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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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ついにきた!

前の部活から1週間とちょっと。待ち詫びていただけに結構長く感じた。


「おはよー!」


ついつい挨拶も大きな声が出てしまった。


「ああ。今日は10時に学校だったな。忘れ物がないか確認したか?大迫だとそこまで遠いわけじゃないが1泊するんだ。いつも言っているが迷惑のないようにな。なにかあったら電話してきなさい」

「わかってるって、大丈夫大丈夫」


そう、何を隠そう今日はキャンプの日なのだ。


「ねえ、前のバーベキューのときから思ってたけどさ、悠のそれって部活なの?どう見ても遊びじゃん」

「いいんだよ、野外活動を経験するっていうのは立派な勉強の一環でもあるんだよ」

「物は言いようね」


部長が言っていたように、認められてさえすればそれはもう立派な部活なのだ。それに顧問の多井中先生だって何も文句を言ってこないのだから問題など決してない。

紗由の言っていることを必死に否定するように、言い訳を頭の中に並び連ねる。


まあ、こうやってグズグズしていて、いざ何かのアクシデントで遅れるなんてあっちゃいけないな。電車を使う以上、遅延しているなんて事態もなくはない。少し早い気はするがそろそろ出掛けよう。


「それじゃちょっと早いけど行ってくる」

「ああ、気を付けて行ってきなさい」

「行ってらっしゃ~い」


父さんも心配していたが持っていく物の確認はしっかりした。

もちろん俺のキャンプの目的の1つの読書のために、本屋に行って4冊ほどラノベも用意してきている。まさに万全。

まあ4冊なんて持って行っても読み切れる気はしないが、足りなかったというよりはマシだろう。


すると突然空から声が降ってくる。


「今日からだったわねキャンプ。メールするから返しなさいよ。キャンプ中の写メとか送ってくれてもいいから」

「俺緊急時以外では脱機械することにしてるから。じゃあまたな」


紅葉が、自分の部屋の窓から顔を出し話し掛けてきたが華麗にスルー。邪魔されてなるものか。



9時半、集合時間が10時ということを考えると、やはり早く着きすぎてしまった。

集合場所は先生の車が止めてある駐車場なのだが、さすがにそこに行くにはまだ早いなと部室棟へ向かう。


……いや、今日はあの東屋で30分ほど時間を潰そうかな。

そう思い直し、辺りを確認した後部室棟とは逆の東屋の道へと入る。


ああ、やっぱりここはいいな。この空間だけ切り取られたかのように静寂に包まれている。まあ耳を凝らせば遠くのグラウンドからの声も聞こえてはくるが、静謐(せいひつ)な雰囲気がそれを掻き消している。


周りに咲くペチュニアを一通り見た後、東屋の椅子に座りラノベを取り出す。

花の世話をしている土御門先輩が土曜のこの時間にちょうど世話をしに来るなんてこともなく、この空間で過ごすことで、先輩が『ここは自分の場所』と言いたくなった気持ちも理解する。前は先輩が一緒だったから、独り占めできたのは今日が初めてだからな。


願わくばこの場所が俺だけの、いや先達(せんだつ)でありここを作り出した張本人である先輩を入れないわけにはいかないから、2人だけの場所になればと思う。


待ち合わせまでの30分弱、読書の質も一段上がったように感じられた俺は晴れやかな気分で駐車場へと向かう。


「ギリギリ」

「すいません、30分前には来てたんですけどちょっと寄り道してて」

「よーし、これで全員揃ったな。橘と結城の荷物は積んだから、高崎も荷物をトランクに積んでくれ。このまま出発するぞ」

「あ、はい」


一応待ち合わせ時間には間に合っているがもう少し早く来るべきだったかな。少し堪能しすぎてしまったようだ。

荷物を積み込んだ俺は車に乗り込もうとするが、


「えっと、男の俺が助手席とかじゃなく?」

「ん、部長の私が助手席」


助手席に部長がいるならば、俺の座り先はもう1つしかない。


「チッ」


後部座席に座る結城の舌打ちに出迎えられ、とても和やかな雰囲気が車の中を包む。


「キャンプ場に着くまで40分程だろうが、今のうちにトイレには行っておけ。キャンプ場付近のスーパーで買い出しをすることになるが、それ以外でどこかに寄るつもりはないからな」


皆トイレは大丈夫のようで、そのまま学校を出発する。


「お前たち大迫キャンプ場がどんなところか知っているか?」

「いや、場所と必要な物を揃えるために最低限の事を調べて予約の電話をしただけ。予約は必要ないって言われたけど」

「なら私が教えてやろう。大迫キャンプ場はな」

「だめ。先に聞くと感動が半減する。せっかくなら自分の目で見て知りたい」

「そ、そうか」


先生はしっかり調べてきた感じかな。こういうところでも人間性が出ている。部長が実体験あるのみな人なのは言わずもがな、先生は下準備こそ正義な人なのかもしれない。出鼻を挫かれた先生の後ろ姿は少し寂しそうにも見える。


「そういえば、キャンプでは1人1品料理を作ってみんなでシェアして食べるからよろしく」


お、いいねそれ。別に俺は凝ったものを作れるわけじゃないが、外で料理すること自体は楽しみにしていたし、誰が何を作るかのワクワク感まで味わえるなら一層楽しいだろう。


「いいですね」

「え」

「私もか?」


反応は三者三葉。結城はそんなこと聞いてないというように唖然としている。こいつまさか……?


「もちろん先生も。顧問でありキャンプ仲間でもある」

「そうか」

「みんな何を作るかは秘密」


部長やるー。まるで先程のフォローとでもいうように先生が元気を取り戻した。


それにしても何作ろうかな。スーパーで行き当たりばったりってのもまたいいかもしれないが、おおよそは決めておきたい。俺以外の3人は女性陣ってこともあり、やはり軽めなものを作るのかな?大食漢ではなとはいえ、さすがに主食となるものは欲しいところ。なら俺が作るべきは炭水化物系。米か麺か、はたまたパンか……うーん、うーん……。

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