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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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夕陽紅葉の暗躍①

【夕陽紅葉視点】


物足りない。


私のせいだとわかってはいる。でも今は何かが違うのだ。

そうだ、またあの頃のように、いや元に戻るだけじゃ満足できない。これまで1年以上も我慢してきたのだ。私はそれ以上になりたい。


高校に入る頃には、私の中で欲望は膨らみ続けていた。


高校の入学式の日。

できれば悠と同じクラスになりたいが、もしそうじゃなかった場合どうしよう。本当はテニスをしたいけど同じ部活に入ることも考えるべきか。

そう考えながら、校門近くに設置された掲示板に貼ってあるクラス表を意を決して確認する。


どうやら神様すら私達を祝福しているらしい。20%を引き当てたのだ。これは二の足を踏んでいる場合ではないという啓示なのかもしれない。


それから私は悠に中学の頃よりも積極的に話し掛けた。一緒に校内を見て回ったときは、こんなキレイな芝の上で2人でお弁当を食べたいななんて思ったし、その後中学2年以来の一緒に下校もできた。悠と同じクラスになったことで部活は別々のものを選んだが、それを理由に登校にだってありつけた。傍から見ればもう私たちはカップルなんじゃないだろうか。キャッ!


でもこれじゃ結局は中学時代の焼き直しであり、さらに言えば劣化でしかない。幸いと言えるのは、孤立とは言わないが悠が高校に入って中学の時よりさらにコミュニケーションを取ろうとしなくなったことだろうか。

まあそれでも女子の中に悠に興味を持つ人間もいた。私の中では悠の顔はダントツの1番だが、贔屓目(ひいきめ)なしに見ても悠の顔はいい方だろう。だから私はあらかじめ悠は私の男だと牽制し、それでも群がろうとする悪い虫には釘を刺しておいた。


いくら私が積極的にいこうとしても、度が過ぎれば逆に嫌われてしまうかもしれない。でもこの状況ならば、ある程度は焦らなくても大丈夫じゃないかと私は安心する。

同じ1年の女子には私のことが耳に入ってもおかしくないし、同級生とすらそこまで話をしない悠が先輩などと関わることもないだろう。


唯一気がかりなことといえば外遊部とかいうわけのわからない名前のアウトドア系の部活。まあこれは追々情報を集めていくことにしよう。



ゴールデンウィーク、私はついに悠の家に遊びに行くことになった。ちょっと強引だったかな?いや、これくらいはセーフだろう。


悠の家にあがって喜んだのも束の間、私と一緒に取った写真がなくなっていることに気付いてしまい少し泣きそうになった。でもへこんでばかりはいられない。写真ならまた飾ればいい。それに今日は聞きたいこともある。


事前に調べた限り外遊部は2年生の先輩が1人いるだけ。女だが陰キャ。積極的な女子でもなければ今の悠であれば大丈夫なはず。最低限の会話くらいしかしないんじゃないだろうか。あとは新入部員がいるかだが、ここまではまだ調べることができていないのでこの際だからと直接悠に聞いてみる。


どうやらD組から1人入ったらしい。この子も女。二女一男、大丈夫かな?いや悠の反応的にただアウトドアに興味があるだけのように見えるし、まあ誰かは知ることができた。

今ここで焦っても仕方ないだろう。この結城幸という生徒については今度D組の子にでもどういう生徒か聞いてみよう。


それにしても悠がアウトドアに興味を持ってるなんて知らなかった。悠が少し慣れてきた頃に私も連れて行ってもらって、手取り足取り教えてもらおうかな。想像するだけでだめだ、顔がにやけそうになるがどうにか抑えないと。


それから悠は、高校になって1人の時間が楽しくなったのだと言う。

だからか。最近どんどんおひとり様街道を突き進んでいる事にも納得だ。悠の口からこの言葉を聞いたことで私は大きな安心を得ることができた。


これで聞きたいことも大体聞けたし、あとは悠との時間を楽しもうと私は机の上のコーラに手を伸ばす。そこでふと気が付く。漫画かな?机の上には10冊以上本が積み上げてあった。悠は出したものをそのまま放置することはあまりしない。なら先程までこれを読んでいたと考えるべきだ。

だが悠曰くこれは漫画ではなくラノベ。新しい趣味を開拓しようとしたようだ。


ラノベ……新しい趣味……そうだ!私はこの時思いついた。悠と同じ趣味を持てばいいんだ。ラノベという少しニッチなものであればいろいろと都合がいい。

悠も今日は勉強すると言っているし、とりあえずは今日はこの本を読もう。

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