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終幕

「高崎君!階段から落ちたって聞いたけど大丈夫だったの?」「めっちゃ心配したぜ」「もう学校に来ても問題ないの?」


教室に入るとクラスメイトは口々にそんなことを言ってくる。その度に大丈夫と返しているが、また新たな生徒が登校してくると同じように話し掛けてくる。


目立たない人間の俺も一躍時の人になってしまったようだ。


「おい高崎、ちょっといいか?」


すると、今度は呼び出しだ。

声に聞き覚えはあるが誰だっけと振り返ると、そこには加賀美が立っていた。


「ああ」


この後自分からD組に出向こうとしていたが、どうやら向こうから来てくれたようだ。

しかし早田と飯塚は一緒ではないのだろうか?


一昨日とは真逆で、加賀美に先導され後をついていく。

まさか俺みたいに罠に嵌めようとしてたり?それとも結城みたいに俺の事もやっちゃうのか?

まあなんにせよ用事があるのはこちらも同じだ。警戒しておく必要はあるが。


そうして案内されたのは空き教室。

中に早田と飯塚もいるのかと思っていたがそういうわけでもないらしい。

ならばこちらはこちらでやり残しを済ませよう。これだけの代償を支払ったのだ。失敗してくれるなよ。

潔白の証明のために加賀美が録音している可能性があるので、言葉は選びながら話し始める。


「いやー、一昨日は不幸な事故だったね」

「そういうのはいい。お前も思い切ったことをやってくれたもんだ。あれからこっちとしてもいろいろあってな、もう結城には手を出さないから安心しろ」


あれ、やけにあっさりと、それもこちらに都合よく話が進むぞ?なんぞこれ。

やっぱ罠か、罠なのか!

もしかしたら「その代わり次はお前だぁ!」なんてことも。


「言いたいことはそれだけだ」

「早田と飯塚は?」

「あいつらともそれで話がついてる。あとお前はまだ聞いてないだろうが、お前も含めて今日中に招集され教師に事情聴取されることになるはずだ」


……なんだかおかしい。俺の事を恨んでいる方がむしろ自然なのに加賀美からはそんな印象を受けない。

どうなってるんだ?

…………だめだ、考えても何も浮かんでこない。まあとりあえず今は話を合わせとくか。


「何事もなくめでたしめでたし、とはならないよね。まあさっきも言ったように不幸な事故だったんだから、余程のことにはならないでしょ」

「フンッ、変わった奴だ。じゃあまたな」


そう言って加賀美は部屋を出ていく。


加賀美らのやったことは未だ自分の中で消化しきれていない。だから加賀美のことをフラットには見れていないのだが、今日の加賀美から受ける印象にはどうも違和感が付きまとう。具体的に言えば、本当にイジメなんぞに手を染める人間かと疑いたくなるほどにとげがないのだ。いや、もちろんイジメていたことに間違いはないのだが……わけわからん。


先程から違和感が止まないが、これ以上悩んでいてもそれでどうにかなるわけではない。一応これで一件落着と考えることにしよう。

ならば、結城にメールを送っておくか。


『もう大丈夫だから明日にでも学校に来いよ』


ふぅ、これでよし。

さて教室に戻るか、と教室から出ようとするとケータイが電話の着信を知らせる。


「えっと結城?」

「エビチリがまた食べたい。放課後家に来い」


そう言って電話は切れる。


今の結城といい、先程の加賀美といい何かがおかしい。

もしかしたら俺は並行世界に迷い込んでしまった、あるいはまだ意識をなくしてから目覚めていない、なんてこともあるのかもしれない。



この事件は朝の加賀美の態度と同じように、特別揉めることもなくあっさりと終わりを迎えることとなった。


結果から言うと俺は反省文、加賀美ら3人は5日間の停学となった。


3人は事件当日から証言を変え、揉めた際に突き飛ばされ踏み留まれなかった俺が階段から落ちたと双方が認めることとなった。

3人は嘘の証言をしたことが悪質とみなされ強く叱られはしたが、当初は実際に手を出した早田のみが5日間の停学で、加賀美と飯塚は俺と同じ反省文という処遇だった。しかし加賀美と飯塚が自分も同等の罰を受けると言い始め、話し合いの末、学校側が折れ3人揃って同じ罰を受けることになったのだ。これが友情というやつだろうか?


直情的な早田も今日は大人しかったしここまでくると気持ち悪さすら感じてしまうが、何か動きでもない限りこれで終幕と考えよう。


話し合いが終わった俺はそのまま結城の家へ向かうのだった。もちろんエビチリの材料は忘れない。

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