文化祭に向けて
「や、やあ高崎!」
「部長なんかキャラ見失いかけてません?」
紗由とは同種のように思えて少し方向性の違う、のほほんとした雰囲気が部長の持ち味といっていいのだが、夏休みが終わり再会した部長はやけに焦っているというか緊張しているような雰囲気でそう話し掛けてきた。
夏休みは結局活動することなく、休みが終わる頃になって
『次の部活動は8日、放課後部室に集合』
とメールが来たのみだった。
正直部長らしくないと思う。確かに外遊部自体そこまで活発というわけではないが、部長は思った以上に意欲的で行動的なのだ。
そんな部長は今、キャラを見失ってると言われてから小声で何か呟いている。自問自答でもしているのだろうか。
「そういえば夏休み結局何もしなかったですね」
「うん。本当はまたキャンプか海にでも誘おうと考えていたんだけど。不覚」
一応何かはするつもりであったらしい。
そして部長は話を続ける。
「でも10月には文化祭も控えてる。文化祭の準備が終わるまでは外遊部も忙しくなる」
そういえばそうだ。部活見学の時を含めいろいろと話を聞いた感じ、この学校は文化祭に力を入れている。体育祭があれな分、文化祭を頑張ろうということなのかもしれない。もしくは、生徒目線から見ても屋台などがある高校の文化祭はやはり特別で、学校がというより生徒が主体となって盛り上がっているだけなのかもしれない。しかし
「正直外遊部の活動と言える事ってまだバーベキューとキャンプ1回ずつしかしてないと思うんですけど。結局部長が入部前に言っていたキャンプ道具の展示と写真を掲示するんですか?」
「そう」
「えっと、写真なんて取ってませんし、キャンプ道具と言えるものもかなり少ないと思うんですが……」
「忘れてた」
ガラガラ
「遅れました」
部長と話していると、少し遅れて結城が入ってくる。
ん?何か少し違和感があるな。
「結城なんかあった?」
「なんでもない」
「ならいいけどさ」
まあ大方なにかがトリガーとなって結城の不機嫌モードを発動させたとかそんなところだろ。
「まずい。非常にまずい」
部長が珍しく焦っている。
まさか考えていないとは思わなかった。
しかし、外遊部の事に関しては部長として責任感持ってるっぽいからな。今のままだと文化祭失敗という事実が部長的には見え隠れしているのだろう。しかし写真ってそこまで必要かね。確かにあればかさ増しにはなるし、説明なんかもしやすくなると思うが。
「今部長と文化祭の出し物について考えてたんだけど、予定してた写真も撮ってないし展示物も少なくて焦ってる感じ。結城なんかない?」
「ない」
結城さん、少しくらい考えようとする素振りを見せてくれません?俺とお前はいいけど今の部長の状態見ろって。
「展示の横でキャンプ道具を使った実演や体験なんてどう?」
「実演できることってあんまりないと思うんですけど。屋内で火起こしするわけにもいきませんし、薪をどうこうするのだってお客さんに刃物を使わせるわけにはいかないと思いますし」
「たしかに」
写真は最悪そこらへんで撮れば……。
「決めた、9月中に1度キャンプをする。日程は先生に聞いてから」
「校庭とか誰かの家の庭でテント立てて、それっぽい写真を撮るって手もありますけど」
「だめ。リアルさが大事」
部長なりのこだわりがあるようだ。まあ、もう1度キャンプに行くならそれはそれでいいか。
「わかりました。じゃああとは展示をどうするかですね」
「キャンプ道具だけでなく、フェザースティックなんかも作って展示する。フェザースティックの必要性やファイヤースターターを使っての火の付け方の解説なんかも入れて情報量のかさを増す。でもそれだけじゃ足りない。あとはキャンプ飯で誤魔化す」
キャンプ飯で誤魔化す?ということは食べ物も提供するのか。まあ部員3人じゃ喫茶店形式は無理だろうが、ただ作って売るだけならばどうにかなるか。
これならば、ある程度体裁が整いそうなビジョンは見えてきたと言えるだろう。
「私は今から先生にキャンプの確認に向かう」
そう言い先輩は部室を速足で退室していく。
「んで、本当に大丈夫?しゃべんないのはいつも通りだけどさ」
「……」
そう問いかけても、結城の口から特に何かが語られることはなかった。
話し掛けても今日は会話にならないようだし、ラノベを読みながら待っていると部長が帰ってくる。
「先生、9月中に泊まりは無理だって……」
まあいきなり言われていつでも都合がつくとはならないか。先生だって忙しい大人だ。
「今週の日曜は2人とも空いてる?先生は月末に近づけば近づくほど忙しくなると言ってた」
「「はい」」
もはや自明の理。聞く必要すらないだろう。
「では、日曜に外遊部初のデイキャンプを行う。持ち物は基本的に前と同じ。寝具なんかは別に持ってこなくていい。集合は9時に駐車場とする」




