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馬男の秘密

第一部


第6回



ちょっとしたカルチャーショックだった。見た目が馬だし体格もいい、てっきり俺を背負って飛脚のように走るとばかり想像していたが。


(こいつ、飛ぶのか)


ポツリと漏らす独り言。まさか馬男が空を飛ぶことが出来るとは。鳥のように山を越える事も出来る、馬のように速い。これなら一日で行けるのではないのか。


(はい休憩)


はや、まだ一時間も経ってない。まあいいさ、通勤途中じゃあるまいし時間はたっぷりある。それより気になっていた事があるので休憩がてらいろいろ聞いてみたい。


(いったいどうなっているんだ、なんで空を飛ぶことが出来るんだ。俺にも教えてくれよ)


馬男は大きく息を吸い込んだ。空を見ている、相変わらず鼻息荒い。ちょっと間を置いてから意味深長げにしゃべり始めた。


(あんた、名前は)


(サトシです。あなたは)


まさか本人を目の前にして馬男とは言えないだろう。言えばきっと置いてかれる。


(お前、なめてんのか、馬に人の名前なんてあるわけないだろ)


(ひぇ、なんだか雰囲気変わったね)


町で秀吉と取り引きしていた時とは大違いだ。まさか別の人格がはいりこんだか。


(おうよ、今はフライトモードだからな、気がたっているんだ気にするな)


(はい?)


俺は頭がパニックになりそうだったので、それ以上の事は聞かなかった。


それより自分の事を馬だって言わなかったか。馬に人の名前なんてあるわけがないと。


(あなたは馬ですか、車ですか)


しまった。思った事はすぐ口に出す。そういえば生前は空気読めない奴って思われてたな。まったく俺は女に縁はなく、むしろ女に嫌われてたかな。もっとも嫌われてたことすら分かってなかったけどね。


(お前はなんだか変だと思ってたんだが、本当に何も知らないのか。確かに奇妙な服装だが、まさか異国の人間じゃあるまいし)


(俺、田舎者で何も知らないッスよ)


お前の方がよっぽど変だと言いたかったが鼻息が荒いし俺は適当にあしらった。その馬男は気難しい顔付きをしている。


(いいか、よく聞けよ。この国には2種類の人間がいる。一つは普通の人間だ。もう一つの人間は)


死んだ俺でもこんなに心臓が脈打つのか。怪談話を聞くように全神経を耳に集中させていた。


(あ、分かった。悪魔王に姿を変えられた)


(言うなあぁー、それは俺のセリフだ)


なんと言う素早いツッコミだ。

ツッコミ担当はこの馬男で決まりだな。


(でもまてよ、馬に人の名前なんてあるわけないって言ってたけどまさか)


(だからさっきから言ってるじゃねぇか)


(げえぇ、ホンモノの馬が人間になっちまったんだ、普通逆だろ)


馬男は目を閉じてうなずいている。サトシの話しを納得するかのように聞いていた。


(だいたいなんで馬が人間のような姿にならなきゃいけないんだ)


(さあな、悪魔王だけに悪趣味じゃないのか、その影響で俺たちには変な能力が身に付いたんだが、これは普通の人間にはない力だ)


(そうか、自然に出来るようになった訳じゃないんだね)


(これは噂だが、一部の人間、あの織田信長も特殊能力があるとかないとか)


え?俺、実はさっき会ったんですけど、特殊な能力がある風には見えなかったなあ。


と言いたがったが、こちらが言う前に先に切り出してきた。まあちょうどよかった。あの信長に会ったなんて言ったらまた変な目で見られるだろう。


(それから個人差もあってその能力は違うぞ)


いろいろと勉強になった。この世界の事は分からないけど、興味が湧いてきた。俺も超能力者になりたい。魔法が使いたい、なんだか面白そうだ。


軽いノリで言ってみたものの普通の人間には無理なんだろ。残念がっても仕方のない事もあるさ。と言いつつ、心の中では頑張ればなんとかなるんじゃねぇのかといった別の考えもある楽観主義者でもあった。


休憩しつつ、二人の旅は伊賀の国までもう少し続くのだった。

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