お楽しみの食事TIME
「黙れ、今いいところだ」
結局、結城から俺のラノベと椅子が返ってくることはなかった。
いや俺の主目的の1つだよ?それ。なに楽しんじゃってんの?偏見かもしれないけど、女子ってラノベに興味ないんじゃないの?紅葉だけが特殊なんだと思ってた。
いっそのこと、『えーラノベとかオタク臭い~キャッキャ』とか言われて平穏に読めた方がまだマシだった。
そして空を見れば青色にオレンジ色が混ざり始めている。
さすがに暗くなってきた中で読もうとは思わない、タイムリミットだ。
「なかなかおもしろかったぞ」
褒められても何も嬉しくねーよ。
「14時過ぎに食べたばかりでまだ早い気もするけど、そろそろ夜ごはんを作り始める」
こうなったら、心にぽっかりと空いたこの穴にごはん詰め込みまくってやる。
そして机の上に皆、自分が買ってきた食材を並べ始める。
俺 : パスタ、山菜、にんにく、ベーコン、顆粒だし
部長 : にんじん、キャベツ、じゃがいも、玉葱、ウインナー、コンソメ、高菜
結城 : エビ、ケチャップ、マヨネーズ
先生 : ステーキ肉、魚の干物、焼き鳥
「おい、貴様が出来合いのものはだめと言ったのに、干物に焼き鳥だぞ?いいのか?」
「いや先生はいいんだよ……たぶん」
「ん?この干物金目鯛だぞ?そんなこと言ってたらやらないからな?それにキャンプといえばこういうものは必要悪だ」
確かに、焼くだけの肉や魚がないとそれはそれで物足りないがズルっこい。
「部長はまともな料理そうで安心しました」
「おいしいとは限らない」
いやもう買ってきたものを見ればわかる。料理が全くできない人間はそうはならない。
心配になのはむしろこのエビ女。
「っつかさ、先生のこと言えるの?お前のそれ料理って言えないだろ」
「何を言っている。私はこれで2種類の料理を作るからな」
すげー嫌な予感がする。
まあ他は気にせず自分の料理を始めよう。とは言っても俺も人の事を言えないくらいには簡単だな。パスタを茹でてにんにく、ベーコン、山菜を切って炒めて、パスタを投入して味調整するだけだ。
先生の買ったものは追々焼きながら食べることになったので、それを除く他3人で調理を進めていき、無事出来上がったところで4人で食卓を囲む。
「よし、じゃあ外遊部第1回キャンプを無事開けたこと嬉しく思う。量はたくさんある。思う存分食べよう。いただきます」
「「「いただきます」」」
食事の挨拶を終えると、部長が机の上に追加で皿を置く。
「高崎がパスタ作っちゃってるけど良かったらみんなこれも食べて」
「おむすびですか?」
「そう、メスティンで予め炊いておいた。下の方は焦げちゃったけど上の方はたぶん大丈夫。具は高菜を入れてある」
健気だ。あんなに嬉しそうにメスティン買ってたんだから自分だけの料理とか作ってもよさそうなのに。
ならばありがたくいただくこととしよう。
「んー、うまいですね。炊飯ジャーで炊くよりもおいしいです」
「おいしいです」
「おお、こういうのもキャンプっぽくていいな」
「ん、よかった」
そして次に各々の作ったものを見ていく。
俺が山菜パスタ、部長はポトフ、結城は……。
現実を受け入れたくない。これは女子力という言葉すら冒涜している。
「結城、一応これ聞くけど何?」
「エビチリとエビマヨだ」
やっぱり……。
「エビにケチャップとマヨネーズ和えればエビチリとエビマヨになると思ってる?それに背わた取った?」
「?」
だめだ。
まあ救いはエビを茹でてケチャップとマヨネーズかけて混ぜただけ。問題なく食べることはできる。
なんで見てきてんの?まさか褒めてもらえるとか思ってる?
「……いやまあそりゃおいしいよ?」
だって普通にエビだもん。
「そうだろう」
「まあケチャップもマヨネーズももっと量控えめでいいけど。ってか自分でも食ってみろよ。それお前の知ってるエビチリか?」
「……。少し違うがこれはこれでおいしいから問題ない」
だめだこいつ。自分への甘さと、エビ好きバイアスが掛かっている。
「ああ、部長のポトフおいしい。この優しい感じの味、すごい心が温まる」
「ん、ありがと。高崎のパスタもおいしい」
「おい、私の料理のときとは反応が違うぞ」
当たり前だ。
というか、お前が作ったものを料理と呼称するな。
「結城、お前なぁ。橘は分かるが高崎以下だぞ?女なら得意料理の1つや2つでもないといざというときに困るぞ?」
「高崎以下……?」
そこに引っかかるなよ。そういえば先生の言葉を復唱しただけだが、初めてこいつの口から高崎って言葉がでたな。
「い、いいんです。私は男女平等主義なので」
男女平等を大義名分にやらないことを正当化するな。
フェミニストの皆様に怒られろ。




