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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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結城幸の嘲り

【結城幸視点】


「あなた結城さんよね?私A 組の夕陽紅葉って言うんだけど」

「?」


いきなりなんだこの女。

私にこの学校で話し掛けてくる生徒なんて数えるほどしかいない。

入学当初はまだ話し掛けてきた人間もいたが、私の素気無(すげな)い態度のせいでそれもなくなった。今では用事で話し掛けざるを得ないクラスメイトか、外遊部の連中だけだろう。

しかし、この女の顔に見覚えはない。他のクラスの人間とすると私に話し掛けてくる理由などないはずだが。


「高崎悠の幼馴染って言えばわかるかしら?」


はぁ、あの男か……。

そもそもあの男の幼馴染がこの学校にいたのか?そんな話聞いたことすらない。


「何の用だ?」

「あなた、悠とはどういう関係?」

「は?」


この女は何を言ってるんだ?

幼馴染と名乗る人間にあの男との事で話しかけられるいわれは無いし、幼馴染なら私が外遊部員ということくらい知っていてもおかしくないはずだろう。


「先週2人で校門の前で仲良さそうにしてたよね?だから聞いてるんだけど」

「たまたま所属している部活動が同じなだけだ。その時だって仲良くしていた覚えなどない。ただ外遊部の部長が来るのを待ち、それから活動に必要な道具を買いに行っただけだ」


私は悟る。部長のような人畜無害な女と違い、この女は関わるとめんどくさいタイプの女だ。適当に流してさっさと退散しよう。


「それならいいんだけど、一応忠告しとくわ。悠は私の幼馴染なの。悠をわかってあげられるのは私だけだし、隣にいるべきなのも私。同じ部で活動することは問題ない。だからって必要以上にベタベタしたり、ましてや好きになるなんてことはないようにね」


あの男を貴様がわかるのか?

理解を示し、幼馴染という近い距離にいる人間をなぜあの男の傍で1度も見かけたことがないんだ?昼食の時、廊下で見掛ける時、登下校の時、そう、部活動以外の全ての時間においてあの男は1人だ。もし貴様があの男を慮って1人にしているというならば、それはつまり貴様が必要とされていないということじゃないのか?


まああの男を見るだけでもわかるが、信頼を寄せる人間がこの学校にいるとはとてもではないが思えない。


忠告だと?先程からの女の高圧的な態度を含め、その物言い全てが癪に障る。


「貴様にとやかく言われる筋合いはないだろう。用はもう終わりか?」

「私の言ってること理解してるの?」

「なぜ理解する必要がある?」


この女と話しているだけで反射的に目の前の窓ガラスを割ってしまいそうだ。


「本当に聞いていた通りね。まあいいわ。悠の話を聞いてもあなたのことなんてなんとも思っていなそうだったし、勘違いはしないことね」


そう言って女は私の元を離れていく。イライラが止まらない。私はこの怒りをどこにぶつければいいのだろうか。



「この学校に仲がいい人間はいるのか?」


同日、部活動が終わって男と2人になった私は、先程のこともあってか気が付けばこんな質問をしていた。

返ってきた言葉は否定を含むもの。幼馴染の存在こそ初めて口にしたが、その様子に口から出まかせを言っているような雰囲気は感じられない。今まであの女のことを話さなかったのもやはりそういうことなのだろう。


私はこの男という人間の性質を理解しているつもりだし、受け答えでなんとなくでわかる部分も多い。だからといって全てがわかるわけじゃない。もしかしたら今も私にわからないように本心を覆い隠して答えている可能性だってあるが、それでも大きく外しているとは思えない。


その後、ホームセンターで必要なものを買い、駅まで送ってきた男と別れた直後あの女と再会した。


女は私のことを睨みつけてきたが、特に言葉を交わすことなく男の元へと駆けていった。そこで私は男の様子を見て確信に近いものを得た。


おいそこの自称幼馴染、気付いているか?男が貴様を見るその目、それは貴様が望んでいる通りのものか?

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