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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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邂逅

え、ここ西鳩駅だよね?おかしいの俺じゃないよね?

なんか結城が降りてるんだけど。


「えっと、引っ越した?」

「なにがだ?」


いや、心から疑問ですみたいな顔でこっち見てこないでよ。まるで俺がおかしいみたいじゃん。


「ここ西鳩駅なんだけど」

「知っているが?」

「ホムセン行かないって言ってなかった?」

「思い返してみろ、1度も行かないとは言ってないぞ」


そうだっけ。いやたしかに否定まではしてなかった気がするけどさ、嫌がってたじゃん。


「どうせキャンプまでに私も買わなければいけないんだ。それなら早いうちに済ませておけばいいだろう」


釈然としねー。なんか悪いのは俺みたいな感じの話の帰結の仕方じゃん。まあ、もうこうなったら一緒に行く以外に選択肢はないんだから、今回だけは大目に見てやろう。


「じゃあ行くか」


結城は特に抵抗も見せず後を付いてくる。


俺と結城の関係性が少なからず変化したのはおそらく歓迎バーベキューが始まる前に立ち寄ったカフェと考えて間違いないだろう。今のこの状態を打ち解けたと言っていいのかはわからないが、少なくともあの時よりは好転していると思う。ならそろそろいけるか?


「そういえば結城さ、あのカフェの時の言葉だけどなんであんなこと言ったの?結城には俺はどう見えてる?」

「……」


自然な流れでいけるかとも思ったがそんな簡単にはいかないようだ。さっきまである程度は受け答えもあったと思ったのに、結城は途端に黙る。


「少しだけ、一言だけでいいから!」

「軽薄な男」


軽薄な男ってそれ、いや確かに今の俺を表す言葉としてはかなり的を射ている気がするが。でも違う。それは俺が聞きたい答えじゃない。軽薄という言葉は、基本的に人の上辺に対して使われる言葉のはずだ。俺が知りたいのは内面の話であり理由なのだ。


「もう一声!」

「1度答えてやっただけでもありがたく思え、もう2度と答えることはない」


うーん、聞き方ミスったかなぁ。いやでもこいつの場合わかってて答えたんじゃないかとすら思える。そもそも少し打ち解けたからとはいえ、こいつが俺の得になるようなことをしてくれるはずがない。


「結城わかってて言ったでしょ」

「フンッ」


ほら口角が上がってる。俺は未だにこいつの性格が全然掴めないんだけど、このまま関わっていけばいつかは教えてくれるんだよな?そうでなければまた別の方法を考えるか、もしくは俺が自身をより理解しなければならない。

しかし、現状では自身のことがわからない。自分がどう思っているかという選択肢はいくつも浮かんでくるが、どれが自分の本当の気持ちかがわからないのだ。

そもそもの話、俺は自身を含め、人の気持ちを理解することが不得手なのかもしれない。冤罪を着せられる前ですら、相手のことを理解していたなんて自信をもって言えない。


だから、そのための糸口は今のところやはり結城が最有力と考えていいだろう。


そうして2人で駅の北口を出て少々歩くと、まもなくホームセンターが見えてくる。まあホームセンターなら何かしら売っているだろう。

まあ1番の目当てはクーラーボックスなども括り付けれるキャリーカートだ。

店に入ると、俺はキャリーカートが置いてありそうなコーナーを探しながら歩いているが、結城もまだあとを付いてきている。まあ俺が何も言わないから、目的の場所まで連れて行ってくれると思っているんだろうが、鞄系が欲しいならたぶん別のコーナーなんだけど。

そう考えていると、ちょうどキャリーカートの置いてあるコーナーに辿り着く。


「あーあったあった。俺はこれでいいかな。結城はどうすんの?リュックならあっちのコーナーにあるみたいだけど」

「これはなんだ?」

「荷物を括り付けて固定して運ぶ感じかな。まあ俺も存在知ってただけで使ったことはないけど。クーラーボックスとか持ち運ぶの考えるとこれが1番かなって」

「私もこれでいい」


え、一緒のにすんの?まあここ種類少ないし値段でも見ても自動的にこれになるのはおかしくないか。

買う商品が決まると、他に目的もない俺達はすぐに会計を済ませて店を出る。


俺の家は駅から南口方面にあるので、改札までは結城を見送ることにしたものの、結局カートを選び終わってから改札に着くまで2人の間に会話らしい会話はなかった。

一応俺からは何度か話を振ったが、会話は一人じゃできない。返答する気がないなと察した俺が今日はもういいやと黙ると、当たり前だが無言の時間が続くこととなった。


それでも別れ際ぐらいは挨拶をするべきだろう。一緒にいて無言のまま別れるとかどう考えてもやばい。


「それじゃまた部活で」

「……」


結城はこちらを一瞥し、フンッと鼻を鳴らしそのまま改札を通っていく。挨拶は大事って先生に教わらなかったのかよ。


ん?あれ、結城そんなに見つめ合ってどうしたの?

それ、俺の幼馴染なんだけど?2人知り合いだったの?


そう、神がかりなタイミングというべきか結城が改札を通ってまもなく、ホームへ続く階段から紅葉が上がってきたのだ。



「悠、なんでまたあの女と一緒だったの?」

「ほらこれ、今度部活のときに使うカート、俺とあいつだけ持ってなかったから買いに来ただけ。ほら、北口にあるホムセンあるじゃん?」

「ふ~ん」


俺と紅葉が会話するのを結城は少し見ていたが、すぐにホームへと降りて行った。

紅葉は紅葉で機嫌が悪そうだしもう一体なんなんだよ。このイベント、前の夕陽家で終わったんじゃなかったの?


「よし、じゃあ俺帰るわ」

「は?」

「よかったら一緒に帰らない?」


今日の紅葉は一味違う。俺は取引先の顔色を伺うように終始ペコペコと紅葉のご機嫌取りをしながら帰ることになった。いや学生だから知らんけど。

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