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由来

「こんなところに喫茶店あったんだ」


喫茶店の名前を聞いただけではピンときていなかったが、いざ訪れてみれば知ってるなんてオチもあると思っていた。だが案外そうでもなかったらしい。


「穴場って感じがしていいでしょ?それにここおいしいんですよ」

「ん、早速入る」


部長も少しいてしまうくらいには楽しみなようだ。結城程食いしん坊なイメージはないが案外食べる事が好きなのかもしれない。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

「部長、テーブル席にしましょうよ」

「うん」


テーブル席は3つとも開いているのでならばと俺は提案する。

この店に来たとしても座るのはカウンター席ばかりになると思っていたが、人を連れてくることで思いがけずテーブル席に座ることができた。


「部長、メニュー先どうぞ」

「2人で見ればいい」


部長はそう言って見やすいように机の上にメニューを横に広げたので、2人で覗き込む。


「おすすめは?」

「俺まだ1回しか来れてないんですよね。でもその時に食べたたまごサンドとアイスカフェオレはどっちもかなりおいしかったですよ」

「私はどちらかというと乳製品が得意じゃないからアイスコーヒーにしてみる。カフェオレがおいしいならきっとコーヒーもおいしい」

「あーだから部長身長が」

「む。高崎は分かってない。確かに身長を伸ばすためにはカルシウムやタンパク質などが必要。だからと言って牛乳を飲むだけで身長が伸びるわけではない。様々な要因が合わさらないと身長は伸びないし、そもそも遺伝的側面が大きい。つまり直接の因果関係はないも同然」


最後だけずいぶん飛躍したな。でも部長がここまでまくし立てるように話すことはあまりない。身長が低いことをたぶんかなり気にしている。確かに平均身長よりずいぶんと低いが、男子ならまだしも女子で身長が低いって別にマイナスな事とは思わないんだけどなぁ。


「まさかブラックでいくんですか?」

「もちろん」

「マジですか。中学の頃ブラック飲んだことあるんですけど俺には無理でした。部長って結構大人な味覚してますよね」

「そう。高崎もそのうち良さが分かるようになる」


部長は大人だとか頼りになるだとか、そう言われるのにとても弱い。

身長のことに触れられ怒っていた姿は見る影もなく、今ではすっかり上機嫌。


さて、俺は何頼もうかなぁ。少しお腹が空いてるしガッツリしたものと、飲み物も今回はカフェオレじゃない物を試してみたいな。


「俺は決まりました。部長は?」

「決まった」


そして店主に声を掛けるとまもなくテーブルまでやってくる。


「部長からどうぞ」

「アイスコーヒーとたまごサンド」

「アイスコーヒーもう1つと、ミートソーススパゲティお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」


俺も結局はアイスコーヒーを頼んでみた。飲み物に関してはそこまでバリエーションが多いわけではないし、なにより話題にしたからコーヒー自体の味がどんなものか気になった。なら話の種に飲んでみるのも一興だろう。それでも無理なら机の上に置いてあるガムシロップを入れれば問題なく飲めるはずだ。


「高崎もアイスコーヒーにしたの」

「部長と話してたら気になっちゃって。どうせなら俺も飲んでみようと思いまして」


ちょっと味を確かめるだけならば部長のを飲ませてもらう手もあったが、少しそれは気が引けてしまう。


「そう。でもこのお店落ち着いてていい。私にぴったり」

「ですよね。それに料理もおいしいし安いしでまた来たくなること必至ですよ」


通学路からは外れているが、涼高生でこのお店を利用している人間はいないのだろうか。学校の東屋と同じで、知っている人間が少ないとより特別な場所に感じてしまうな。


「お待たせしました」

「じゃあ早速食べますか、いただきます」

「いただきます」


まずは気になっていたアイスコーヒー、どんなもんだろ。恐る恐る口に入れてみると


「ん!俺もしかしたら数年のうちにブラックいけるようになったのかもしれません」


そういえば、前のカフェオレだって牛乳が入っていたとはいえ甘さはなかったんだ。あれが飲めるならブラックだって飲めてもおかしくない。いやむしろこっちのほうがさっぱりしていて美味しいかもしれない。


「ん、おいしい」


そう言いながら部長の手がガムシロップに伸びている。

……あれ、なんかこれ見ちゃいけない気がする。俺は自然に目線を外しミートソーススパゲティを食べようとすることでごまかす。


「……」

「……」


沈黙が場を支配する。

たぶん目撃されたことには気づいている、はず……部長なにか言って!どう反応すればいいか分からないんだけど!……あ、これめっちゃおいしい。


「たまごサンドもおいしかったですけど、このミートソーススパゲティもめっちゃ美味しいですよ!品数が多くない分1つ1つの料理にすごいこだわりを感じます」


雰囲気をリセットするにはちょうどいいと、少しオーバーリアクションになってしまったがそう切り出すと、部長も少し安心したように溜息をつく。


「たまごサンドもすごくおいしい。スパゲティも一口ちょうだい」

「どうぞ」


スパゲティを一口食べ満足そうな顔を浮かべた後、部長は何やら考え始める。


「決めた。ここを外遊部の第2拠点にする。アウトドアは普段から気軽にできる事じゃないけど、私たちは外遊部。つまり外で遊べばそれは全て活動になる。食べ歩きもその1つ」


とんでも理論が飛び出してくる。

まさかそういう意味も込めて外遊部って名前を付けたんじゃないだろうな。


「1品だけ頼んで長時間粘るなんてのはさすがにダメだと思いますけど、迷惑の掛からない程度に話しあいに使うなんてのはいいかもしれませんね」

「決まり」


晴れて喫茶店ストレイシープは勝手に外遊部の活動場所の1つとここに決まったのだった。

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