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クラスの出し物③

俺が投票を終え、クラスの出し物は無事メイド喫茶に決まった。少し溜息も聞こえてきた気がするが俺を責めるような視線も感じないし問題ないだろう。


「ねー私思ったんだけどさぁ、別にメイドにこだわる必要なくない?」


え、もう決まったからそういうのやめてくれない?


「どういうこと?」

「コスプレ喫茶にしちゃえばいいじゃん?バリエーションも持たせられるし男子だってコスプレして接客できるよ?」

「確かに、メイド女子もいいけどバリエーションがあるのはいいな……俺の好きなバニーガールだって夢じゃない」

「あー、俺もそれ興味あるかも。コスプレなんてこういう機会でもなけりゃすることないだろ」

「賛成の人―??」

「「「はーい!」」」


過半数を超える生徒が賛成の意を表している。いやさっきの俺の緊張感返せよお前ら。それに俺もコスプレして接客する可能性が出てきちゃったじゃん。

俺は心の中で反対の猛抗議をする。


「じゃあ後はコスプレ喫茶組と屋台組で分担するだけだね。メニューはそれが決まってからそれぞれで決めればいいでしょ」

「ねえちょっとトイレ行きたいんだけど」

「そうね、5分後にまた再開しましょう。とりあえず休憩!」


ふぅ、やっと一息つける。途中まですごい気楽だったんだけどなぁ。

で、さっきからすごい視線を感じる。


「高崎君って彩円寺に行ったことありますか?」

「彩円寺ってどこのお寺?」


俺が知らないことが分かって少し残念そうだが、まだまだ興味は薄れないらしい。


「学校からでも歩いていける距離ですよ。ほら、あそこの山にあるんです」


黒峰さんは教室の窓から少し遠くに見える山を指さす。あそこの山か、覚えがあるな。


「あー、そこ行ったことある。夏休みに散歩してたら行き着いてさ、雰囲気があっていい場所だったよ。一通り景色を眺めて帰ったんだけどお寺の名前まで確認してなかった。まさか重要文化財に指定されてるようなお寺だったなんてね」

「ええ!そうなんです!素晴らしい場所なんです!若い方だとなかなかあのお寺の素晴らしさを共有できる方がいなくて」


普段まじめでおしとやかなのに、今は目が血走る程に興奮している。黒峰さんってちょっと危ない人?まあ出し物として提案するくらいだし相当好きなんだろう。


でもお寺の雰囲気いいな、なんて中学の頃の俺じゃ考えなかったかもしれない。ああいう場所に行くと心が癒されるというか、雰囲気と静寂が心にこびりついた汚れを洗い流してくれるように感じられる。マイナスイオン効果とかそういう感じのものだろうか。


「黒峰さん、ちょっと悠借りていい?」

「どうぞー」


2人で話していたところに紅葉が話し掛けてくる。

え、お前への貸し出し承ってないんだけど。


「悠がスク水喫茶に手を挙げた言い訳は時間がないから今度聞くわ。とりあえず悠はコスプレ喫茶と屋台どっちにするの?」

「ひ・み・つ」

「そういうのいいから真面目に答えて」


珍しくお茶目な顔を見せたというのに……この幼馴染日に日に俺への当たりが強くなってない?俺に対して委縮していた頃の心をちょっとは思い出せよ。なんならお前のトラウマ呼び起こしてやろうか?ああん?


「言わないなら私がうまいこと調整しとくけど」

「普通に屋台」

「えー、この機会に悠のコスプレ姿見てみたいんだけど。ほら私のコスプレ姿も見たいでしょ?」


いや?

こいつ俺と同じグループになろうと思ってるな。ここで俺が軽傷で済む方法は紅葉を屋台組に誘導することか?


「はーい休憩終わり!みんな席について!」

「悠あとは任せて!」

「おい紅葉ちょっと待て!」


紅葉は自分の席へは向かわず、実行委員の美濃さんの元へと駆け寄っていき何か話している。終わった気がする。嫌な予感しかしない。


「はーいじゃあみんな揃ったし再会するよー。じゃあそうだなぁ、コスプレ喫茶やりたい人、手を挙げて」


挙がった手を大まかに数えてみるとクラスの半分くらいだろうか。男女比率は3:7程で男子が少な目って感じか。どうやらメイド一択じゃなくなり女子も乗り気になったようだ。

でもこれで人数的にはほぼ半々だしちょうどいいんじゃない?


「う~ん、コスプレ喫茶は調理だけじゃなく当日の接客人数もある程度必要だし、屋台より少しだけ多めにしたいと思うのよね。それに接客の事も考えるともう少し男子が欲しいかなぁ」


言っていることはもっともな気がするが、少しずつ俺にとって悪い方向に向かっている。さっきの紅葉の耳打ちは関係ないと言ってくれ美濃さん。


「そうだな。女子に裏方全部押し付けるってのもあれだしな。今手挙げなかった男子で3,4人コスプレ喫茶に移ってくれればちょうどいいくらい?」

「そうね。誰か移ってくれる人~」


俺は空気。ここにいない。誰にも見えない。


「住田君1人かぁ。そうだなー高崎君どう?」


……やっぱりきた。流れ的にちょうどいいし、くるならばここだとは思っていた。事なかれ主義の俺的にはこういう時は断りたくないのだが、少しくらいは自分の意見言ってみてもいいよね?


「わるい、俺屋台やりたいんだよね」

「調理だったらメイド喫茶でも出来るし、無理にコスプレする必要ないよ?だめかな」

「悠は料理もできるんだよ!」「喫茶店ってメニューも複数あるだろうし料理できる人がいたほうが助かるよねー」「だよねー」「紅葉もいるもんねー」「私も高崎君はメイド喫茶やってほしいかな」


え、なんか女子達がすごい畳みかけてくるんだけど。ここで断ったら俺めっちゃ悪者じゃん?


「悠マジ助かる!」


いや曽我、俺肯定したか?


「他に移ってくれる人ー」


あ、確定しちゃってる。


その後、俺の時のように男子2人に個別交渉に見せかけた強制命令が言い渡され、平和に人員配置が終わる。もしかしたらその男子2人も誰かの好きな人なのかもしれない。


「よーし、出し物と誰がどちらを担当するかは決まったな。それぞれが提供するメニューなどはまた後日決めることとする。今日はもう時間がないからな」


先生がまとめに入ることで今日は終了となった。

まあ俺は料理ができるということでコスプレ喫茶送りにされたんだ。コスプレすることはないだろう。

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