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第9話 アリシアの本音

「それで、知者さん。これからどうするの。

 モンスターを召喚してステータス強化?」


ゴブリンやオークなどの雑魚狩りでは、やはり物足りない。

そうなれば、大物狩りも良いかもしれない。


『いえ、急なステータス増加はマスターの身体にも負担をかけます。

 なので、今回はダンジョンに新しい階層を創りましょう。』


なるほど、第3階層や第4階層を創るのか。

第1階層や第2階層は襲撃者を撃退する能力がほとんどない。

だから、第3階層はかなり凶悪なものとしたい。

アンデットでは聖魔法なんかを持ち出されたり、聖水なんかを用意されると、かなりこちらがふりだ。

ならばここはドラゴンなんかが適職だろう。


「知者さん、第3階層はドラゴンの楽園を創ろうと思うんだけど、おすすめの組み合わせってある?」


『第3階層は最下層に近いので、やはり強力なモンスターを配置しなければなりません。

 そのため、エンシェントドラゴンを1000万匹、ハイエンシェントドラゴンを100万匹、エンシェントドラゴンロードを10万匹、ハイエンシェントドラゴンロードを1万匹、最後にボス部屋に龍神を100体放り込めばよろしいかと』


なるほど、どのくらい強いかわからないが、

このぐらいやっておけば侵入者も最下層にはやってこないだろう。


『強さでいうとエンシェントドラゴン、ハイエンシェントドラゴン、エンシェントドラゴンロード、ハイエンシェントドラゴンロード、龍神の順に強くなります。』


なるほど、なるほど。

ボス部屋にボスモンスターが一匹というルールなんてない。

そんなことを律義に守っていると最悪、自分が死んでしまう。

それは、愚か者のやることだ。

私は愚か者ではない。

だから一切、手加減をしないで叩き潰す。


それにしても、大量のドラゴンを放り込むためにどれだけの広さが必要になることか。


『それでしたら、フランスの国土そのものを創ってしまえばよろしいのでは?』


なるほど、あの世界にあった国の国土そのものを再現してしまえば一つ一つ手間暇かけて河川や湖を設置しなくて済むということか。

それならば、簡単にできるだろう。


「“ダンジョン創造“フランスを模した国土」


“ダンジョン創造“によりフランス国土が再現されると、震度6程度の揺れが第2階層にも伝わってくる。

広ければ広いほど揺れが強くなるということだろう。

この揺れがダンジョンの上の地上にまで伝わらなければよいが……

伝わってしまえば、このダンジョンの位置がばれることに繋がりかねない。


『それならば、問題ありません。この揺れはダンジョン内限定のものです』


それならば、よかった

だが、なぜ私はこんなことでびくびくしなければならないのだろうか。

なぜだか自分自身にイライラしてくる。


まぁ、ここは落ち着こう


「“ダンジョン魔法“転移、第3階層」


“ダンジョン魔法“転移を使うと一瞬で景色が変わり、美しい丘陵地帯になる。

なるほど、たしかに、これだけの広さがあればドラゴンを詰め込んでも問題ないだろう。

それにこれだけの広さのエリアに、ドラゴンが跳梁跋扈した状態で下層への階段を見つけるのは困難だ。

これならば、目障りなハエどもに私の庭を荒らされずに済むというものだ。


『マスター、ドラゴンを召喚する前に、別のモンスターを召喚してほしいのです』


ん?

どういうことだ?


『はい、物理攻撃無効を取得するためにゴーストと、

 不死を取得するために不死者を、

 原初の炎を取得するためにケツァルコアトルを、

 即死攻撃と即死魔法とを取得するために死神を、

 再生能力と魔法攻撃無効を取得するためにフェニックスを召喚してほしいのです』


それならば、いいだろう。

私の自己強化にさらにつながる。


「ダンジョン魔法“ゴースト召喚、ランダム×10000」


ゴーストを召喚すると、なぜだか一瞬で1万体が消えてしまった。


『ゴースト×10000を倒しました。

 物理攻撃無効を獲得しました。

 鬼火を獲得しました。

 手に入れたゴーストのステータスを生贄とし、

 鬼火を進化させます。

 成功しました鬼火は獄炎魔法に進化しました。』


『先ほどの質問ですが、ゴーストは太陽に弱いので、このエリアで召喚すると死にます。』


なるほど、効率がいいな

まぁ、やることがあるからステータスチェックは後回しでサクサクいかないとな。


「ダンジョン魔法“不死者召喚×10000」


不死者を召喚すると青白い肌をしたただの人種が現れる。

しかし人種との違いは体から瘴気を発生させているところだ。


『マスター、瘴気は耐性がないものが吸えば重度の病にかかります。

 先ほど手に入れた獄炎魔法で一気に焼き払ってください』


「“獄炎魔法“ゲヘナ」


アリシアは右腕に顕現した地獄の炎を手を振ることで、全方位に向けて攻撃をする。

すると、瘴気もろとも不死者も消えていく。

この不死者とは、神聖魔法か獄炎魔法か太陽魔法でなければ消滅させることができないのだ。

『不死者×10000を倒しました。

 不死を取得しました。

 ダンジョンコアの不老特性とリンクし不老不死を取得しました。

 瘴気生成、瘴気操作、瘴気無効に支配者を統合し、

瘴気の支配者を獲得しました。

不死者から得た余分なスキルを消費し、

瘴気の支配者を瘴気の王に進化させました。

以上です。」


さっきまで綺麗で自然豊かな丘陵地は焦土とかしてしまった。

まぁ、私自身が住むのではないからどうでもいいかな。


『マスター次です。次のケツァルコアトルはダンジョン魔法で縛れない存在なので、必然的に戦闘となります。ですので気を引き締めてください。』


させ、相手は原初の炎を扱うという。

ならば、何をすれば勝てるだろうか。

“強欲“を使ってステータスを奪いながら戦うのが賢明だろうか。

だが“強欲”の能力は強力すぎる反面、制御がしづらい。

だが、やるしかないだろう。


「ダンジョン魔法“ケツァルコアトル×1」


ケツァルコアトルを召喚すると羽毛の生えた全長1㎞ほどの大蛇が現れる。

全身に原初の炎を纏い、その目も特殊な魔眼である。


「貴様か我を呼び出したのは、矮小な存在ごときが身の程をわきまえよ。」


これは、驚いた。

人語をかいする大蛇とは。

まぁ、まとがでかくて助かるが。


「消えよ人間!」


ケツァルコアトルはその巨体を生かして、体を鞭のようにしならせ、私に向けて叩きつける。

だが、そんな攻撃はお見通しだ。


「“ダンジョン魔法“転移」


“ダンジョン魔法“転移を使いケツァルコアトルの上空2㎞地点に移動する。


これならば、どうかな。


「“海魔法“大洪水」


『マスター、それはまずいです!』


“海魔法“大洪水をケツァルコアトルに叩きつけると同時に爆発が起きる。

水蒸気爆発である。

アリシアは、“強欲“を使い自らに押し寄せる爆発のエネルギーを全て奪い去る。


「知者さん今、敵のステータス何割ぐらい奪えた!!?」


『現状3割程度です。やはり距離を取りながら戦うと“強奪”の威力は下がるようです。

 また、あのケツァルコアトルの眼は無効の魔眼です。そのため、“強奪”の力を減少させているようです。』


「消えよ人間、“原初の炎“断罪炎!!!!」


原初の炎は思っていたよりも、かなりの威力だった。

そう威力だけだったのだ。


「“色欲”炎よ彼の者を焼け」


“色欲”を使い断罪炎をかどわかし、ケツァルコアトルに攻撃を当てる。

これが“色欲”の能力である。すべての者を色香でかどわかし、自らの思いのままにする。

強力無比な異能である。


ケツァルコアトルは断罪炎で魔眼を焼かれ、“強欲”を無効できなくなりあっけなく死ぬ。


無効化の魔眼がなければ相手にもならなかったな。

所詮は狩られる側の存在である。

なのに、なぜこんなにも苦しいのだろうか

モンスターを痛めつければ痛めつけるほど、この枯れた心が愉悦で満たされ潤っていくと思っていたのに。

なのに全然楽しくない。

あれは血で酔っていただけなんだろうか。

私は力を得て、こんなにも強い敵と戦って勝ったのに、ちっとも楽しくない。

力を得て無価値な自分を捨てられたと思ったのに結局、無価値なままだ。

人の価値って何だろう。

本当に私の価値ってないのだろうか。

寂しい。

苦しい。

心の中にぽっかりと穴が開いていて苦しい。

だれかに、助けてほしい。

ねぇ……だれか助けて…

苦しくて涙があふれてくる。

強い自分を装っていたけど、結局そんなものに価値なんてない。

本当の私ってなんだろう。

親に捨てられ、親戚をたらい回しにされて、

父方の祖父に殴られ続け、

父方の叔父にレイプされて、

母方の叔母に援助交際を強要されて、

母方の叔母からは生まれてこなければって言われて、

中学を卒業してからは必死に働いたお金も実の親に搾り取られて、

無価値で退屈な日常と思っていたけど、

本当は自分が不幸だって認めたくなかっただけなのかな。

苦しい。

胸が締め付けられて、うまく息ができなくなる。

誰か助けて。

私を愛してよ……


『やっと本音を漏らしましたねバカマスター。

 あなたは、たしかに不幸でした。

 でも、これからは幸せになってもいいんですよ。

 強い自分を演じなくていい。

 心を壊して苦しまなくっていいんですよ。

 ただ幸せを求めて、愛を求めて生きていいんですよ』


「それで……いいの…でも、私…どうしたらいいか…わからない」


涙を流しうつむくアリシア。


『どうしたらいいですか。

 それでは一つアドバイスです。

 愛や友情、信頼などは自分から相手に与えた分、相手も気持ちに答えて返してくれるものです。

ただし、相手が愛や友情、信頼を100%返してくれると思ったら大間違いです。

どんな人間だって好き嫌いや相性があります。

なので、がんばって誰かに友情や愛情、信頼を与えられるように頑張りましょう。

そうすれば、いずれあなたを友人と呼ぶ人や、心の底から信頼してくれる人、

あなたの良いところ、悪いところ全てを愛してくれる人に出会えるはずです。

おっと、先延ばしにしていたステータス更新が限界のようですね。

それでは、ステータス更新に移りましょうか』


「えっ、ちょっと待って…」


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