2人でもいいけど、構図的には4人で並んで撮りたい。私、高崎、結城、先生の順番でいい?」

「部長が端で私が真ん中なのはありえないです」


ただ写真を撮るだけなのになかなか配置が決まらない。

みんなが真ん中を譲り合う。部長の希望通り4人が並ぶとなると絶対に誰か2人は真ん中にならなければならない。


「ならば結城さん、高崎君、部長さん、多井中先生の順番ではどうですか?」

「ん、それで」


譲り合いの日本人の精神で、俺が結城と変わると言い出してもいいが、結城の性質から考えても無駄なだけだろう。


少し時間がかかってしまったが、これでようやく準備が整った。


「じゃあ撮りますよ。1+1はー?」

「「2」」

「あの、皆さん……誰1人として笑っていないんですが……かろうじて部長さんの口角が少し上がっていますが、高崎君と結城さんなんて体ごと明後日の方を向いてしまっています。これでいいんですか?」


目の前の健常者が眩しい。

俺達のダメ人間具合を突き付けられているようだ。


「高崎、結城、ちゃんとカメラを見て。あと、先生も含めて笑う努力を忘れずに」

「「はい」」

「わかった」


さっきのが俺らのありのままの姿な気がするが……。


「じゃあいきますよ。シャッターまでー3、2、1!……誰も笑顔ではないですけどこれなら……って高崎君、目だけ下を向いてますよ!」


黒峰さん細かいな!

結構こだわりのある人?


「高崎、貴様ァ」

「高崎、ちゃんとして」

「学習しろ高崎」

「えっ……」


いや、わざとじゃないんだよ?反射的に下を見てしまっただけで……。

総スカンを食らっていしまい、これ以上続けてはだめだと心に言い聞かせ、今度こそはとカメラのレンズを凝視する。


「今度はちゃんとしてくださいね。はいチ~ズ!」



「一応3枚ともプリントアウトしてきたが、どれにする?」


3人で3枚の写真を覗き込む。


「「「これで」」」


偶然にも3人は同じ写真を指差す。部長がその写真を手に取り、そのために空けておいたスペースにそれを張り付ける。


そこには、集合写真としてあまりに不出来なものが貼られていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 写真を一枚撮るだけって頼みだったのに気長に付き合ってくれる黒峰さんいい子や… さすがお寺マニアだけあって仏心満載だな(?) [一言] 部長が好みなので部長にはヒロインレースを頑張ってほしい…
[良い点]  ‥‥‥何かわからないけど今回の写真撮影のごたごた感が凄くいい。  皆しっかり距離感が縮まっているように見えて。
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