4-2 襲来
アルバムの写真に写っていたのは、クレオの知るギヨームではなかった。―― ここにいたってはじめて、彼らは刑事アルフレッドに嵌められていたのだと気がついた。
ジュリアンは悔やんだ。というのも、町の支配はともかくとして、外部との接触や交渉などに関してはいまだに彼が指揮権を握り、そのことに関する知識や情報も彼が一括して管理していた。主はそのことに不平を言うこともなく、むしろ彼女はこの手の仕事を進んで彼に一任することにしていた ―― クレオはもともとよそ者であった自分にその手の見識がないことを理解していたのだ ――。
「前にも言ったかわからないけど……、アルフレッドにはシャルルという仲間がいて、彼が入れ知恵をしている可能性もある。シャルルの管轄はほんとうは大陸のほうだから、僕らもそこまで詳しくはないんだけど……、こっちの情報によると、おとり捜査だの変装だのと随分器用なことをやっている刑事みたいだよ」
「じゃ、私の知っているギヨームは……」
「シャルルみずから、友人のために一肌脱いだのかもしれないね」
苦りきった顔をして、ジュリアンは言った。
***
本物のギヨームはクレオとは別の牢へ入れられていたが、一年前、クレオがソングロンの新たな頭領になったことを受けて、シャルルに入れ知恵された刑事アルフレッドによって解放された ―― 彼自身の認識では、みずからの運勢と力による脱獄であったが ――。
自由の身となったギヨームは、大陸やブロンシ島内部に忍ばせていた仲間を集め、一年をかけてかつての砦と地位奪還の計画を立てた。
ソングロンへも使者を遣わし、一人娘アンリエットが牢から解放されたと知るや、彼女に協力を求めて町の情報を手に入れた。また、彼は娘を使ってソングロン内部にも着々と仲間を増やしていたが、刑事アルフレッドの暗躍もあってその事情はクレオのもとには届かなかった。ジュリアンには何度か不穏な報せがもたらされたこともあったが、アルフレッドの手先がすぐに誤報だと告げ、彼はそれを信じこんだ ―― もとより素性のわからない者の訴えなどで主を惑わせるわけにはいかなかった ――。
ふたりが刑事の策略に気がついたころ、時はすでに遅かった。間もなくギヨームはソングロンへ上陸し、仲間たちとともに海辺に近い砦をひとつ占拠してしまった。




