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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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夏休みの始まり

涼修高校の夏期講習は8月2日からお盆に入る前日の12日までの平日にのみ行われる。つまりは実質9日間の登校となる。


紅葉とはショッピングする事を約束しているが、平日は講習と部活で忙しいという理由から1週目の日曜日に行くことになっている。いっその事、講習と部活の終わった後1時間くらい買い物するだけで済めばよかったのだが紅葉にそのつもりはないらしい。


それにしても、まだ夏休みに入って間もないのだが、夏休みって本当にすることがない。勉強は期末テストに向けて十分以上にやったし、どうせ来週からは夏期講習も始まる。こういうときのためにラノベを新しい趣味として見つけたはずなのだが、今はあまりお金を使うことができない。残弾は3冊。結城への奢りと紅葉とのショッピングさえなければなぁ……。


中学3年生の頃のように目の前に受験という餌をぶら下げられて忙しい方が、俺としては暇を感じることもなく性にあってるのかもしれない。


「花の高校生がなんでずっとソファーに寝っ転がって天井見つめてるのよ」

「いやだってすることないし」


外行きの服に着替えた紗由が、朝食後からリビングのソファーで何もせず寝っ転がっている俺にそう話し掛けてくる。これからどこかに遊びに行くのだろうか。


「紗由はどっか行くの?」

「私はクラスの子とこれからカラオケ」

「へーいいね、楽しんで来い」

「覇気ゼロね。悠だって遊べばいいじゃん」


金ない、目的ない、友達いない。3ないの俺にどうしろと。


「わかった。じゃあ紗由のおごりでカラオケについて行こっかな」

「いいわよ」

「ごめん嘘」


まさかの了承に咄嗟に否定する。

妹の遊びに兄同伴とか居心地の悪さが確実に限界突破する。


「そ、じゃあまあ行ってくる」

「おう」


まあ確かにこのままこうしていてもなぁ。俺がいくらでも寝れる人間ならこのまま寝るのだが、俺の場合あまり長時間睡眠を取ってしまうと頭が痛くなるからそうもいかない。

いっそ目的はないけど適当にぶらぶらしてみるか。行動は定期券が使える範囲内で。



保育園から中学校まで活発に友達と遊んできたため、西鴨駅から行動できる範囲内は遊び尽くしたといっていい。

だからどこか行きたい場所としてパッと思い当たらない時点で、ここでは特にすることもないだろう。


そう思い至った俺はまだ探索しきれていない学校近辺でも見て回ろうと考え、今は電車を降り通学路を歩いている。ここらへんは昼食調達のために一通り見て回ったが、その目的にのっとらないものは一切見ていないと言っていい。

だから何かあるかと少しは期待していたんだけど……特に何もないな。


学校の東屋にでも行って休憩、なんてことも今は制服じゃないから無理だし、さてどうするか。


それに家を出たのが11時過ぎ、時計を見るともう正午を回っている。お腹が何か物を入れてこいと要求してきている。今は通学路から大きく外れ、少し奥まった路地を歩いていたのだが、ちょうど目の前に喫茶店を見つける。

うーん、少しくらいお金を使うことは想定していたが、こういう個人の喫茶店ってちょっと高いイメージなんだよな。店先にメニューや価格がわかるものもないし……まあ高かったら1番安そうなものだけ頼んで少し休憩して出ればいいか。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」


そう声を掛けてきたのは、中年くらいの落ち着いた雰囲気の男性。他に店員はいないみたいだしここの店主かな。

好きに座っていいらしくどうしようかと辺りを見渡すが、客はスーツを着た男性が1人だけ。その男性はカウンターに座り、テーブル席が3席丸々空いている。混んでいないし本当はテーブル席で1人落ち着きたいところだが、思慮深さという名の小心が俺をカウンターに座らせる。そして目の前に立てかけてあるメニューを手に取り目を走らせる。


「注文いいですか。たまごサンドとアイスカフェオレ1つお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」


たまごサンドが350円、アイスカフェオレが300円。かなり良心的なお値段に思える。これだけで1000円超えてくるお店だって普通にあると思う。

そんな安い価格設定ということもあり、普通に食事を取ることにする。


注文を終えた俺は改めて店内を見回してみる。全体的にほの暗く、またアンティークなどは置かれておらずかなり簡素な印象を受けるが、喫茶店特有の落ち着く雰囲気は有している。雰囲気がよく、安く、あとは美味しければもう言うことはないのだが。


「おまたせしました」


待ったというほど待っていない時間で商品が提供される。量は平均的なものだろう。


「いただきます」


まずはカフェオレを飲んでみる。

ん!うまいなこれ!

スーパーやコンビニで売ってるカフェオレの延長線上のものを想像していたが、甘さはなくコーヒーの奥深い香りが鼻を通る。夏という季節にはとても爽やかだ。

駅前のカフェのようなチェーンのお店に行く時は、メニューに抹茶ラテやミルクティーが絶対といっていい確率であるのでそちらばかり頼んでいたが、お店のカフェオレってどこもこんなにおいしいの?自分の中で1つのことわりが壊れる感覚すら覚えながら、次はたまごサンドに手を伸ばす。

ん、なにこれ。うますぎない?

カフェオレを飲んだ時の倍以上の衝撃。これ何か特別なものが入ってるわけじゃないよね?そう思って断面を見てみるが、よくあるぐちゃぐちゃに混ぜられた普通のたまごサンドという感じ。からしがよく効いているのも好みなのだが、ものすごい調和をたまごサンドなんぞから感じる。


この店なんでこんな客いないの?


まあ立地は悪いし、メニュー数もあまり多くない。店の雰囲気的に入りづらいなんて人もいるかもしれないか。でも俺的にはどれも気にならない。昼食を毎日300円くらいに抑えて、残ったお金でたまにここに来ようかななんて、これからこの店に通う算段を俺は自然に立てていた。

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