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告解

話し合いが終わり、展示のための作業も少し進めたところで、本日の部活は終了となった。


部活が終わるや否や、いつものように結城はそそくさと帰宅していった。


後を追ってもよかったのだが、さっきのこともあり、少しだけどういう顔で接すればいいか分からなくなりそうなので止めておいた。

まあ感謝の気持ちからきた行動ということは分かっているが、いつもと違う結城に少し調子が狂ってしまった。


そしてそれは部長にも言える。

原因が俺なのはもちろん理解している。

このままではいけない。何か言わなければ、しかし何と言えば……だめだ、今日は大人しく帰って家でじっくり考えよう。


「高崎、ストレイシープに行く」

「はい?」


すると突然部長からそんな提案が飛んでくる。

なにこの圧……今日の部長は俺の知ってる部長じゃないよ!


「行く?」ではない、「行く」なのだ。

つまりは決定事項。


「はい……」


断れるわけがない。

普段はチョウチョを追いかけていても不思議に感じない人なのに……。


それから学校を出てストレイシープに向かっているが2人に会話はない。


こんな状況になっている時点で、もう俺には迷っている猶予など残されていない。それは最長でも喫茶店までだ。ならば腹を括り、率直に気持ちを聞いてみよう。


「何も言わなかったこと、怒ってますか?」

「ちょっと」


その一言でもう何も言う気はないのだと部長は歩調を早める。

ちょっと……ではないよなたぶん。


しかし今はこれ以上何も言う気がないとしても、ストレイシープに行こうと誘ってくれたのだ。そこでならば話くらいはしてくれるだろう。

ならば今は部長の考えを尊重して黙ってついて行こう。


そしてしばらく歩くとストレイシープが見えてくる。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」


マスターがいつもの言葉で出迎えてくれる。

すいませんマスター、今から店内は暗いムードに包まれてしまうかも……。

幸いなのは他に客がいないことだろうか。


「何頼む?」

「俺は今日はあまりお腹も空いてないので飲み物だけで。えーっとそうだな、前に飲んだ時においしかったんで今日もアイスコーヒーにしてみます」

「じゃあ私も」

「え?」


俺は忘れていない。大人ぶって頼んだはいいが、苦くて飲めなかったのかガムシロップを何食わぬ顔で入れていたことを。

どうにも無理しているような……。

カフェオレなんてコーヒーと比べれば飲みやすいと思うが、乳製品はあまり得意ではないって言ってたしなぁ。


「あ、紅茶もあるんですね。俺紅茶は上品すぎて得意じゃないんですけど部長飲めます?」


先程「え?」と俺が発した時から部長はジトーっとこちらを見てきている。

案外この人プライドが高いから、こんな状況で下手に刺激すべきじゃなかったかもしれない。


「注文を。アイスコーヒー1つとアールグレイ1つ、あとホットケーキ1つ」


あ、紅茶頼んだ。


「かしこまりました。少々お待ちください」


次はてっきり3人で来ることになると思っていたんだけどな。

……いや、自分であんな誓いを立てたくせに部長の事を傷つけてしまっている時点で、先がどうなるかなんて分からないという証左なのだろう。


「こちらアイスコーヒーとアールグレイになります。ホットケーキはもう少々お待ちください」


マスターがカウンターに去っていった頃、俺から口を開く。


「俺は――俺は、自分の言ったことすらすぐに破ってしまう最低の人間です。でも今回だけはどうしても言えませんでした」

「ある程度は推測してる。でも言わなければ伝わらないこともある。結城のことは言わないでいい。だから何があったか聞かせて」


既に俺が結城を助けるためにケガを負ったことは本人が部長に話している。

もしかしたらここに来るまでの道中、部長はそんなピースを並べ、どんなことがあったのか考えていたのかもしれない。

結城が休んでいたこと、結城を助けようとしたこと、この2つの要素からおそらく察しはついていると思うが、結城の核心に迫る部分は除き、話せることだけ話そう。


「今回俺は結城を助けるために行動しました。障害を排除するためには手段を選びませんでした。そして自分の浅はかさが招いた結果が、知っての通り病院に運び込まれるというものでした。

……俺の事ならば部長に頼ると約束しました。しかし、結城の事情を俺の口から話すわけにはいかないと思いました。それが部長をまた仲間外れにしてしまうと分かっていても、結城の信頼を裏切ることはできませんでした」

「事情を伏せられていても私はきっと相談にも乗ったし協力もしてた」

「そうしようとする事自体が信頼への裏切りだと思いました。ぼやかして伝えたとしてもある程度は予想がついてしまうでしょうし、そもそもそれは俺に向けられたものであり自分だけでやるべきだと考えました。それに俺が考え付いた作戦は危険で、そして相手を陥れるというとても卑劣なものでした。そんなことに部長を加担させるという選択肢はありませんでしたし、また同じことがあっても俺は部長を頼ることはしないと思います……すいません」

「そう……」


今回のことは、部長が頼れる頼れないの問題ではないのだ。


信頼を裏切られたことのある俺だからこそ、向けられる信頼を絶対に裏切りたくはなかった。


部長の原動力は何なのだろう。それは責任感か庇護欲か、はたまた別のものなのかもしれない。

しかし部長が俺達との関係を大切にしてくれていることくらいは分かっている。


だから部長にはいくらでも謝ろう、いくらでも償おう。

事の露呈は自分だけの問題に収まらないのでどこまで悠に話させるか迷いました。

特に『相手を陥れる』なんて致命的な一言ですし…ちなみにマスターには聞こえておりません!

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