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誤字転生者黙示録  作者: 冒涜的な番人
少年期
3/5

旅の準備①

エイジスさんツンデレ説

待っている間、馬車の天幕を拝借して、全身を覆う軽めのローブを作った。

元々はジーパンと同じ素材だ。耐久性も申し分ない。

馬車の持ち主に許可もいたただしね。

それにしても、ナイフの切れ味ヤベェ。


少し時間が経ち変化が起きた。

エイジスはまだ戻ってこない。

が、少女が目覚めた。

しかし、少女の発言が問題だった。


「お兄様、私を助けてくれのですね!!」


少女は潤んだ目で、俺に抱きついてきた。

お兄様?俺に妹なんて、覚えがないが。


「あれ、君はその子と知り合いだったのかな?」


エイジスが戻ってきた。

リュックのように、必要な荷物を背負っている。


「いえ、私に妹なんて、いるはず無いですよ。」


「そんなことありません!お兄様は、私のお兄様です!!」


ガシッと、頭を俺の胸に埋めて、ホールドしてしまっている。

隣のエイジスが、何か思い出したのか、口元を押さえて少し笑っている。

俺は小声で尋ねる。


『おい、どうなってるんだ?』


『いや、商品にはよくある話だよ。あまりに過酷な環境は、人の精神を歪めるらしい。その子の場合は、私が入荷したときにはそうなっていたね。本人が言うには、そこには自分を慰めたり救ってくれる兄がいるらしいぞ?なあ?お兄様?』


最後はわざとらしく、お兄様とかいい始めたぞこいつ。

この少女は恐らく精神病の一つだろう。

さて、どうしたもか。


-------------------

結局、俺は少女の『お兄様』になることになった。

養子で妹ができたと考えればいいんだ。

そういう考え方にしておこう。


俺たち三人は、風の流れを頼りに洞窟の出口を探す。

道中、単体のはぐれゴブリンを計3体発見したが、奇襲により事なきをえた。

雷石の抽出はしなかった。

ポーションだけでも高級品と騒がれたのだ、魔法だって何言われるかわからない。

そして、無事に出入り口に到着した。

何より、少女……もとい妹が左腕をホールドしている。

離そうとしても。


「もう、絶対にお兄様から離れません!」


俺は処置なしと、あきらめることにした。

洞窟から出ると、目の前は森が広がる崖だった。

右の手前には見覚えのある滝がある。

左は上に続く坂がある。

坂を上がると、森が広がっている。

…行き先がわからんな。

すると、エイジスは向かう方向を指示してきた。


「ここは…未開拓領域近くの森か。太陽の位置と大まかな経過時間からして、落下位置から南東に進んでいたみたいだね。だから、ここから北西に向かえば、元に戻れるはずだ。」


「未開拓領域?なんだそれ?」


「言葉通り、まだ人間よる開拓や探索ができていない場所の事だよ。ここの近くは確か、アルカディア帝国の領地だから、そこの調査団やギルドが未開拓領域を開拓しているはずだ。」


なるほど、世界はまだ不思議に満ちているらしい。

さて、エイジスのおかげで行先はわかったし、向かうとしよう。


森の中は以外にも危険ではなかった。

というより、目的地までそこまで距離はなかった。

目的地付近には、わかりにくいが大地に裂け目があった。

おそらくあそこから落ちてきたのだろう。


「さて、ここまで来たら大丈夫だ。ありがとう。」


「そうか、じゃあ報酬を貰おうか。」


「了解した。…しかし、報酬を設定していなかったが、何が欲しい?手持ちは少ないが、護衛に見合う報酬を出そう。」


「じゃあ、お金で頼む。」


「そうか、ならばダンジョンからの護衛ということで、銀貨8枚でいいだろうか?」


正直な話、この世界のお金の基準がわからないから、銀貨8枚とか言われてもわからん。

まあ、道中の路銀が欲しいだけだから、騙されて少ない路銀持たされても構わないし。

そんなことより、次のことが重要だ。


「それで構わない。それより聞きたいことが3つほどある。」


「聞きたいこと?僕の答えられる範囲であればいいよ。」


「一つ目は、奴隷の少女の名前。」


「悪いが、それは僕にもわからない。入荷したときに名前がなかったのもあるが、名前が解ったりすると感情移入してしまう。しないように努めてもね。まあ、買い手が前の名前が知りたいとかいうもの好きは、まずいないはずだしね。」


「ふーん。じゃあ少女を商品とか、入荷とか言ったりすろのも?」


「……この話は終わりだ。次の話はなんだ?」


照れやがって、カワイイ奴め。

けど、解ったがエイジスは悪いやつではない。

悪い振りはがんばっているが。


「そうか。じゃあ二つ目は、この辺のハイエルフやエルフが生活している国や町は知らない?」


「エルフはともかく、ハイエルフか。確かハイエルフはエルフの上位種族だろ?僕が知ってるだけでもオリヴィア共和国の創始者のエミリー様ぐらいしか知らないぞ?」


ん?今かなり気になる名前。

というより、今の質問は、エミリーを探すための質問なのに。

とんだ大当たりだ。


「まあ、僕が知っている限りエルフが生活している場所は、さっき言ったオリヴィア共和国だろうね。なんせ、あそこは亜人や異業種、混種のための国だからね。……もし行くなら気を付けた方がいい、法律で差別はないが人間にいい感情を持つ者は少ない。」


「そうですか、忠告ありがとうございます。オリヴィア共和国はどっちに行けばいいのですか?」


「えーと、ここはアルカディア帝国の東の帝都アルンの東の副都ベリアルの更に東の街道だ。まず、オリヴィア共和国は帝国の北にある。街道に沿って行くなら、副都ベリアルを経由して北へ行けばオリヴィア共和国に付くはずだ。流石にオリヴィア共和国は行ったことが無いから、勘弁してくれ。」


初耳のワードがいくつか出たな。

既存ワードとしては、手紙で見たアルカディア帝国と、さっき聞いたオリヴィア共和国かな。

アルカディア帝国の帝都のアルンと、副都のベリアルは初耳だな。

脳内メモにメモしておこう。


「副都ベリアルとオリヴィア共和国まではどこまでかかります?」


「言い方からして、君はオリヴィア共和国に行くつもりだね?」


「ああ」


「ならば一緒に副都ベリアルまで行かないか?」


「構わないが、護衛の依頼か?」


「いいや、街道に出た時点でそこまで問題はない。」


思いのほかアルカディア帝国の治安はいいのかもしれない。

あと、エイジスの護衛をしていて気が付いたが、エイジスも意外とやり手だ。

戦闘に入ったら、自分もすぐに動けるように立ち回っていた。

あと、さりげなく妹の事も気にしていた気がする。

全く、優しいやつだ。なんで奴隷商人しているのだが。


「じゃあ、一緒に行こう。」


「わかった。じゃあ、歩きながら話を続けよう。」


エイジスと俺と、妹は副都ベリアルに向かって歩き始める。

もちろん妹はいまだに左手を掴んだままだ。

離れる気配一切なし。


「ここは副都ベリアルから結構近い。今日の夕方ぐらいには着くだろうね。で、オリヴィア共和国までの道のりだっけ?国境近くまでは徒歩で1カ月ぐらいかな。定期馬車を利用するなら大体1.2週間ぐらいだろう。で、国境からだけど、さっき言った通りオリヴィア共和国に関して、僕はほとんど知らない。行ったことないからね。」


一カ月か、時速5kmで移動するとして1日8時間移動。

それが30日だから、1200kmぐらいかな。

野営をどうするか考えないとね。


「よくわかった。ありがとう。最後に三つ目だけど……」


正直、3つ目はエミリーの事を聞こうとしたんだが、場所はわかっちゃったんだが。

どうしたものか。


「三つ目はなんだい?」


「三つ目は、奴隷の少女を買い取ったが、契約書とか必要なかったのか?」


「それに関しては問題ない。その子に付いている首輪が契約書の機能を果たしている。それで、君が商品が欲しいと言ったときに、僕がこれに了承した。この一連の動作を、契約主である僕が首輪の近くで言ったことで、君に契約が譲歩されたことになった。」


そんな首輪だったのか。

意外だった。切ったりできるのかな?


「へー、首輪を外すことは?」


「奴隷を解放するということですか?…普通はおすすめしませんね。契約主による主従権限がなくなるので、奴隷から復讐されることが大多数ですから。まあ、君の場合は大丈夫でしょうが。」


最後少し笑いやがったな。

他人事だと思いやがった。

他人事だけど。


「奴隷の解放は、契約主か、契約主の代理人が魔素を流す事によって外れるよ。」


なるほど。魔法を使うときの魔素の流れをイメージすればいいのかな?

魔法は普段から使っているようにスムーズに使えたが、魔素の操作はどうだろうか?

今やろうと思ったが、せっかく魔法を隠してんだ。ここで使っては意味がない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


4時間ほどかけて副都ベリアルに到着した。

着いた頃には、太陽が沈みかける夕方だ。

で、俺たちは今関所で検問を受けている。


「帝国の住民票か商証、ギルドカードを提示すれば銅貨5枚。出さなければ銀貨1枚だ。」


俺は銀貨2枚を払おうとしたが、エイジスに止められる。

どうやら、奴隷は所持品扱いらしく、特に危険などがなければ、契約主が入れれば入れるらしい。

俺は銀貨1枚、エイジスは銅貨5枚を払う。


「よし、通れ。」


特に何事もなく入れた。


「さて、君たちとはここでお別れだ。君には本当にお世話になった。ありがとう。最後まで、世話する事はできないが、今日分の宿を提供しよう。」


「ありがとうございます。こちらそ、エイジスさんがいなけければ、ここまで来れませんでしたよ。」


「……また護衛の依頼をするかもしれない。名前を教えてくれないか?」


名前か。

記憶がないから、名前無いんだよな。

んー、適当に自分が分かりやすいものでいいか。


「名前は……クロノスだ。姓は無い」


「クロノス君ね。…ははっ、一日中共にしていたのに、名前を知らなかったとは、自分でも驚くよ。」


ちなみに時空魔法が使えたからクロノスだ。

安直だろ?


「確かにそうですね。あと、護衛の依頼は難しいかも知れません。必要なものを買ったら、明日か明後日には向かいますので。」


「そうか、それは残念だ。では、またいつか会おう。」


エイジスは手を振りながら街中に消えていく。

いいやつだったな。

また会えたら会いたいものだ。


「さて、妹よ。寝る前にやることがある。付いてきてくれ。」


「はい。お兄様。」


俺と妹は人気のない路地に入る。

ここなら人目につかないな。

俺は、妹の首輪に手をあて、魔素を流すイメージをする。

魔素が流れているのを感じる。

ある程度流すと、首輪が仄かに発光してから首輪、手枷、足枷の順に砕け散った。


「お兄様。私を奴隷から救って下さったのですね!ありがとうございます!!」


「妹よ、よく聞いて。君はこれで自由だ。君がこの町で生きていくなら、少ないが路銀を渡そう。だから---」


「お兄様!お願いです!私を捨てないで下さい!!」


少女は顔を真っ青にして抱きついてきた。

彼女からしたら、奴隷を解いた=ここで捨てると、解釈したのだろう。


「私にはこれといった取り柄がありませんが、お兄様のためなら何だってできます。目障りなら殺してくれてもかまいません!お兄様が相手なら私は---」


妹が先走りそうだったので、逆に抱きつき返した。

妹の目は涙で崩れ、そして暗く濁っている。

俺は改めて意思を確認する。


「俺はこれから長旅をする。君には耐えられるかわからない。とても過酷だろう。あと、俺は本当の兄では無いかもしれない。それでもついていく気かい?」


「私は、お兄様を手を握って助けて貰わなければ、ここにいません。それに、私は最初からお兄様に一生付いていくことを決めています。何があっても離れません。」


「…そうか。じゃあ、助けた責任をとらないとな。」


「?」


「君は妹だが少女ではない。君はレイアーだ。兄が勝手につけた名前ですまないね。」


「あぁ……お兄…様。」


妹はそのまま泣き崩れてしまった。

俺はそのまま宥める事に徹することにした。


--------------------


「ぐすっ……ありがとうございます。お兄様。」


「ああ、もう大丈夫かい?」


レイアーはコクンと頷く。

俺達は路地裏を出て、宿に入る。

中身は一言で表すなら質素に尽きる。

決して高級ではない、全て木製で掃除が行き届いている。

なかなか好みの店だ。


「一泊頼みたい。」


「かしこまりました。一部屋銅貨7枚になります。食事はつきませんので注意してね。」


俺は銀貨を1枚払って、銅貨を3枚もらった。

貨幣の変換レートは1/10なのか。


「二階の207号室になります。裏庭の井戸は、自由に使ってください。


俺は207と書いた木の板を貰った。

部屋に行く前に、先に井戸でEXPポーションが入っていたフラスコに、水を入れる。

よくよく考えると、朝のポーションから一口も水を飲んでいない。

口の中がカラカラだ。


俺は注水が終わると部屋に入る。

どうやら、貰った木は扉の閂代わりに使うらしい。

ベッドは…1つか。

まあ、子供二人だ。

何とか入るだろう。


寝る前に夜ご飯だ。

俺は隠す必要が無くなったので、魔法を使う。

空中から、切り分けておいた干し肉10切れと、1/6黒パンを二枚取り出した。

あと、井戸で汲んだ水。フラスコ二本。


「お兄様は魔法が使えるのですね!凄いです!」


「それに関して話があるが、まずは飯だ。」


それほど時間をかけることなく、二人は食事は終了した。

意外にも、俺が食べるのが遅かった。

妹よ。少し早いぞ。


「さて、俺達は明後日ここ副都ベリアルをでて、北上してオリヴィア共和国に向かう。予想期間は約2カ月だ。」


「2ヶ月ですか。となると、かなり準備しないといけませんね。」


「ああ、だから明日の予定を言っておくと午前は必要なものをを整えて、午後は情報を集めるつもりだ。できれば地図が欲しいね。」


「わかりました。お兄様。」


「で、レイアーにやってほしい事があるんだ。」


「何でしょうか?」


「これを使ってほしい。」


俺は異空間から炎と水の魔法の秘伝書を取り出す。


「この紙は何なのでしょうか?」


「これは秘伝書といって、契約書見たいに使えば魔法が使えるようになる。俺の場合はこの二つに適正がなかったから、レイアーなら使えるかもしれないからね。」


「そんな凄いものを私に……、よろしいのですか?」


「ああ、是非使ってくれ。」


俺が使い方の手順を教え、レイアーが血印を押す。

すると、二つとも光の流出になり、俺とは違い右手に光が収束する。

そして、俺の円形に八芒星ではなく、四角のなかに六芒星だ。

線は赤と青の色になっている。


「これは…。不思議ですね。使ったこともないのに使いなれているみたいです。」


レイアーが右の手で水球を、左の手で火球を作って見せた。

あとは…。


「レイアー。武器とか使った事あるか?」


ダメ元で聞いてみる。


「ええっと、刀というものを、前の主人のとき持たさせたぐらいです。」


意外にもあった。

刀って、日本でもあるのか?

それにしてもレイアーに刀か。

黒髪少女に刀か。

アリだな。

俺は異空間から雷晶を取り出す。

俺は雷晶を対象に『物理魔法:加工』を発動。

加工対象の難易度が高いのか、魔素が結構持ってかれた。

雷晶が粘土のように変形し、刀の形を作り出した。

しかし、またこれは刀身を作り出しただけで、磨いたり、柄や鍔を作らなければならない。

幸い、刀を鍛えるのは魔法によって省略された。

むしろ、それが原因で魔素を持ってかれたのかもしれない。


「お兄様の魔法はすごいです。私みたいな普通な魔法とは違います。」


「それは違うよレイアー。物事は普通だからこそ応用が効いて強いんだ。俺みたいな魔法は、特殊だから改良の余地が少ない。だから、普通の魔法が使えるレイアーが凄いはずだよ。」


実際にそうだ。

確かに異空間収納などは便利だが、そこまでだ。

それよりはレイアーが使える火や水の方が、よっぽど使える場面が多い。


「お兄様…、いえ、そんなことは…」


「いいさ、俺は俺なりに頑張るからさ。レイアーもレイアーなりに頑張ればいいさ。」


「はい!お兄様の妹としてふさわしいように頑張ります!!」


なんかプレッシャーを与えたみたいで悪いな。


「それじゃ、明日も早いから寝ようか。」


「はい、お兄様。」


俺とレイアーはベッドに入り横になる。

二日で妹ができたり、死にかけたりと波乱万丈すぎる。

だが、退屈はしないな。

クロノスは明日に期待を持ちながら就寝した。

注約として、妹のレイアーの名前は、時空神クロノスの妹から取りました。

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