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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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夕陽紅葉の暗躍②

【夕陽紅葉視点】


これなかなか面白いわね。


ラノベの存在はギリギリ知っていたけど、どういうものかまでは知らなかった。これなら悠との時間のために嫌々読むなんてことにはならなそうだ。


でもこれ素晴らしいわね。1巻読むのに漫画と違って時間がかかる。これを読むことを口実にすれば不自然さを感じさせることなく悠のゴールデンウィークを私一色にすることも不可能ではない。


そうして私は見事悠の家を連日訪れることに成功した。


最初は悠は勉強をし、私はラノベを読む。やってることは違うが同じ空間にいるだけでよかった。でもどうせなら本当の意味で同じ時間を過ごしたいと思った私は、悠が読んでいないと言っていた範囲まで読み終えると悠にネタバレを(ほの)めかした。ネタバレを許容できる人間と出来ない人間がいるが、悠は突き抜けて後者だ。私の読み通りなら、悠は勉強を放り出して私にネタバレされてたまるかとラノベを読み始めるはずだ。もし帰れなんて言われたら……そのとき考えよう。


そして悠は私の考え通りラノベを読み始める。


それからはとても充実した時間だった。2人で同じことに没頭し、休憩とばかりに悠の読んだところまでの感想を言い合う。ああ、楽しい。こんな時間いつ以来だ。やっぱり高校に入って積極性を持ったことは間違いではなかった。


そうしてゴールデンウィークはもう100点を超えるほどの素晴らしいものになったが、このおいしい状況をここで終わらせるわけにはいかない。


家に帰った私は友達にメールを送った後、日が暮れかかっているにも関わらずすぐに本屋に走った。

少しでも多くの本を読む。それはイコール悠との時間が増えることを意味していると考えたのだ。


とにかくいろいろなジャンルの物を買ったが、その中でも幼馴染の出てくるラブコメや純愛モノを多く買った。ちゃんと面白くないと悠に薦めても読んでもらえないだろうが、面白ければ読んでくれるはずだ。


ブブブ、ブブブ


『あーその子、クラスでも不愛想で有名だよ。友達も1人もいないし紅葉の心配してるようなことにはならないと思う』


同じテニス部のD組の子から返信がきた。悠の部活の女の子は陰キャと不愛想ぼっち。これで後顧(こうこ)の憂いなど無くなった。


晴れるような気分で、両手に紙袋を抱え私はスキップしながら家へと帰った。



あれから私は学校と部活が終われば宿題などそっちのけで毎日ラノベを読み続けた。


そこで見つけたのが『俺のヒロインは幼馴染以外ありえない』と『復讐のアウレリウス』だ。『俺のヒロインは幼馴染以外ありえない』は私の目論見に合致していて作品としても素晴らしい。これが悠に少しでも暗示として働き、幼馴染とはどれほどかけがえのないものなのか認識してくれればいいのだが。それに『恋愛脳』の最新刊も発売され、これで悠を私の家に誘う餌が揃った。


家に来て、なんて断られるかもしれないと思った。でも悠は少し抵抗を見せたが案外簡単に了承してくれた。あとは土曜がくるのを待つだけだと思っていた。


でも私は見てしまった。


誰だあの金髪、あんな女の情報私には入ってきていない。放課後の校門で仲(むつ)まじく声を掛け合っている。何を言っているかまでは聞こえないが、まるで恋人みたいじゃないか。この学校で悠と放課後を過ごしていい人間は私だけだ。


それに……悠のあんないたずらっ子のような笑顔、私は知らない。それは私に向けてくれるべきものなんじゃないの?


「夕陽、ミーティング始めるぞ」


うるさいなぁ、黙れ。


「おい夕陽、聞こえてるか?すぐ来なさい。みんなを待たせるな」


しつこく声を掛けてくる顧問のせいで私はミーティングに向かわざるを得なかった。


そこから2日間、悠が家に来る当日まで私の中ではドロドロとしたものが(うごめ)き続け、心ここにあらずで過ごすことになった。



「紅葉?紅葉、聞こえてる?」

「あ、ああ。何お母さん」


私はお母さんに呼ばれ、我に返る。


「今日久しぶりに悠君くるんでしょ?」

「うん」

「じゃあ紅葉が部活に行ってる間に私は買い物に行ってくるわよ。ねえ、今日悠君に夕ご飯うちで食べていってもらったらどうかしら?悠君の好きなカレー作っちゃうわよ!」


あ、それだ。悠はお母さんの料理が好きだし、お母さんからの誘いを断る姿をあまり見ない。あの女の事が気になってはいるが、悠と少しでも長く過ごしたいことに変わりはない。もしあの女に(たぶら)かされそうになっているならちゃんと引き戻さないと。


「ナイスお母さん!それでよろしく!」


よし、さっさと部活なんて終わらせて悠が来るのを待とう。


そうして5時間程経った13時過ぎ、悠が家にやってきた。


嬉しさ、焦燥、怒り。いろいろな感情が混在していた私は、気か付けばあの女について問い詰めていた。お母さんがいなかったらひどい空気になっていたかもしれないと後々考えたときには反省してしまうほどに。


そして悠の口から語られたのは、あれが外遊部に入ったD組の女子。あれが不愛想ぼっち?聞いた感じすごい陰鬱とした人間を思い浮かべていたのだが、真逆も真逆。なんだあの派手な女は。でも、あれは一緒に下校したわけじゃなく部活の一環であの後先輩も合流したのだとか。


でもなにかがしっくりこない。あれは本当にそれだけなのだろうか。悠をこのまま外遊部にいさせて大丈夫なのだろうか。


そんな考えに耽っていると、『先にシャワー浴びて来いよ』なんて悠が言うもんだから、その考えは吹っ飛んだ。あれ、これまさかワンチャンそういう感じ?


結局悠にシャワーを勧めても断られたしうまく(かわ)されたが、シャワーを浴びながら考えた通りこれ以上の追求はしないことにした。もう悠の口から出るべき言葉は出切った。なのにさらに追及してしまうと、悠からの心象もよくないだろう。


今度あの結城とかいう女と話してみる必要があるわね。


今後の方針を決めたところで、元々の予定であるラノベに私たちは話を移す。

今までは遠慮していた部分もあったが、遊ぶ程度ならある程度強引にいっても大丈夫と、高校に入ってからの事を思い返して悟った私は、見事悠と定期的に遊べる権利をもぎ取った。平日は断らられてしまったが、できれば毎週末家に来て欲しいところだ。

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