4-1 過去
一年の歳月が流れた。
このあいだに、刑事アルフレッドの使者が彼の文書を携えてクレオの前へ現れ、アルフレッドがクレオによるソングロン支配を認めたと証明していた。
クレオとジュリアンのふたりは、その関係にぎこちなさを残しながらも、ともに暮らすうちにそれなりの仲へと戻っていった。もとよりクレオにはジュリアンが愛おしかった。彼は彼のほうで、言いようもない好意をクレオに感じていた。彼らは過去の出来事や政治的な話をほとんどしなくなったが、その代わり、しだいに他愛のないことを語りあう仲になっていった。
あるとき、クレオが何気なくジュリアンの部屋を訪ねると彼は部屋にいなかった。―― このとき彼は、ほんの十数分部屋を空けていただけだったが、彼のいないあいだ部屋で待つことにしたクレオは、机の下のアルバムを手にとってめくりはじめた。
「クレオ姉さん」
ジュリアンは部屋へ戻ると、困ったような顔をして言った。「なに勝手に見てるのさ」
クレオは彼を睨みつけた ―― 睨みつけたつもりはなかったが、彼女は自然とそういう眼つきをしていた ――。
「この人はだれ?」
「ああ、えっと……」
ジュリアンは説明した。―― 彼とともに写っている人物はギヨームの娘、アンリエットで、彼は昔この女と恋人の関係だった。また、彼らは子供時代をともに過ごした幼馴染でもあった。ところが、ジャン=ポールとギヨームの一派が不仲になったことで、ふたりのあいだは引き裂かれた。彼の話によると、はじめにしかけたのはギヨームのほうだったらしい 。ともかく彼らの関係は危うくなり、危機感を抱いたジュリアンはアンリエットを通じてギヨームと話をつけようとした。ギヨームは野心家ではあったが、娘の恋人ジュリアンに対しては好意をもって接した。――
「僕らのボスは温和な人です。あなたさえ彼と仲よくすると言ってくれれば、ふたつの集団は争わずに済みます」
ジュリアンの若さと歯切れのよさを愛していたギヨームは、彼の説得を退けつつ仲間に引き入れようとしたが、ジュリアンは断固として、主を裏切ることはしなかった。
「まあ、考えてみよう」
ギヨームは苦笑して、ジュリアンを帰した。―― それから間もなく、ギヨームによる暗殺計画を刑事アルフレッドから聞いたジャン=ポールは、重鎮アントワーヌの勧めもあり、先手を打ってギヨームを襲い、捕虜とした。――
その後の話は、ジャン=ポール自身がみずからクレオに語った内容と同じだった。
ジュリアンが一通り話し終えて、クレオがアルバムのページををめくった後、ふたりにとって衝撃的な事実が判明した。
「こいつは?」
「こいつがアンリエットの父親、ギヨームさ」
「え……」




