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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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はかりごとの結果

「悠~!」


きたきた。結城と話がつくまではと、昨日ホームルームが終わった後はすぐにD組に向かったのだが、隙を見せたら早速だ。


「なに?」

「もーメールも見てないでしょ!昨日先生が言ってた夏祭りあるじゃん?あれ一緒に回ろうよ」

「ごめん、もう約束しちゃったわ」


勝った。


「は?誰?」


声のトーンが3段階くらい落ちた。あれ、さっきまでの紅葉の笑顔が好きなんだけど、どこに隠しちゃったの?


「まさかあの女?」


この時俺は思った。学力が高いと頭がいいは似て非なるものということを。先約さえあれば納得してもらえるのだと本気で考えていたことを。

この学校でこんなことを気兼ねなく頼めるのは結城だけなのだが、よくよく考えてみれば、この前結城と2人で校門にいることを目撃されてめんどくさいことになったのだ。このまま理由もなしに夏祭りを結城と一緒に回るなんて言ってみろ。俺は明日にはこの世にはいないかもしれない。


だから俺は受験の時以上に頭を回転させる。


「そう。前にキャンプ行った時に財布落としてさ、手が空いてた結城に探すの手伝ってもらったんだよね。その時のお礼として奢るってことで俺の方から誘ったわけ」


ほぼタイムラグなく答えることができた。これで嘘とは思わないだろう。


「なんかいきなり早口になったね」

「いや、恩を受けといてちゃんと返さないって人間としてだめでしょ?」


今の今まで不機嫌だったはずの紅葉は、いきなりニヤッと表情を変える。


「ふ~ん、まあ今回はそういうことにしといてあげる。で、その埋め合わせは何してくれるの?」

「え?」

「ん?」


埋め合わせって、今回別に埋めなきゃいけない部分なくない?


「わかったって。ジュース奢ってやるよ」

「は?」


譲歩したのにこれ。


「それが嫌ならなしってことで」

「じゃあどうしよっかな~。夏休みにどっか遊びに行くことは確定として~」


あれ、聞いてます?なんか勝手に予定決め始めたんだけど。


「海!」

「NO」

「じゃあ遊園地!」

「NO」

「じゃあなにならいいのよ!」

「いつも通り紅葉の家でラノベ読むってことで」

「NO!」

「ならせめてもうちょい近場の、映画館とかショッピングとか」

「……いいわ。8月に入ったら秋服買いに行こうと思ってたし」


妥協という感じだがどうにか納得してくれたようだ。俺は全く納得してないが。

俺の浅慮もあり今回はあまりにお粗末な結果となってしまった。

結城には大きな貸しを作り、紅葉とはショッピングデート。もしかしたら俺は何もしないほうがマシな結果になるのかもしれない。



それからはもう期末テストに向けて勉強するだけとなっていた。部活にも所属し、ラノベを読むことが趣味になった俺は、入学当初の想定より勉強できていないなと思いテストが終わるまでは勉強漬けになることを決めた。


そうしてただ家と学校を行き来し、勉強するだけの日々を送っていた俺は通学路に張られている『涼高夏祭り!』という張り紙を見て夏祭りについて考える。


夏祭りで結城に奢るなんて言ってはいるが、正直夏祭りの規模がどれくらいかわかっていなかった。行事実行委員と各クラスから2人ずつだから、屋台なしの身内だけでの盆踊り的なレベルすら全然ありえると思っていたが、これだけ街へ宣伝しているのだから、思っていた以上に規模の大きなものになるのかもしれない。


屋台を外部に依頼して多くの店が集まってしまったら、結城に財布の中を空っぽにされることはほぼ確定と考えていい。

しかし、問題は俺があまりお金に余裕がないこと。

残念ながらうちの高校はバイト禁止だ。隠れて短期バイトでも探すという手もあるが、禁止と言われている手前なるべく取りたくない手段。ならば、やはり節約を考えるべきだろう

それならば、紅葉とのショッピングでは意識してお金を使わない方向でいこうと俺は心に決める。


そんな詮無いことばかり考えているとあっという間に期末テストは終わり、夏休みを迎えていた。

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