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虚飾性男子は恋すら喉を通らない  作者: 久栖ガマ
1章 それぞれの出発点
19/88

まず

「こんにちはー、先輩今日も早いですね」


授業が終わりすぐに部室に向かったのだが、入部届をもらいに行った時と同様に先輩が先に来ていた。


「やあ後輩」

「……後輩って呼び方変じゃないですか?」

「あなただって私の事を先輩と呼ぶ」


先輩っていうのは普通の呼称だと思うんだけど。


「そうですけどなんかしっくりきません。それに、先輩からしたらこの部に後輩2人いるじゃないですか。だから(まぎ)らわしいですし」

「高崎後輩」

「高崎でいいですよ。呼び捨てがあれなら高崎君とか」

「わかった。じゃあ高崎も私の事を橘さんと呼ぶといい」


橘先輩じゃだめなんだろうか。本心としては先輩と呼ぶのが1番楽なのだけど。


「わかりました橘さん。もう一人はまだ来てないみたいですね」

「うん、まだ授業が終わったばかり」

「まあそのうち来ますかね。今日は何するんですか」

「うーん……」


ガラガラガラ


先輩がちょっと考える素振りを見せたところで教室のドアが開く。目を向けてみるとそこには見知った生徒が入ってきていた。俺は恐る恐る挨拶してみる。


「どうも……」

「……」


何も返ってこなかった。その生徒は金色に近い髪をなびかせ先輩の方に向かいながらこちらを睨んできている。


「揃った」

「……」

「……」


この部活大丈夫だろうか……暗雲が立ち込めているように感じられる。


「えっと、どうしましょう」

「まずはこの部屋の居心地をよくする。今は椅子2つしかない」

「ってことは、本校舎から運んでくることになるんですかね?結構大変ですね」

「いや、部室棟にある備品室や使われていない部室をまずは回ってみる」



そうして俺たち3人は備品室と空き教室を一通り見て確認した。


「備品室から長机と、パイプ椅子を1つ持っていく。あと、今年度でなくなったロボ研にあったソファー、あれをもらっていこう」

「勝手に持って行って大丈夫ですか?」

「たぶん」


この人の言葉すごく頼りない。それでも本人に分かるように疑ってかかったり、ましてや大丈夫か先生に確認しに行くなんてことはめんどくさくてしないが。

まずは、準備室に椅子と机を取りに向かう。


「じゃあ椅子は私が……」

「いや、椅子は私が持ちます」


先輩が椅子を持とうとしたところで、金髪が初めて声を発した。なかなかに凛々しい声だ。そして金髪はこちらを向く。その目が、言外に何を考えているのかが分かる。


「じゃあ俺はこの机持っていきますね」

「私は?」

「橘さんは先導して、ドアの開け閉めをお願いします」

「わかった」


咄嗟にそう言ったが納得してくれたようだ。

そうして椅子と机は何事もなく運び終えた後、俺たちは元ロボ研へ向かった。


「ん~~~!」


ソファーの片側がちょっとだけ持ち上がってはいるが……


「橘さん、それだと運ぶのに危ないですし俺たち2人で持ちますよ」

「私は?」

「先導お願いします」

「わかった」

「えっと、そっち持ってもらっていい?」

「……」


まだ名前も知らぬ金髪に話しかけてみると、一応は持つ意思があるようだ。

初めての共同作業だね!

なんて言うことを想像してみたが、とんでもなかったのでやめておく。


ソファーを持ち上げてみたが結構重い。男の俺なら問題はないが、金髪は大丈夫だろうか。あ、大丈夫そうだ。結構力持ち。


そうして俺たちは自分たちの部室へと向かった。

明日は19時の1話投稿です

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