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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
25/88

合流

少し経ち、心も落ち着きを取り戻してきた頃


「そろそろ行くか、橘ももう着いてるかもしれん」


先生の提案で自分の目的を思い出し、時計を確認する。

長針は待ち合わせの5分前を指していた。


「そうですね」


まだ部長という人間がどういう人間かはっきりしたわけじゃない。しかし、なんとなくだが遅刻するどころかあの人は5分前には絶対に来ている気がする。律儀(りちぎ)に待っている姿を想像すると、遅刻なんてもっての外だと心が訴えかけてくる。


そして案の定、待ち合わせ場所に着くと、改札前に部長がポツンと立っていた。


「すいません、待ちました?」

「3人一緒、私は仲間外れ?」

「違いますよ。3人とも早く到着して偶然みんなそこのカフェで居合わせたんです」

「ならいい」


あー落ち着く。この人は俺たちにとっての潤滑油だ。先程3人でカフェにいたときに思い知らされた。あの3人だけでは無理だと。


それにしても……

ジャージ(先生)、学校ジャージ(部長)、パーカー(結城)

普通の格好で来たつもりだったけど、俺だけ気合いれたみたいになってる。年頃の女の子がなんでそれ?俺だけバカみたいじゃん。


「まずはそこのスーパーで買い出し」

「そ、そうですね。行きますか」


俺は少しだけ羞恥に(もだ)えていたが、こういうのって大体自意識過剰なんだよね。今だって誰も気にした素振りもなく、さっさと買い出しに行こうとスーパーに足を向けている。


でも駅に併設されたスーパー、高級志向なのか安くはないんだよなぁ。


「どれくらい買います?」

「とりあえず3000円で買えるだけ」


予定通り部費を全額使うようだ。しかし男が1人で、他3人が女といってもさすがに厳しいだろう。まあ正直な話、部活動用に父さんからある程度お金を持たされているので、いくらかかってもいいっちゃいいのだが、3000円という指標を設けられているとどうしても意識してしまう。


「そうですね、それ見てから決めましょうか。でも先生も入れて4人だと足りないかもですね」

「あー、私の事は気にしなくていいぞ。私の分は私で買うから」

「いいんですか?」

「ああ、私も自分の食事と思って好きに買わせてもらう」


嫌な顔1つせず休日出勤して、それどころか部費で少しは(まかな)える食費まで自腹。教師としての責任感からか、はたまた自身がそういう気質なのか、どちらにしても損な役回りだ。


そして先生は一人でカゴを持ってそそくさと立ち去っていった。


「えーっと、バーベキューって何がいりますかね。食材だけじゃなくて皿、箸、コップ、木炭なんかも買わないといけないですよね。改めてそう考えると全然足りなそう」

「そこらへんは心配しなくていい。私の家にあるのを使う」


いいのだろうか、家まで貸してもらうのにそこまで頼りきりだと悪い気がするんだけど……いや、ここはお言葉に甘えよう。


「ありがとうございます。じゃあ食材だと何がいりますかね。肉に野菜に、あと海鮮類だったりバーベキューソースですかね。あ、あとは飲み物もですね」

「じゃあ適当に回って、カゴに入れていこう」


それからはこれが欲しい、これはどれくらい量がいるなどと話ながら、次々にカゴに商品を入れていく。


ガサッ


見てみると無言で結城がカゴにエビを入れていた。


「エビ、好きなの?」

「黙れ」


ニヤニヤと揶揄(からか)うつもりで聞いてみたが、すげなくあしらわれた。


「これでだいたい3000円くらいですけどどうですかね」

「私は十分。結城は?」

「私も大丈夫です」


十分な量とはいえないかもしれないが、3000円もあれば案外揃うもんだ。まあ女性陣がこれで満足なら俺も合わせよう。俺がここで足りない、なんて言えば自動的に各々に出費が発生してしまうしな。


「終わったか?」

「はい」


そのまま会計を終え、先生はどこにいるんだろうと思っていると、先に買い物を終えた先生がお店の入り口で待っていた。


「高崎、重い。これも持ってくれ」

「あの、俺もう持ってるんですけど」

「男子だろう?」


出た出た、都合のいい時だけ男子扱いするやつ。

この人は遠慮があるのかないのか……まあいいや。それくらいなら言われた通りにしよう。


「じゃあ、案内するから着いてきて」


そうして買い物を終えた俺たちは一路橘家を目指す。



「立派なおうちですねー」


俺の家より倍以上でかい。


「両親共働きで、休みまで仕事に出掛けるような仕事バカだから」


見知らぬ立派な家でバーベキュー、それだけで少しワクワクしてくる。


「庭で待ってて、私は皿なんかを持ってくる」

「1人で大丈夫ですか?」

「大丈夫」


そう言い残し家の中に走って行った。庭を見てみるとバーベキューセットやら机・椅子が既に運ばれてあった。

しかし、バーベキューセットって炭入れて火着ければそれで終了だよね?経験も下調べもしていないからわからない。


「そういえば、先生ってバーベキューの経験あるんですか?」

「ああ、食べるだけならな」

「先生、それ……」

「プハーッ!運動した後のこれは最高だな!」

「ノンアルですよね?」

「ん?ノンアルなんて飲む意味がないだろ。あれはビールであってビールじゃない」


おい、いいのか?

少し重いなとは思ってはいたが、俺が持たされたのビールかよ。もしかしてこの人が自腹切ったのって気兼ねなく酒なんかを買うためじゃないだろうな。

しかも運動とかただ駅からここに歩いてきただけだし。


軽く雑談をしているとまもなく部長が帰ってきた。


「持ってきた」

「どうも。で、どうしましょう?」

「じゃあ高崎はその炭並べて火つけて。私は買ってきた野菜やキノコなんかを切り分ける。結城も手伝って」

「はい」

「オッケーです。先生も火つけるの手伝ってください。働かざる者食うべからずですよ」

「しょうがないな」


俺達は各自バーベキューの準備に取り掛かる。

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