半戦国 半現代 半白髪① 絶望的窮地
「こんな対決、勝てっこない」
「あまりに悲劇的な状況すぎる」
「どう考えてもどうにもならん」
室内に立て続けに泣き言が響いた。
圧倒的な強大さを前に、絶望して逃げ出したくなる。零細企業出身の自分とは大きく異なって、他の対戦者たちが、いずれも年商数億円を叩き出す有名企業の元幹部とあっては。そして彼らがすでに有能とされる人材を押さえ、高まった期待でさらに資金を集めているとあっては。
その一方で、経歴と周囲の圧力によりこちらが提示されたのが、よく知りもしない人物役。そのため人手も資金も集まらず、敗北は必至である。さらにもし負けでもすれば多大な負債を負うことになるという。
だからといって対決を降りるわけにもいかない。その前からもすでに多額の負債を抱えているからだ。対決に参加し、勝利して賞金を得る以外、他に手立ては思いつかない。
進むも地獄。退くも地獄。
もはや奇跡でも起こるのを期待するしかない・・・と、彼は思っているのだろう。
「黙ってないで、この状況をなんとかしろよ!」
やはり来た。密かに虚栄心は強い一方で、自覚も責任感も覚悟もなく、都合の悪いことは下に丸投げする、と事前に聞いていた通りだ。一瞬、皮肉を盛り込んだ暴言の一つでも浴びせてやりたくなった。
だが、より大きな目的のためにここはなだめてやるしかない。そう思い、放り出しておいた刀に伸びかけた手を戻して言う。
「ご心配なく。現状を打開する手立てはあります。いずれそう遠くない時期に必ずや多くの称賛を集め、そしてこの地を治める城主となれるでしょう」
うろたえてばかりいる半武将姿の男に、半白髪の若者・鈴木春一郎が諭すように言った。