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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
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前途多難

「自己紹介しよう」


ソファーに深く腰掛けた先輩が提案する。俺と金髪はパイプ椅子に座っている。


「まず私。外遊部部長、2年の橘雪奈」


終わりだろうか?


「そこの男は橘さんって呼んでますが、部長で大丈夫ですか」

「部長……部長……」


部長と呼ばれた先輩は、そう反芻している。


「部長でいい。高崎、高崎も部長と呼ぶといい」


どうやら部長呼びが気に入ったようだ。さっきの感じだとこちらを部員、なんて呼んできてもおかしくなさそうだがそんなこともなかった。そもそも部長と先輩ってそんなに違うもんかね。


「分かりました。部長の自己紹介は終わりですかね?」

「終わった」

「じゃあ次俺いきますね。俺は1年A 組の高崎悠って言います。松凪(まつなぎ)中出身で、アウトドアに興味があったのでこの部活に入りました。えーと、名前は適当に呼んでもらって大丈夫です」

「後輩」

「部長は高崎呼びでお願いします」


金髪が自分の事をなんて呼んでくるか少し楽しみだ。


「じゃあ次」

「1年の結城幸(ゆうきこう)です」


それだけ言って、態度はもう喋る気はないのだと語っている。すごい簡潔……部長は少し慣れたからいいけど、金髪までそんな感じじゃなくてよくない?いや俺も人の事言える程の自己紹介をしたわけじゃないけどさ。


「女の子だし幸ちゃんと呼ぼう」

「そこの男のように、結城でお願いします」

「しょうがない」


自己紹介は終わったというのに、まだ俺の呼び方はそこの男かよ。なんだこいつ。


「これで自己紹介も終わりですかね?これからよろしくお願いします」

「ん、よろしく」


ピンポンパンポーン

『2年の橘雪奈、まだ学校にいるなら至急職員室まで来なさい。繰り返す……』


「呼ばれてますよ、なんかしたんですか?」

「何もしてない。ちょっと行ってくる」


先輩はトテトテと教室を出て行った。


「……」

「……」


気まずい。というかこの女、部活が始まってからというもの、1度も俺に話しかけてきていない。

部長には最低限礼儀をもって対応していることからも全く話せないというわけでもない。それに電車で席を譲るくらいだ。悪い奴ではないと思うのだが。俺のことが嫌いなのか?確かに昼飯のときガン見しちゃったけどさ。それとも男が嫌いとかか?


「あーえっと、結城、これからよろしくな。3年間の付き合いになるんだ」

「貴様と慣れあうつもりはない」


え、き、貴様!?あなた様みたいなニュアンスで言ってるわけじゃないよな?

アニメや漫画でそういう二人称を使うキャラは見たことはあるが、現実でそんなやつ初めて見たぞ。


俺、これからこの部活でやっていけるんだろうか。



あれから2人の間には1度も会話はなかった。ちょっと結城に目を向けると、もう話しかけてくるなオーラが立ち込めていたからだ。


「ただいま」


救いの女神が帰ってきた。


「なんだったんですか?」

「何もしてなかったから怒られた。部室使用の申請書を出せと部活見学が始まる前に言われて、わかったって返したんだけど、そのまま放置してたのがバレた。すっかり忘れてた」


本当にこの人所々抜けている。


「問題になったとか?」

「大丈夫。渡されてた申請書も机の中に入ってたからそれを書いてそのまま提出した。じゃあ部活を続けよう」


教室を整えて、自己紹介も終わった。後は何するんだろう。


「何するんですか?」

「ん~まだやらなければいけないことはいろいろある。今日は歓迎バーベキュー、その日取りと場所を決める」

「えっと、今更なんですけど、まだ入部期間が終わるまで1週間ありますけどもう決めちゃって大丈夫ですか?もしかしたら誰か来るかもしれませんよ」

「忘れてた。それもそう。じゃあ今日できることは……ない」


もしまだ入部希望者がいれば、また自己紹介から始めることになるな。


「今日はこれで解散。部員が揃うまで動けないから次は」


部長は(おもむろ)にケータイを取り出し操作を始める。


「今月が終わればもうゴールデンウィーク。5日までが休みだから本当はそこでバーベキューしたいところだけど現実的じゃない。だからゴールデンウィーク明けの6日にまた部室に集合」

「「わかりました」」


そうして今日は解散となった。

明日も19時の1話投稿です

毎話書くのもあれなので、12月中は平日が19時の1話、土日が19時と20時の2話投稿と思ってください。その法則から外れる場合のみ書かせていただきます。

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