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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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襲来

「悠、紅葉ちゃんきてるけど」

「げ」


自分の世界に入り込んでいた俺は、部屋に上がり込んできた紗由により現実に引き戻される。

ミスった、紗由に紅葉が来たら俺はいないことにしてって言っておくつもりだったのに。


「うわすっごい嫌そう」

「いないことに」

「もう呼んできますって言っちゃった。諦めて」


さすがに紅葉と遊びに行かないのに、目の前でラノベを読むのはまずい気がする。しょうがない、紅葉がいる間は言っていた通り勉強するか。

玄関に向かうとなんだかソワソワしている紅葉が立っていた。


「あがって」

「来ちゃった!おじゃましまーす。家にあがるのすごい久しぶり!前はよく来てたんだけどね」

「ああ」


出来る事ならもう二度と来て欲しくなかったところだ。


「何飲む?」

「いつもので!」

「何?」

「もう!じゃあ何か炭酸があれば」

「コーラでいい?」

「それで!」

「オッケー、持ってくから先あがってて」

「いやどうせなら一緒に行こうよ」

「ん」


我が家は妹が炭酸大好きっ子なのでなにかしら炭酸飲料が常備してある。紅葉も喉が特に渇く日は炭酸がいいって言ってたことあったっけ。

それぞれの飲み物を用意し、自室に入ると、紅葉は懐かしそうに部屋を見て回る。


「うわ、すっごい久しぶり!全然変わってない!あれ?ここにあった写真は?」

「あー、もう高校生だしこれからの写真張り付けていこうかなって」

「そっか」


紅葉が見ているのは、俺が中学の頃まで写真を張り付けていたコルク板。

なぜお前らとの写真を俺が残しとかなければいけないのか。そこにはもちろん紅葉とのツーショット写真も貼っていたのだが、この鈍感女にも何か思うところがあったのだろうか。


「じゃあまた一緒に写真撮らないとね!」


自分との写真がないことがご不満らしい。いやいらんわ。

こうしてると紅葉のペースに巻き込まれそうだし、そろそろ俺は俺のやるべきことをするかな。


「まあ俺今から勉強するから、適当にくつろいでて」

「少しだけ話そ?」

「なんなら紗由と話してれば?まあまあ仲良かったでしょ」


紗由を生贄に安寧をこの手に。ごめん妹!


ドンッ!


え、今の壁ドン?聞こえてないよね?


「いや、悠と別れてから紗由ちゃんとはちょっと微妙になっちゃって。敬語だし少し距離を感じて……」


俺と微妙になってることには気づかないのかよ。確かに紗由ほどわかりやすく距離を開けてはいないが、それでも俺の紅葉に対する態度は他の中学の同級生に対するものと比べ、少しぎこちないというか演じきれていない部分が大きいと思う。正直気づいてもよさそうなもんだけど。


「そういえばさ、悠部活どう?」


あーもう普通に話し始めちゃった。俺が勉強しようとしてること頭から抜け落ちてんの?いや知ってて話を続けようとしているのだろう。


「まあまあかな」

「1個上の女の先輩が部長なのは知ってるけど、2人っきり?」

「いやもう1人いるよ。D組の子」

「ふ~ん。どういう子?」

「結城って子」

「なんで外遊部にしたの?」


なにこの尋問タイム。ちょっと怖いんだけど。

ってかそもそもなんで部長のこと知ってるんだよ。紅葉はそのままテニス部に入ったと思ってたけどいろいろ部活回ってみたのか?まさか、俺が外遊部に入るのを知って調べまわったりしてないよね。


「いや、ただアウトドアに興味があっただけ。忙しくもなさそうだったし」

「そっか、悠ってアウトドアに興味あったんだね。いつか一緒にキャンプなんて行ってみたいね!


行きたくない。


「まあまだ特に話すこともないよマジで。自己紹介しただけで部活自体まだ始まってないし」

「そうなんだ。じゃあまだ学校じゃ特に誰かと仲良くなったわけじゃないんだ」


わかった。こいつ喧嘩売ってる。


「そういうこと」

「悠も変わったよね~」

「1人の時間も楽しいって思えるようになっただけ」

「……」


いきなり黙るので振り向いて見てみると、頷きながらどこか納得した顔をしている。

一段落ついたとでもいうように、紅葉は机の上のコーラに手を伸ばそうとする。


「あ、ねえねえこれ何?漫画?」

「いや、ラノベ」

「へー、ラノベなんて読むようになったんだ」

「新しい趣味開拓しようと思って。結構面白かったから読んでみれば?」


朝、早速本屋に行って最新刊まで買ってきたのを机の上に置いたままだった。ちょうどいい、それでも読んで大人しくしててくれ。


「まあ悠も勉強しないとだしね。ねえこれの1巻どこ?」

「4巻からしかないよアニメの続きからだし」

「……」


迷ったようだが、紅葉は結局4巻から読み始めた。

最初の方は、このキャラ誰?とか、これどういう状況?とか説明を求められたが、ある程度把握してからはお互い黙って自分の世界に入っていった。


気が付くとそろそろ日が沈もうという頃合になっており、紅葉もキリがいいところまで読み終わり、やっとのことで御帰宅の時間となった。


「いやー思った以上におもしろかった!ラノベも捨てたもんじゃないね」

「でしょ。まあいい暇つぶしあってよかったじゃん」

「だね!じゃあまた明日続き読みにくるね!」


え。

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