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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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アクシデント

ゴクゴク


「部長!それ!」

「ま、まずい……」


食事を終え、先生が買ってきたものを焼いて食べながら歓談している折、コップに注がれた紫色の飲み物を部長が飲み干す。

先生が離籍している間に、隣に座っていた先生のワインの入ったプラスチックコップを間違えて取ってしまったようだ。途中で止まることを知らず、クイっと1杯丸々飲み干しちゃったよ。


「どうした?」

「先生が置いていったコップに入ったワイン部長が間違えて飲んじゃいましたよ」


事情を俺から聞いて、部長の前に置かれているコップに何も入っていないことを確認した先生は顔を引きつらせ、まるで自分に言い聞かせるように頷きながら言葉を発する。


「ま、まあ大丈夫だろ!所詮1杯だ1杯!」

「責任問題、管理不行き届き」

「クッ」


でも確かに所詮1杯だ。


「少しふらふらしてきた」


あ、だめだ。顔がどんどん赤くなっていく。元々弱いのか酒を飲み慣れていないからかはわからないが、大丈夫だろうか。


「すまない橘、とりあえず少し自分のテントで休め。高崎、運んでやってくれ」

「いや私が間違えて飲んだだけだから」


え、先生じゃなくて俺が?運ぶってのは文字通りに?

まあ、テントは近いにせよふらふらするって言ってるし万が一転んでしまうと危ないか。


「じゃあ部長持ち上げますよ」

「え」


軽っ!40キロもなさそう。

あーでも先生がいくら大人でも、女の人にこの重さを持ち上げるのはきついのかな。


部長も最初は驚いていたが、特に何も文句を言わず運ばれてるしそのままテントまで連れて行っても大丈夫そうかな。


「じゃあ、少し休んでてください。俺達ももうすぐ片付けると思うんで、そのまま寝ちゃっても大丈夫ですよ」

「ありがとう」


そうして部長をテントに運んだ後、まもなく料理も食べ終わり軽く片付けをして今日はお開きとなった。



テントに入ったはいいがまだ眠れそうにないので、近くにある小川でも見に行こうとテントの外に出ると


ガサガサ、ジジジジジ


隣のテントからジッパーを上げる音が聞こえてくる。

ん?部長かな?


「結城か。どうしたの?トイレかなんか?」

「ちょっと……」


なんか歯切れが悪い。いつもの余裕な態度は鳴りを潜めている。


「今からそこの小川見に行くけど来る?」

「……」

「よくわかんないから来るなら勝手についてきて」


歩き始めると足音が追随してくる。どうやら着いてくるらしい。

そしてすぐに小川に到着する。腰かけるのにちょうど良さそうな大きな岩があったので腰掛けて尋ねる。


「で、どうしたの?」

「部長の寝相がすごく悪くて……」

「フフフ」

「何を笑っている」

「いや、部長に寝るの邪魔されたり抱きつかれたりしてるの想像したら笑うでしょ」


結城が言うには、テントに戻ると既に部長は眠っていたらしい。そして結城も寝ようと横になって目を瞑ってからからいろいろあったのだとか。いろいろってなんだろ。


「で、今日は楽しかった?」

「貴様は?」

「結構楽しかったよ。お前に邪魔されて本読めなかったけど」

「悪かったな」


……は?今こいつ悪かったっていったの?


「え、今謝ったってことでいいの?」

「は?皮肉もわからんのか貴様は」


本当に謝ったならばもう少し動揺なりが顔に浮かびそうなものだが、結城を見る感じいつもと変わらない。本当にただの皮肉のつもりで言ったのだろう。


「謝ったと思ってびびったじゃん。つかそれ皮肉になってんの?で、さっきはぐらかしたけど結城は楽しかった?」

「……」


先程答えなかった質問をあえてもう一度してみると、今度は少し黙り込む。

皮肉にも驚いたが、この沈黙自体にいつもとの相違を感じる。ならばさらに押してみよう。


「結城は楽しかったの?」

「同じことを聞くな」

「いや答えるまで聞き返そうかなって、で?」


三度目で少し苛立ちも感じられたが、四度目の問いでそれも消える。

そして、溜息を吐いたかと思うと口を開く。


「まあ悪くはない」


答えるのか。こいつの性格的に結局答えない、もし答えたとしても肯定的なことなんて言わないと思ってたけど案外聞いてみるもんだな。


意外と押しに弱かったりして。

まあそうでなかったとしても、部長の寝相も相まってか今の結城がいつもと少し違うのは確か。

ならば聞きたいことを聞くべきは今かもしれない。


「へー、よかったじゃん。で、あのカフェの時のことだけどさ」

「貴様は本当にしつこいな。なぜ私に聞く」


否定的な言葉に対してあまり刺々しさがない、これは本当にいけるかもしれない。ならばあやふやなものでなく、しっかりと理由を返すべきだろう。


「自分の理解者に聞いちゃだめ?」

「理解者……」

「で、どうなの?」


押しに弱いと仮定すると、押してみる価値はある。すると結城の顔がニマァとしたものに変わっていく。


「貴様が1番聞きたいことを私が答えるわけがないだろう」


ああ、この表情を見ればわかる。こうなったら粘っても絶対に答えてもらえないだろう。


「そ、でもいつか教えてもらうから」


この時の結城の笑顔は、どこかいつものいたずらな物とはどこか違う印象を受けた。



「おはようございます。よく眠れました?」

「おはよう、ぐっすり眠れた。爽やかな朝」

「結城も先輩と一緒に寝れてよかったな」


目の下にくまできてるぞ。さてはお前あの後寝れなかったな?その顔を見てると昨日の鬱憤うっぷんが晴れる気分。いや~いい朝だなぁ。


それからは、菓子パンなど各々簡単に食事を済ませた後、ビショビショになったテントを拭いて畳むなどの後片付けを済ませ、キャンプ場を後にした。

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