それぞれの過ごし方①
「あとは机、椅子なんかを設置して……その後どうする?」
設置が終われば、あとは料理を作るために火起こしをする必要がある。カセットコンロを持ってきたわけじゃないからな。
それで、恐らくやらなければいけない作業は終わりなはずだ。
「俺はさっき買った薪割ってみたいです。それに動画で見たことあるだけなんですけど、フェザースティックっていうのも作ってみたいんです」
「なにそれ」
「切り分けた薪を削って火を着けやすくするみたいです」
「なるほど、じゃあ私はその後火を着けてみる」
話し合いでのそれぞれの希望通り、俺は薪割り、部長は火起こしをすることに決める。
「高崎、その鉈やナイフを使うんだろ?くれぐれもケガのないよう気を付けろ」
「はい」
受付から買った薪は元々ある程度切り分けられているので、それをさらに細分化するように薪割り台の上で鉈を使って次々に割っていく。
ただ薪を割るだけのはずなのに案外おもしろく、俺だけじゃなく他の人も体験してみればいいと思い
「みんなもやってみます?」
そう提案してみる。
「やる」「やらん」「私はいい、今忙しい」
悲しいことに意欲を示したのは部長だけだったが。
「じゃあ部長、危ないんで気を付けてくださいね。それで先生はそれなにしてるんです?」
「いくら日焼け止めを塗ったからといって女の肌に紫外線は禁物だろう。だからこれを用意した」
それはタープと呼ばれる日や雨を遮るための道具、俺たちが用意しなかったことを知って先生が用意してくれたらしい。ポールを立てたりトンカチで打ち付けたりと悪戦苦闘した後、無事出来上がったそれを見上げながら腰に手をやった先生は
「どうだ」
すごいしてやったり顔。
「おー、すごいキャンプっぽい!それにこれで突然天気が変わったりしても大丈夫ですね」
「そうだろう。私に感謝するんだな」
俺達だけでなく、先生もなんだかんだアウトドアを満喫しているようだ。もしかしたら、案外こういうことに興味があったのかもしれない。
「ふぅー、じゃあ私は休憩する」
そう言って椅子に座るやクーラーボックスからビール缶を取り出している。
酒ってどういうものなんだろうな。大人になると俺も水分摂取の如く酒を飲むようになるのだろうか。
先生が一段落したのを見届、他は何をしているんだろうと辺りを見渡すと部長はまだ鉈で薪を割っていた。鉈で割ろうとするものの、最後までうまく割れないらしく手で頑張って引き裂こうとしている。
部長はまだお楽しみのようなので、今度は結城を見てみると、結城はなぜか俺の買った椅子に座って目を瞑って寛いでいる。後で本読むときにはどけよマジで。
よし、まだ元気が有り余ってるし、俺はさっき自分が割った薪でフェザースティックでも作ってみようかな。
▽
「高崎、これ火着く気しない」
「そうですね……」
俺が作った不格好な数本のフェザースティックに、木の削りカスなんかを合わせて火を着けようとするのだが、ファイヤースターターを使って火が着く気がしない。
「火花はちょっと散る、でもそれだけ」
「これって、やり方があるんですかね?」
「……」
部長すごい悲しそう。
「ケータイで調べちゃいます?」
「うん……」
部長もたまらずケータイ解禁。調べたところによるとティッシュや解した紐などに引火させ、燃え広がらせると簡単なのだとか。それからティッシュを使って試し、フェザースティックの削った部分が少し燃えはしたのだが、うまく火を大きくすることができず鎮火してしまった。
ぐぅ~
部長から空腹を知らせる音が鳴る。
「お腹空きましたね」
「うん」
もう時計は14時を回っている。もう遅いがそろそろ昼食を取りたいところだ。部長はまだ名残惜しそうにしているが、ここは俺から言い出そう。
「今日が最後ってわけじゃないですし、今日はもうチャッカマン使っちゃいましょう」
しぶしぶ部長が頷くのを見届けると、チャッカマンで火を着け始める。
それでも少し手間取りはしたが、着火剤を使うと簡単に薪にも引火した。本当に、あってよかった、着火剤。俳句みたいになってしまった。
先輩が昼ごはんとして用意してくれのは、火にかけるだけで出来上がりのアルミの器の鍋焼きうどん×4。これじゃ火起こさないと食べれないから、今回はしょうがないね。
「部長、火起こしは今日は無理かもですが、フェザースティック作るのもなかなか楽しかったですよ。ナイフお渡しするんでうどん食べたらやってみたらどうです?」
「やる!」
思ったよりもいい返事が返ってきた。よかった、新しい目的を見つけて元気を取り戻してくれた。いい意味で単純な性格だ。
それから4人で遅めの昼食を終え、部長にフェザースティックの大まかな作り方を伝えた俺は読書を始めようと、わざわざ今日の為に用意した椅子へ向かう。




