ショッピング②
「いや、楽しくないとかじゃなくてさ?せっかくのお出かけであんまこういうこと言いたくないんだけどそんなにお金がなくて……」
涙ぐむのは卑怯だよね?
一応用意しておいた返答で満足してくれなかったのだから、もういいやと自分の財政状況を説明する。
いや、むしろ最初から言っておくべきだったかもしれない。やましいところがあったからか、無意識的にそれはだめだと思い込んでいたが、今は実に解放的な気分。
「なあああんだよかったぁ!私の事考えてくれて言い出せなかったんだね」
「そうそう」
結城に奢る時にお金がなくなっちゃまずいから節約してたなんて口が裂けても言えない。
でもお金がないという理由を口にするなら、からあげ定食頼まなくてよかったじゃん!
「お待たせしました。こちらからあげ定食になります」
だがもう遅い。
しょうがないなと2人で食事を進めながら話を続ける。
「じゃあもしかして悠が服買わないって言ったのもお金がないから?」
「さっき言った通りだって。まあお金がないから今持ってるので十分って感じ。秋物のシャツ1枚買うとしても3,4000円くらいはするじゃん?そう考えるとなぁ、ラノベ4,5冊買えるじゃん。だから今日のメインはあくまでも紅葉の服を選ぶってことで」
「なんか悠最近ラノベ換算する癖ついてきてない?でも悠、ずーっと『それいいね』とか『似合ってる似合ってる』とか同じ事しか言わないじゃん」
あ、バレてた。なんとなく褒めとけばいいかななんて思ってたんだけど……まあ好みくらいは伝えとけば、あとは自分で選んでくれるかもしれない。
「シックなのも好きだけど紅葉って元気っ娘って感じだし、明るい色合いのものが似合うと思うけどね。俺の好みでいえばゴテゴテしてるよりもシンプルな服装が好きで、過剰にルーズなのは嫌いってくらい」
「なるほど……」
街ですれ違う大学生っぽいお姉様方の中でたまに見かけるクールな感じの私服が実は1番好きなんだけど、着こなしが難しそうだったり正直どう説明すればいいかわかんないし、俺が好きな系統で紅葉に似合いそうなのを言っておけばいいだろう。
昼食を食べ終え、俺に好みを聞いてからはより一層服選びに気合が入ったようで、紅葉はトップスにパンツにスカートにと購入していき、合計は恐らく15000円分を超えているんじゃないだろうか。
紅葉さんどこからそのお金が出てくるの?ラノベも普段から結構買ってるよね。俺となんでそこまで差があるかね。
「ねーこれかわいくない?」
服を一通り買い終わり次は雑貨屋に着くと、紅葉はアクセサリーコーナーで2個1対のものを手に取りそんなことを言い始める。なんで2個1対なの……いやわかるけどさ。
「えっと、なんで?」
「今日のお礼としてどうかなって。悠お金ないし私がプレゼントしてあげるよ?」
「いや俺って普段からアクセサリー付けるような人間じゃないじゃん?俺の事なんて気にせずに自分の分だけ買えばいいと思うけど」
そうすると、紅葉の目が潤み始める。あれなんか既視感が……まさかだけどお前それ自由自在にできるの?違うよね?
「あー、どうせお揃いで何か買うとしても俺としては実用性のあるものがいいんだけど。あ、これとかいいじゃん」
そう言って1組のマグカップを手に取る。1個当たり700円と俺でもなんとか払える価格。プレゼントしてもらうのは避けたいところだ。
「ちょくちょく紅葉の家に行くわけだし、なら俺用にこれ置いとけばいいじゃん?それに値段も手頃で、これなら俺でも払えるからさ」
「あ、ホントだこれかわいいね。ピンクが私のでクリーム色が悠のかな。うん!私もこれ欲しい!」
よかった、思った以上に気に入ってくれたようだ。
ちょうどいいところにマグカップがあってくれてよかった。お揃いのアクセサリーなんて買った日にはめんどくさい事になる気しかしない。外に出る度に「アクセサリーは?」なんて聞かれ、結局は強制的に着けるハメになるのが想像できてしまう。
そして雑貨屋を出る頃には時刻は16時を回っていたので、そろそろ今日はお開きにしようということで2人で帰路に就く。俺が今日使ったお金はからあげ定食650円、冷奴100円、マグカップ700円。1450円ならまあギリセーフかな?祭りで結城に奢るとして、俺が自由に使えるお金は少しくらいは残ってくれるのだろうか……。
「今日はありがとね。久しぶりに悠と出掛けれて楽しかった。マグカップも買ったんだからまた近いうちに遊びにきてよね!」
「うん、じゃあまた。」
疲れた……。
紅葉新技会得!?




