選び続けるのは
デイキャンプが終わり、これからの外遊部は3週間後の文化祭に向けての準備がメインの活動になる。準備の進行具合により部活動の頻度も多くなるようだが、初週は火曜日と金曜日の2回が予定されている。
まあ準備と言ってもそこまで忙しいものでもないだろう。やることを挙げれば、キャンプ用品とその説明を写真などを交えて展示すること、そしてキャンプ飯として何を提供するか決め買い出しをすることくらいだろう。
キャンプについての知識など正直初心者に毛が生えた程度だし、写真だって当事者以外からしたら大した興味も持たれないだろう。だからこそ食べ物で釣ろうとしているのだが……。
「ねえ、聞いてる?」
「ん、なに?」
「悠は何のコスプレにするの?」
今俺たちはクラスの出し物について屋台組とコスプレ喫茶組に別れて話をしているのだが、以前と同じ質問を投げかけられる。前はいい感じに流れたと思ったが紅葉はまだ諦めていなかったようだ。
「前も言ったけど俺裏方じゃないの?」
「せっかくなんだし普段とは違う悠も見たいじゃん!」
「ね。高崎君もコスプレしようよー」「仮に裏方だったとしてもコスプレしちゃだめってわけじゃないもんね」「うんうん」
最近はこの調子である。何か俺が紅葉に反論しようものなら女子達が一斉に畳みかけてくる。いつから紅葉は同調圧力の化け物になり果てたのか。
一面的には俺を理解できた行動と言えるだろう。俺は孤立の恐怖からこのような場で頑として断ることができない。
つまり目先の結果だけを追い求めるなら正解だ。
まあ理解しての行動というより、経験則からの行動だろう。前のコスプレ喫茶組と屋台組の振り分けの時に味を占めた感じかな。
だがそれに伴い俺の心は冷えていく一方。結局は俺の事なんて一切考えちゃいないのだと語られているも同然だと俺は感じてしまう。それほどに愛されることを喜べる人間ももちろんいるのだろうが俺に関して言えばそうではないし、相手が紅葉だとそれは一入だ。
「分かったけど特にやりたいコスプレはないかな。なんなら紅葉に任せる。でもあんまり奇抜じゃないのでよろしく」
「任せて!」
はぁ、なんかめんどくさくなってきたな。中学の頃よりマシ、本当それだけのように感じる。もちろんこの子らに悪意がないのは分かっている。紅葉の為の善意の行動。だがそれが俺にとって不利益であれば、齎される結果としては大差ない。
既にメニューはフレンチトーストやオムライスなどオーソドックスなものに決まっているので、あとは誰にどういうコスプレが似合うだとかそんな話をするだけで話し合いの時間は終了する。
「文化祭楽しみだね」
「ああ」
▽
「こんにちはー、あれ結城まだみたいですね」
「うん」
「あー、結城は今日も休みみたいだぞ」
俺が部室に足を踏み入れると、先生も同じタイミングできたようで背後からそんな声が聞こえる。日曜と月曜じゃ風邪は治らなかったか。
「でもどうします?俺達だけで進めますか?」
「……まだ文化祭までは時間がある。急いで進める必要もない」
「写真はお前達しか写ってないがそれを選ぶのもまた今度にするか?」
「うん。だから今日はまだなにもしてないけど解散」
作業量と残り日数を考えればまだ余裕はある。
部長の中で優先なのはやはりメンバー全員揃って作業をすることなのだろう。
「分かりました」
「ああ、では次は金曜日だな」
結局何もすることなく解散となった。結城と次顔を合わせたらこの事で少しからかってみようかな。
「部長、なんならこれから喫茶店行きません?」
「結城がいないけど」
「これはあくまでも部長個人に対するお詫びですし、3人で行ってしまったら部長に対するマイナスがマイナスのまま持ち越される感じがしちゃって。だから結城とはまた日を改めて3人で行きましょ」
「分かった」
部活のための時間が丸々空いてしまったため、それならと2人で約束の喫茶店に向かう。




