犬猫、うさぎが働く日(臨時混成訓練中隊前史その1)
そもそも、犬猫、うさぎさんたちが人間社会で働けるようになった話を少しずつ
この臨時混成訓練中隊が陸上自衛隊にできるまでは、語るも涙の七転八倒があったのは、多分、想像つくだろう。
まず、動物たちとコミュニケーションできる「多用途翻訳機」ができて、さらに動物たちが自分たちの権利を主張しはじめたころから、人間たちの間でまずは議論が始まった。
「うちの子が喋った」と手放しに喜んだ肯定的な意見、逆に「犬猫ごときがやかましい」と真っ向から否定する意見等、さまざまな場で議論が沸騰した。
ところが、たまたま大阪府北部で小規模な地震が発生した際に、犬猫とコミュニケーションできる翻訳機を持ったレスキュー隊は、その辺りにいる犬猫たちから、「あの家の影に人がいる匂いがした」やら真っ暗な災害現場で初動の段階で「あそこの瓦礫のとこ、今少し動いた」等犬猫たちの優れた感覚から得た情報で探ったら、従来以上効率的に災者救助に役立った事例が発生したのである。
これによりまずは、レスキュー隊において犬猫隊の地位は確立されたのである。
次に犬猫、そして意外にもうさぎがクローズアップされたのは、過去何年も人手不足の介護業界であった。
まずは、犬猫たちが、自分たちの同居人(主人とも言うし、飼い主とも言われる散歩係や給食係のこと)の健康を意外と把握していることが判明したことから始まる。
飼われている犬猫やうさぎたちとコミュニケーションすることで「うちのご主人最近妙な匂いの便をしているみたい。お腹おかしくない?」とか「トイレの尿臭が変」とかの情報が得られてくるのである。
また「最近、めっきり生活の意欲がないから散歩になかなかいかない」など精神面まで立ち入った情報まで上げてくる犬猫やうさぎたちがいるのも判明した。
これを生かして、飼われているはずの犬猫やうさぎたちから「飼い主」を見守る仕組みがあちらこちらで作られるようになったのである。
これは認知症高齢者がフラりと行方不明になった時にも有効で普段、散歩に行くルートなどを犬や場合によっては、うさぎ(俗に言う、「うさんぽ」している場合)からルーチンとなっている道順を「聞く」ことで捜査をスムーズにできるようになったのである。
また、野良猫や野良犬からの情報も参考になるため、捜査の効率が一気に倍増したのも認められた。
さらに画期的なのは、犬猫やうさぎが翻訳機を通じ、人間との間に信頼関係を確立した場合には、「訓練」すら受け入れてくれるようになったのである。
先にも述べたように、ロボット操作が犬猫、うさぎに可能になるようにプログラムできたことが最も重要な技術的ブレイクスルーになった。
つまり人間の等身大のロボットの操作は人間とコミュニケーションできる犬猫、うさぎ、それも場合によっては今まで共に暮らしてきた「ペット」ができるようになったのである。
これまで「たま」「ミケ」「ポチ」「うーさん」などと可愛がってきた「ペット」から「助けてもらえる」ってことが実現するのである。
これは介護を受ける側にとっても心理的障壁を下げる効果を生み出し、スムーズに介護をはじめられる結果が多く見られるようになったのである。
また万が一、誤った動作をロボットに命じてしまった場合などは、ロボット側のAIが危険を予知して要介護者の危険防止を図る機能をもうけて安全安心な介護を担保するようになったのである。
かくして衣食住の簡単なケアから始まった犬猫、うさぎプラス人間大のロボットによる介護は少しずつ実績を積み、より広範囲な業種にも使われるようになって行くのであった。
そして、犬猫と少し異なるうさぎらしいケア、「癒し」についても述べる必要があろう。
当初、犬猫からスタートした介護部門であったが、人間の側にある「犬派」「猫派」等の嗜好に対してもうひとつの選択肢として追加されたのが「うさぎ」であったのだ。
大型犬みたいな厳つさはなく、、猫が時折見せる冷たさもなく、「モコモコ」したり「ふわふわ」したイメージが犬猫にはピンとこない人間にもアピールするのが判明したからである。
無口で臆病なうさぎとのコミュニケーションの確立は犬猫以上の苦労があったのは、また後日述べたいと思うが、この新たな「癒し」はストレスにまみれた人間たちをズブズブの泥沼から救い出す「救世主」となっていくのだった。
という訳で、介護業界に本格的に採用され始めました。
この後で、彼らが防衛省でも働くようになったいきさつをご紹介します