いやな予感
「高崎、今ちょっといいか?」
木曜日、午後のホームルームが終わると先生が珍しく教室で話し掛けてくる。
「なんですか?」
「ここではなんだ、ちょっと付いてきてくれ」
そう応答し先生の顔を見てみると、少し神妙な表情を浮かべていた。
外遊部で先生がどういう人間か知っているからこそ、これは真面目な話なのだと悟る。
俺は先生のあとを追いながら考える。
俺なにかしたっけ……いや、いくら考えても思い当たる事がない。問題を起こした覚えもなければ大事な提出物を忘れているなんてこともない。それに提出物程度ならば教室で言えば済む話だ。
なら外遊部関連か?
……まさか中学の頃みたいになんか擦り付けられてたりしないだろうな。
中学の頃のことがフラッシュバックし不安な心持のままついていくと、近くにある地学準備室を開け誰もいないことを確認し入室すると先生はすぐに切り出す。
「結城が今週に入り1度も学校に来ていない」
「え?」
どうやら俺の不安は杞憂だったようだ。
しかしまだ休み続けてるのか。日曜からと考えると5日間は寝込んでいることになる。普通の風邪じゃさすがにそんな長引くことはなさそうだしインフルエンザかなんかか?もしかして休むことに慣れてしまってズル休みなんて線も……。
「結城からは日曜の部活前に橘に連絡があったきりでそれ以降音沙汰がない。担任も配布物を渡すという名目でD組の生徒を結城の家に向かわせたらしいが、本人の声すら聞けなかったらしい」
なんか思ってたより状況が悪そうだ。もしかして倒れてたりしないよな?
いくら憎き結城でもさすがにそれは寝覚めが悪い。
つまり先生が言いたいのは
「おそらく結城と1番距離が近い人間はお前だ。どういう理由で連絡すらしてこないのか分からんが、住所を教えるから行ってきてくれ」
「わかりました」
俺は先生が結城の住所を紙に書いてくれている間に2件のメールを送る。
1件目はもちろん結城に。
『連絡せずに学校休んでるみたいだけど大丈夫か?今からお前の家に行くから無事なら応答しろよ』
そして2件目は部長に。
『部長、今どこいます?』
そして先生から紙を受け取ると俺はすぐに駅へ向かう。最悪の場合を想定するならば急ぐべきだ。
先に下校していて駅に向かう道中ですぐに合流できるならいいが、そうでない場合悪いが置いていこう。
▽
普段降りる西鴨駅を通り過ぎること2駅、白崎駅で下車した俺はまっすぐ結城の家を目指す。
大前コーポ……大前コーポ……ここらへんのはずなんだけど。
あ、ここっぽいな。
目の前にはお世辞にもキレイとは言えないアパートが建っていた。結城はこのアパートの203号室に住んでいるようだ。
ピンポーン
とりあえず部屋の前に行きチャイムを鳴らす。が、反応がない。
ならばと思い電話をかけるが電源が入っていないのか繋がらない。
……どうしよう、大家を呼んで鍵を開けてもらうという手もあるが生憎大家がどこにいるのかすぐには分からない。ざっと見回してみた感じ管理会社への電話番号も見当たらないし、もうしょうがない。
「結城!高崎だけどお前大丈夫か!?もしすぐドア開けないなら突き破るからな」
もうこれしかない。のんびりなどしていられないのだ。俺がモタモタしていたせいで人の命が助けられなかったなど洒落にならない。
ギー
そう思い突き破ろうと覚悟を決めたところで、ドアがゆっくりと軋みをあげながら開く。




