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結城幸の運命②

【結城幸視点】


……正直に言えば怖い。頬を叩かれただけでも小学校の頃のいじめを思い出させるには十分だったのに、お腹の痛みはさらに鮮烈に頭に焼き付いている。今ですら思い出すだけで嫌な汗が浮かび体が震えてくる。


奴らは私にもう学校に来るなと言った。


私の内に眠る弱さはそれを肯定する。あんなに痛い思いをする必要はない。ならば学校に行かなければいいだけ。なんなら言われた通りに転校すればまた元通りだ、と。


だが今の私はそれを否定する。なぜ私が奴らの戯言に従わなければならない。転校したところでまた同じことにならない保証がどこにある。私は強くなった。小学校の頃の私とは違う。あの強烈な痛みにすら耐えられるはずだ。だから今の日常を捨ててなるものか、と。


確かに私という人間の根幹には弱さがある。だがそれは仮面を被るうちに形成された人間性により自分の奥深くに追いやられているし、今私に諦めを訴えかけてくる弱さと、自認している弱さとはそもそもの性質が異なっている。


そうして自我の采配は逃げないことを選択する。



「おい結城ちょっといいか?」

「ああ」


翌日の放課後になると奴らはまた話し掛けてくる。

あんなにも遠慮のない攻撃を仕掛けてくる相手が簡単に見逃してくれないことは分かっていた。それに学校に着くなりあれだけ嫌そうな視線を向けてきていたのだから、向こうから話し掛けると言われていたも同然だ。


そして反発することなく付いていき、昨日とはまた別の教室へと連れて来られる。


「俺らが言ったこと覚えてる?もう学校に来るなって言ったはずだけど」

「なぜ私が言うことを聞かなければいけない?」

「……お前どうなるか分かってるんだろうな」

「なんだ?思い通りにならないとまた私に暴力を振るうのか?」


今の私の言葉は拒絶だけでなく、まるで相手を煽動せんどうしているかのようだ。いや実際に煽っている。今回くらいは痛みすら我慢してやろう。


「まあちょっと待て。結城、お前今日はやけに素直に付いてきたな」


その言葉を聞いた瞬間、私の中を動揺が駆け巡る。

リーダーの男は途端に私に近づき、制服のポケットに手をツッコみ確認し始める。


「触るな!」


一瞬の硬直の後、男を振り払うが既に手の中には私のケータイが握られていた。


「抜け目ないな。録音してやがる」

「クッ……」


証拠能力のあるものとなれば、誰かに目撃させる、もしくは映像や音声を入手することだろう。


もしも頼れる人間が私にいたならば、私が頼ることを知っていたならば他にも手段はあっただろう。しかし、私は1人で解決しなければならないのだ。もしもそれができないならば、私が小学校からつちかってきてた自信という土台が崩れ去ってしまう。

そうなってしまえば、今の私でいられなくなると分かってしまうから。


そんな私の取れる手段は録音状態のケータイを忍ばせるくらいしかなかった。作戦にもなっていない作戦。しかしそれで十分だと考えていた。言質さえ取れればあとは証拠をネタに脅してやれば手を出されなくなるという腹積もりであった。


しかし、大きく抵抗を見せなかったことを不審に思われてしまった。

……いや、抵抗していたとしても昨日の今日なのだ。

場所を変えている時点である程度の用心深さは感じ取れる。ならば私がどうしようと結局は確認されていたかもしれない。


そこからは昨日の再演とでもいうように、叩かれ蹴られ、そして一通りを終えた男達は再度の忠告を残して去って行った。

今の時代ならやりようはいくらでもありそうですね。

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