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2-4 ピロティの闘い


「じゃあ、行こうか」

「どこへ」

「残党狩り」


 ジュリアンは軽やかに口笛を吹きながら、昨日ジャン=ポールが仲間を集めた広場(ピロティ)へと下りていった。

 方々から五人の重鎮たちが集まり、そのうちのひとりが言った。

「おいガキ、朝早くからなんの用だ」

「あれ、クロードは?」

 ジュリアンが問う。

「あ? まだ寝てんだろ」

「運のいいやつだ」


 ジュリアンはクレオの腕をつかむと、高く掲げてみなに呼びかけた。

「われらがボス、ジャン=ポールとその右腕、アントワーヌは、このクレオ姉さんによって抹殺されてしまった。かくなるうえは、この人こそが新たなボスである。依存のないものは両手もろてを掲げよ。依存のある者はその意をしめせ」


 集まった重鎮のうち、手を挙げる者はいなかった。代わりに衣服の襟を正して、クレオのほうをにらみつけた。


「……だってさ。頑張って」

 クレオの肩を叩くと、ジュリアンは後ろへ下がっていった。―― ここに、重鎮のひとりが声を挙げる。

「このアマを潰せっ」


 五人の男たちは怒号をあげて、クレオに向かって駆けだした。ほとんど同時にクレオも動き、上階へつながる階段を駆けのぼる。

「逃がすかっ」

 息の荒い男たちは階段へと群がるが、幅の狭い階段はひとりずつのぼるより他になく、我先にと押し合っている ―― そのようすを、別のルートから階上へと先回りしていた青年がのぞいて嘲笑う ――。


 男たちは一列になって階段を駆けのぼるが、踊り場で待ち構えたクレオの蹴りの一撃によって先頭のひとりがると、つづく四人がドミノ倒しに崩れていった。

「このアマっ」

 ひとりが立ちあがってふたたびクレオに向かうが、素早い拳に顔面を強打され、あっけなく膝を折る。クレオはその身をひるがえし、手すりを越えてピロティへと舞い降りた。

 男たちは体勢を立て直し、彼女を追う。大柄なギャングの男たちが、若いむすめ相手に必死の形相ぎょうそうで飛びついていくようすを眺め、階上のジュリアンはくっくっと笑う。しかし、その脇をひとりの女が駆けすぎた。

「トマさん、これっ」

 女は叫ぶと、階段の手すりから身を乗りだして一挺の短銃を放り投げた。

「やっば」

 ジュリアンは慌ててヨーヨーを手に取り、銃へと手を伸ばすトマの肩を打った。そしてすぐさま飛び降りると、転がった銃を手に取り彼の頭蓋ずがいを撃ち抜く。―― その懐から、一枚のカード ―― 不幸を表すスペードの9 ―― が地面へと落ちた。


「最後まで、君らしいや」



 あたりが静まりかえる。

 階段の上方では、寝ぼけまなこのクロードが、気を失った女を抱えて口をあいていた。




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