いい日、旅立ち
第一部
第4回
(あなたが秀吉さんですか)
どんな猿顔かと期待してたのに、そこそこイケメンですね。
(ほぉ、お主が噂のサトシ殿か。モテない顔をしておる、おまけに貧困の相が出ておる。だが悪魔さえ退治すれば褒美は思いのままぞ)
この男は羽柴秀吉、信長の家臣団の一人だ。まあイケメンにそんな事を言われるのは仕方ない、確かにモテないのは事実だ。まったく誰だよ秀吉は猿顔って言ったやつは。
(あの秀吉さん、悪魔討伐について聞かせてくれませんか。だいたい悪魔なんて本当ですか)
(なに、お前は悪魔を知らないのか。今まで侍衆や力自慢、忍者と数えきれない猛者たちが旅立って行ったが、みんな生きて帰って来た者たちばかりでな)
(へ?みんな生きて帰って来たって、すごい強いじゃないですか)
(いやいや、戦わず逃げ帰ったと言う事だ。戦いはまるで話にならんかった。並の男たちがいくら束になってかかっても全く歯がたたなかったと聞く)
(え、悪魔ってそんなに強いの)
俺の淡い期待は一瞬にして崩れ落ちた。どうやら簡単にはいかない。
(忍者たちが集めた情報によると最近、伊賀の国の姫君が悪魔たちにとらわれたと聞くが)
(なんだって悪魔め、許せん。力ずくで結婚するつもりか。よし分かった、麗しの姫君の為だ今行くぜ待ってろよ)
下心があるのは言うまでもない。
(では秀吉さん、馬をお借りしたいです)
(は?馬とはなんだ。食べ物の事か)
何でやねん。この話の流れで馬刺しですか。
(馬ですよ馬。まさかこの時代に車なんてあるわけないし)
(ああ車か、そうであろうな。まさか歩いて行く訳にもいくまい)
何を言っているんだこのホラふき猿め、この戦国時代に車なんてあるわけなかろう。
(ついてくるのだ)
秀吉に言われるがまま、案内されて着いた先は昔風の馬小屋だった。
(なんだ馬いるじゃないかよ)
そして俺はそこで初めて見る光景にショックを隠せなかった。