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失態

「おはようございます」

「おはよう」


キャンプ当日、駐車場に待ち合わせの10分前に着いた俺は辺りを見渡す。

思い返してみればバーベキューの時もキャンプの時も結城はずいぶんと早くから着いていたようだが、今日は姿が見当たらない。まだ遅刻ってわけじゃないけど珍しいな。


「結城と先生がまだですね」

「先生は今職員室に寄ってる。それと結城からは連絡があった。今日来れなくなったって」


まさかのドタキャンらしい。


「え、体調不良かなにかですか?ってか写真結城なしになっちゃいますけど大丈夫なんですか?」

「……しょうがない。先生もいつでも時間が取れるわけじゃないし文化祭の準備も始めないといけない。あと結城は風邪だって」


本当にタイミングが悪い。この前様子がどこかおかしかったのは、風邪のひき始めだったのかもしれない。


「揃ったな。橘から聞いたかもしれないが結城は今日休みだ。基本的に私がデジカメで写真を撮るからお前たちは思うように過ごしてくれればいい。それじゃ荷物を車に積み次第出発するぞ」


なんだろう、先生いつもより元気がない気がする。結城は休みだし先生は元気ないしで今日は前途多難だな。


「先生、今日元気なくないですか?」

「車、デイキャンプ。そう言えば分かるだろう」

「え?」

「酒が飲めん」


なんだよ心配して損した。本当にこの人は部活になると教師としての仮面が剥がれ落ちる。



前回のように最寄りのスーパーで買い物を済ませた俺達は早速キャンプ場に着き、それぞれが作業を始めている。

今日は泊まるわけではなく写真用にテントを立てるだけなので、見栄えのいい女子用テントだけでいい気もするが、部長はリアルさを大事にしている人間なので2人でテントを立てている。


そして先に俺が建て終わり、ならばと先生の持ってきたタープも張り始める。前回は先生がやった作業だが、今回は先生が撮影に専念するということもあって作業は俺達だけで進めることになっている。


「高崎、この後2人でフェザースティック作ろう」

「あ、いいですよ。こっちももうすぐ終わるんでちょっと待っててくださいね」


タープを張ったのが初めてなこともあって少し手間取ってしまったが、部長を待たせるわけにはいかないので急いで作業を進める。


「おまたせしました」

「じゃあ作ろう。薪は少しだけど割っといた」


そう言い部長は自分の荷物からナイフを取り出す。


「部長、それ買ったんですか?」

「フェザースティック作りは楽しかったし、私に向いてると思ったから」


そうして2人で椅子に腰かけフェザースティックを作っていく。そういえば部長に聞きたかったことがあったんだ。


「部長って夏祭りいませんでしたよね。なにか用事でもあったんですか?」

「帰った」


今の今まで楽しそうに木を削っていたのに、少し空気が重くなったように感じる。

もちろん事情があったのかもしれないが「用事でもあったんですか?」なんて聞いて否定の言葉が返ってくるようなことがあれば、良くない方向に話が進むことになるだろう。ここは追及すべきではないな。


「そうですか」

「高崎はどうしたの?」


答えづらい。まあバレるような嘘をつくわけにもいかないから正直に言おう。


「結城と回りました」

「……また仲間外れ」


やばい、とんでもない罪悪感が俺を襲ってくる。迷惑をかけるなら部長よりも結城っていう図式が俺の中で出来上がっていたのだが、結果的に俺達だけで回ったのだから仲間外れにしたも同然だ。俺はそんなことにすら気が回らなかった。自分の嫌なことから逃げるのに必死で、外遊部の3人で回ろうなんてことすら考えれなかった。


「事情があって……つまらない話ですけど聞いてもらえます?」

「うん」


俺のせいで部長に孤独感を味わわせてしまったのだから、少しは事情を説明すべきだろう。俺の気持ちがどうとかそんなことを言っている場合ではない。


「俺学校にすごく苦手な生徒、正確に言えば幼馴染で元カノが同じ高校にいるんですけど、誰かと一緒に夏祭りを回らないとそいつと回らなくちゃいけなかったんです。だから口実が必要で、そんな面倒事押し付けられる相手だと普段から俺に対してあんな態度の結城がベストだと思ったんです。部長の事が浮かばなかったわけじゃないんですが、学年の違いなんかもあってどうしてもこんなこと頼むのは気が引けてしまって。でもそれが結果的に仲間外れにしてしまったことは事実です。すいません、俺の配慮不足でした」

「私は頼りにならない?」


やめて、声を震わせないで。

ハァ……部長として俺達を導こうとしてくれてる人にこんな質問させちゃだめだろ。


「部長のことは頼りにしてます。今度またこういう事があれば良ければ協力してもらせませんか?」

「する」

「ほー、高崎は夕陽の事が苦手なのか」

「あの、こういう話してたら普通空気読んで席外しません?」


そう、俺たちが暗い雰囲気で話をしている時でも先生は側をうろついており、会話が一段落ついたところで、ピピッ!っとデジカメを鳴らしながら近づいてくる。


「なに、楽しいことだけじゃなくこういう甘酸っぱいことも思い出の1つだろう。今の写真を展示すればリアルさを演出できるぞ」


場を和ませるための冗談も交えているのだろうが、この先生頭がおかしい。

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