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案外使えて、案外使えない

『俺はお前たちのしたことを知っている』


こんな脅迫状を出してはどうだろう。いや知っているだけじゃ強制力なんて無いに等しいか。なら証拠まで握っていると仄めかし、公にして欲しくなければ二度とイジメるなと書き加えてやれば怯えてくれはしないだろうか。


でもじゃあその証拠見せてみろって話だよな。そもそも証拠さえあるならば、それを出すところに出せば終わる話なのに、あえて加害者に忠告する意味が分からない。教師陣が書いたなんて曲解してくれればある程度筋は通るのだが、結城本人もしくはその協力者が書いたものと結論付けられる可能性の方が高い気がする。


やはり少しでも確実性の高い方法を考えたいが100%なんてのは無理だろう。確かにこの方法も悪くはない気がするが、決して成功率が高いとは思えないし、結局相手に不利益のくさびを撃ち込めるわけじゃないので拘束力は弱く思える。


それにあれだけの事をしておいてこの方法だと相手に何の打撃も与えられないというのは正直腹立たしい。


……そもそも目標をどこに設定する?

退学?停学?それともいじめさえやめさせればいいのか?


3人には是非とも退学して欲しいところだし、やった事は退学に見合っていると個人的に思う。だが、己の感情に任せ短絡的になってはいけない。

3人の人間性は分からないが、話を聞いた限りぶっ飛んでいる。もしも退学という取り返しのつかないレベルまで追い込んでしまうと、正直何をしでかすか分からない。


まだ退学を目標に設定しないと決めたわけではないが、なにより優先すべきはいじめがなくなり結城が学校に来れるようになること。

結城としてもそれは本意じゃないかもしれないが、丸くおさまるという意味でベストなのは妥協することかもしれない。


「悠!」


うるさいなー。今お前と話してる場合じゃないんだけど。


「なに?」

「今日なんで遅れたの?」

「いや普通に寝坊だけど」

「でも昨日の夜珍しく部屋に電気ついてなかったよね」


え、まさか毎日俺の部屋見てんの?

……止めて欲しいんだけど。もうカーテン開けれないじゃん。ああ、ストーカーに怯える女の人の気持ちがちょっとだけ分かった気がする。


「昨日はずっとリビングにいて、部屋に入ったらそのまま寝ちゃっただけ。あのさ、ちょっと今1人にして。考えたいことあるから」


俺は少しでも早く解決案を見つけて動き出さなければならない。今日実行に移すことはたぶんできないがせめて週明けには実行できるように、なにがなんでも日曜が終わるまでには考えをまとめなければいけないのだ。1分1秒が惜しい。


「じゃあさ、明日は家にくる?」

「ごめん明日は無理。来週行くから簡便して」


これで話が切れてくれればいいがもしかしたらまだ話続けるかもしれない。もういいや、無理矢理話を切ろう。


「ちょっとトイレ行くからまた」


そうしてトイレに向かうために廊下を歩く。


……ん?あれここ。あーなるほど、いけるかな?うん、悪くない。


紅葉もたまには役立つじゃん。

でもこれは最終手段、ある種のリスクは付き纏うし確実性もない。

でもこれなら今日にでも実行できるかも……いや焦るな。それを実行に移すとしても人通りが少ない放課後に改めてしっかり確認すべきだろう。


月曜日を迎えるまでは、より良い解決案を模索し続けるべきだ。


あとは学校があるうちに3人組の顔を見ておく必要はあるかな?

名前はたしか加賀美かがみ早田はやた飯塚いいづかと言っていたな。加賀美と飯塚が結城と同じDクラス、早田は別クラスの生徒らしい。


……いや特に今確認する必要はないか。今のうちにわざわざ他クラスを訪れ知りもしない生徒に『加賀美と飯塚ってどいつ?』なんて聞いて本人達の耳に入れば警戒されるだけだし、もしかしたら訪れるだけで支障が出かねない。


知っておくべきは早田がどこのクラスかということだけ。当日加賀美と飯塚に聞いてもいいがなるべく段取りよく済ませたい。


それを内内に済ませるために頼れる人間……紅葉しかいないか。

早速教室に戻り紅葉に話し掛ける。


「紅葉ちょっと廊下までついてきて」

「なになに?」


廊下に移動し、周りに人がいないことを確認して紅葉に問いかける。


「ねえ、紅葉って早田って生徒がどのクラスか知ってる?」

「早田?それ女子?」


ムッとするな。

すぐ恋愛に関連付けようとするのは女子だからなのか紅葉特有のものなのか。


「いや男子。知らないならいいや」

「誰かに聞こうか?」

「いや絶対にそれはやめて。あと今の話に関することは絶対に口外しないで。紅葉だから信じて聞いたんだから。もし話したら二度と紅葉と話さない」


普段なら絶対にここまで言わないが、紅葉がいらないお節介をして下手なリスクが生まれると困る。

紅葉ならば顔が広いし知っているだろうと考えたが、どうにも当てが外れてしまったようだ。

まあそれでもこう言っておけば大丈夫だろうと確信があって紅葉に聞いたから問題はないだろう。


「わかった」

「悪かった。先教室戻ってて。ちょっとまたトイレ」


さすがに俺の言葉と雰囲気から、紅葉もいつになく真剣に頷いてくれた。


さてどうするか。


あとこれを聞いて漏れないと確信が持てそうなのは外遊部の人間くらいだが、部長が知っているわけはないし、先生に聞いてしまうと後々に響いてしまう。まあ事が終わりさえすれば勘付かれてもいいっちゃいいが、わざわざ知られたくはない。

うーんならば……。


「失礼します」

「なんだまた来たのか」

「ちょっと先生に頼みがあるんですけど1年生の名簿って見せてもらえませんか?ちょっと知り合いがこの高校にいるらしくてどのクラスにいるか確認したいんですけど」

「ああそんなことならいいぞ」


そうして先生はあっさりと名簿を渡してくれる。

よかった、名簿ごときだがよくわからない理由で断られたり、深入りされることもあると思っていたがそうはならなかった。


そしてB組から順番に男子生徒の欄を確認していく。

B組……いない。

C組……いた!こいつか。

ならもう用は済んだかな。さっさと退散を……いや待て、まだ早田という生徒が複数いる可能性がある。E組も確認しとかないと。E組……いない。よし、これで間違いない。


「ありがとうございました。無事見つけました。あ、あと部長から聞いてるかもしれませんが今日の部活は中止みたいです」

「ああ、さっき橘が言いに来たよ」

「あ、ならいいんです。それじゃ失礼しました」


あとは授業に出て放課後を待つのみ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ひょっとして紅葉が居ないと主人公はトラウマ持ち男子というアイデンティティが崩壊してただのコミュ強のイケメンになるのでは?
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