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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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最悪の結果

校門を進みすぐの場所に人だかりが出来ている。


「この掲示板で自分のクラスと出席番号を確認してください。下駄箱で学年、クラス、出席番号が一致する場所に靴を収めてから自分の教室まで向かってください」


腕章(わんしょう)をつけた学生が声を張り上げて説明している。生徒会かなにかかな。


その学生の指す先には仮設されたような掲示板が3つあり、1学年の文字が掲げられている場所へ自分の名前を確認しに向かう。用紙が5枚貼られていることからわかる通り1学年は5クラスのようだ。


高崎……高崎……あった。


名前はすぐに見つかった。最初に目を向けたA組の用紙に自分の名前を確認できたからだ。ここですぐに下駄箱に向かいたいところではあるが、あるもう1人の名前がA組にあるかを確かめるべく目を走らせる。


実はこの学校に自分以外で1人同じ中学から進学している生徒がいるのだ。1人しかいないが接点はないに限る。


「あ……」


思わず声が漏れてしまった。



「悠、おはよ!よかった同じクラスじゃん!」


教室に入り座席表を確認した俺は自分の席に着くや否や突然そう声を掛けられる。


「クラスまで同じになるなんてな。またよろしく」


クソが。高校だけでなくクラスまで一緒になるなんて、神様は俺に対して加虐趣味でも持っているのだろうか。


目の前で嬉しそうに「よろしくー!」なんて(のたま)っている女子生徒を見ながら、その発端となったときの事に思いを馳せる。



涼修高校の入試が終わり合否を待ち続けていたある日、ついに結果が届いたということで俺は呼び出され担任が待つ個室へと入った。


「失礼します」

「座りなさい」


指示されるがままに席に座ると、担任は早速本題を切り出した。


「高崎、涼修高校から合否の結果がきた。高崎は………………」


いや早く言えよ、なんの溜めだよ。


「……合格だ!あんな事件があったときはどうなるかと思ったが、それから日々努力して成績を伸ばしているのは見ていたから先生も応援していたぞ。よく頑張ったな!私も鼻が高い!」


さいですか。でもよかった。入試に手ごたえは感じていたが結果を聞くまで正直不安だった。


「ありがとうございます」


そういえば


「先生、1つ質問いいですか?」

「おおいいぞ」

「俺以外に同じ高校に合格した生徒います?」

「高崎含め2人合格している。名前までは言えんが」


どうせなら1人がよかったがまあ想定内。


「あ、俺以外にもう1人いるんですね。ありがとうございました」


そんなやりとりを終え下校までひとしきり心の中で喜んだ後、家族に合格を伝えることを想像し頬を緩ませながら帰路に就く。


そうしてウキウキなままに家に到着するが、父さんはもちろん紗由もまだ帰ってはいなかった。

しかしそんなこと些細な問題。報告の楽しみが引き延ばされたところで悪い気はしない。

だからしばし1人で喜びを噛み締めようと自室に向かう。受験が終わった解放感もあって、特に何をするでもないが、ベッドに横たわりコロコロしていると


ピンポーン


突然チャイムが鳴り響く。いくら解放感を味わっているとはいえ、居留守を使うわけにはいかないので走って玄関まで行き「はーい!」とドアを開けると


「悠!」


そこには緊張を伴ってはいるが少し嬉しそうな顔の幼馴染が立っていた。


「なに」

「悠って涼修高校受験したんだよね!」

「うん」


いやなんで知ってんだよ。家族と担任に言っただけで他には今までぼやかしてきたぞ。

いや……俺は見かけなかったが、受験会場に自分以外にも同じ中学の生徒は何人かいただろう。そんな誰かからの伝聞かもしれない。


「ってか紅葉にどこ受験するか言ったっけ?」

「進路調査の時にね、先生にお願い!って頼んだら教えてくれたんだ~」


いや先生なに勝手に言ってんの?こういうのってぺらっと洩らしていいもんなの?いや俺の考えすぎか。


「で、それで?」

「受かった?」

「受かった」


そこまで抑えていた紅葉の表情が見る見る変わる。昨日テレビでやっていた動物番組に出てきたチンパンジーを想起させるほどの満面の笑み。


「よかった~!いや先生に聞いたらさ、涼修高校の合格者2人だって教えてくれて『よかったな』なんて言うから悠も合格してると思った!」


確認をしにきただけか?お祝いを言いに来たのか?いやちょっと待て……悠も?


「えっと、つまり?」


「それはね」待て

「わたしも」やめてくれ

「涼修高校に合格しました!春から2人で涼高生だね!」


俺の天地はまたもひっくり返った。

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