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誤字転生者黙示録  作者: 冒涜的な番人
少年期
1/5

白紙の少年

結構な間は幸せな物語です。

たくさん夢を見てくださいね。

あと、虚淵玄さんの物語大好きです。

異世界転生もののテンプレなら、不慮の事故で、神様とかなんとかありながら、チート無双!!っていうイメージがある。


が、しかし


「ゴガァァァ!!」


「ヤバいヤバい!逃げろ逃げろ!」


俺は例外のようだ。


------------------------


まずは状況を整理しよう。

気づいたら山の中、パニックになりながら、2時間で冷静になり、2時間で状況整理と拠点作成。

1時間前に探索を開始した、熊や狼など野生動物が豊富なため、探索を断念。

拠点へ帰還しようと思ったその時、熊と遭遇。運悪く気が立っていた個体に会って、現在に至る。

つまり、ピンチ。

森でー、熊さんにー、出会ったー、とか、本当に洒落にならない。


拠点までの道のりなど、もうわからない。

ただ闇雲に走る。逃げる。

その結果。


ゴスッ!


「ぐっ!」


熊の腕が俺を払う。

脇腹が焼けるように熱い。

熊が俺を吹き飛ばし、倒れる先は滝壺だった。

地上から足が離れたのと同時に、俺の意識も離れた。


------------------------


3時間前


「落ち着け、クールになるんだ。そして、状況を整理するんだ。」


俺の名前は?

わからない

自分は何者?

転生者

では、どんな過去?

俺が知りたい。

最後の記憶は?

この森で起きた時。

最後に、これからどうする?

まずは、生き残る。


「よし、整理できた。……整理するほどの事がねぇ。」


詳しくいこう。

まずは記憶だ。

まず、今俺は自分で自分がわからない。さらに、自分の過去についても全くわからない。ただ、物に関しての事はわかる。

つまりところ、思い出記憶。エピソード記憶が欠落しているのだろう。

経験や、知識などの記憶は、問題無いとは言えない。

まず、物については、実物を見ないと思い出せない。つまり、自発的に思い出せないのだ。

次に経験だが、イマイチよくわからん。自分が何していたかわからないから、確かめようがない。これは暗中模索だな。

だが、経験が発揮している場面が、今起きている。

サバイバル。

現在進行形で、今狼煙をつくってるところだ。

とりあえず何をしたらいいか、なんとなく解る状態だ。

最後に、教養や歴史だが、問題なかった。

なので、結論として、俺は転生者という事がわかる。


次の問題だ。

今の肉体だ。

ぱっと見て、だいたい7か8歳ぐらいだろう。

髪は真っ黒で、瞳も黒だ。

身長は135センチぐらいかな、歳にしては高い方かな?

ピカピカの小学生だ。

少し特殊な点といえば、少し筋肉質で、若干腹筋が割れてるぐらいだ。

ただし、あくまで常識の範囲なので、ワンパンチで木を倒すとかは無理だ。

あと、精神年齢については、過去がわからないから、詳しいことはわからない。だけど、子供では無いことは確かだ。20歳は越えてるだろう。

この点でも、転生者とわかる点だ。


最後に、これからの目標だ。

当面は過去を探す、記憶を取り戻す方法を探すつもりだ。

……まあ、まずは生きてこの森を出ないと、話にもならないが。

拠点ができ次第、周囲の探索をしよう。

あー、ナイフが欲しい。


-------------------------


ポチョ……ポチョ……


「うっ……」


全身ずぶ濡れで、体に力が入らないという最悪の状態で目を覚ました。

思い出せるのは……熊に殴られたところまでだな。

骨は……大丈夫かな?ヒビ入ってるかもしれないけど。出血は少し派手だが、軽傷の方だろう。

しかし、なぜ滝壺に落ちて生きてるのだ?意識なしで浮き上がるとは思えないし。

どちらにせよ、まずは周囲の確認だ。


そこは、砂浜だった。

しかし、珍しい事に太陽がない。つまり地下だ。

見た第一印象は、地底湖に砂浜がある光景だ。

あとは……小屋が見える。

こんな所に住んでいる人なんて、絶対まともな訳がない。俺の勘がそう囁いている。


あと、俺の状態もあまりよろしくない。

脇腹からは少なからず出血しており、徐々に体力を奪っていく。

骨は折れてはないが、もう一度大きな衝撃が来たら、間違えなく折れる。

最後に、全身ずぶ濡れだ。火を焚いて乾かして暖を取りたいが、洞窟では、そうはいかない。

結論。満身創痍。

しかし、よく生きてたものだ。恐らく、あの滝壺とここの地底湖が繋がっていたのだろうが。

さて、次の行動方針だが……

……仕方ない。小屋に行くとしよう。


見た目は木製の小屋だ。見上げるほど大きくはないが、小さい訳でもない。


コンコン


「すいませーん。誰か居ませんかー?」


……反応ないな。

鍵は………開いてる。随分オープンな家な事だ。

冗談言ってる余裕も無いので、迷わず開ける。


ギイィ


中は、研究室だった。

本棚、フラスコとかの実験道具、いろんな紙が乱雑に置いてある机、木箱、ベッドがあるが、どれも埃を被っている。

そしてベッドだか…盛り上がっているな。ちょうど一人分ぐらいに。

俺はベッドにに近づき、布団をとる。


「……」


中身は、予想に反して白骨死体だった。

シャツとズボンを着ており、手には手紙が添えてある

…手紙。読まない訳がないじゃないか。

ということで、俺は手紙を読む。


『ようこそ、勇者くん。

ここは、君が予想している通り、禁忌の大魔導士アーカムの隠れ家だ。君がこの手紙を読んでいると言うことは、僕は死んでいるのだろう。

僕からは君に何もできないが、首を切り落としてアズール神国やアルカディア帝国にでも持っていけば、億単位で金貨が貰えるだろう。よかったね。

……これは僕からのささやかな願いだ。机の引き出しにピンクの手紙がある。その手紙を、ハイエルフのエミリーに渡してくれ。対価として、家財の一切を譲歩しよう。』


手紙中には、もう一枚の紙がある。契約書のようだ。恐らく最後の内容の事だろう。…さて、どうしたものか。

ふと、手紙を持っていた左手が目に留まる。

薬指に指輪がついていた。

手も白骨化しているので、裏側の字も見ることができた。

『エミリー・エルティシエ』と。

流石にここまで来たら俺でも気付く。

ピンクの手紙とは、嫁さんへの遺書だ。

………仕方ない、その依頼、受けよう。


俺は契約書の印鑑部分に、判子がないので、親指で血印を押す。

本人はこの時知らなかった事だが、この契約書はアーカムお手製の魔法の契約書だ。二重のエンチャントで『善悪判断』と『即死』の魔法がくみこまれていた。

もし、この契約書が、悪人に使われた場合、即座に『即死』の魔法が働くようになっていたのだ。

血印を押した直後、契約書は燃え上がった。

契約書は光の粒子になり、俺の左手に集まった。

ちょっとくすぐったい。

光が収まると、左手の甲に円形の魔方陣が刻まれていた。


「うわっ!契約って、こういう風に反映されるのか。」


一瞬、契約書しまくって、全身刺青状態の姿が思い付いたが、まずそんなに契約しないだろう、と思い落ち着いた。


というか、そんなことしてる場合じゃない!

俺、重傷ですよ?

まず、包帯とかないか、木箱を漁る。


ガサゴソ


アーカムさんの死体を見たとき、『服千切って、包帯できるかな?』と一瞬思ったが、死体の服とか衛生状態最悪だろうな。

そう言ってる間に、藍色の長細いタオルみたいなものを発見。それと、

洗浄水がありそうな瓶を探す。


「これは……ありか?」


洗浄水は見つからなかったが、代わりに『開腹ポーション』と、ラベルが貼ってあるものを見つける。

ポーション。

ファンタジー世界で、ファンタジーと言えばこれ!と、言えるほど、ポピュラーなもの。

俺も、恐らく使うだろう。

『開腹』の二文字がなければ。

え?回復の誤字だよね?じゃなきゃ、開腹ってなに!?

それからも『死作ポーション』やら『凶化ポーション』など、不吉で、意味不明なポーションがわんさか出てきた。

これ、誤字だよね?


結局、地底湖で傷口を洗ってから藍色のタオルで縛った。

とりあえず、出血は押さえたので、これ以上の衰弱はないはずだ。

次は、減った血肉の補充だ。

ようは飯だ。

果たして、ちゃんとした食料はあるだろうか?


ガサゴソ


成果は微妙。猪一頭分の干し肉と、黒パン5斤。水なし。

食料を探しているときに見つけた物がある。

柄に色々な文字が掘られた虫眼鏡だ。

最初はただの虫眼鏡かと思ったが、とんだ掘り出し物だった。

この虫眼鏡で十秒以上見続けたものは、それが何か判るのだ。

虫眼鏡と辞書が合わさったものだ。便利。

早速調べていこう。特にポーション。


さて、まずは『開腹ポーション』だ。誤字であることを祈る。


『開腹ポーション:ランクA

回復ポーション:ランクBが神威権限『誤字』により、変質したもの。このポーションの使用者は、腹部が内側から裂け、破裂する。同時に、使用者の魔素を収束させ、本来より二ランク上のコアを精製する。』


「マジかよ、本物だったし…..。」


腹部が内側から裂けるって、エグすぎるだろ。

次は『死作ポーション』か。


『死作ポーション:ランクS

試作ポーション:ランクAが神威権限『誤字』により、変質したもの。このポーションの使用者は、まず生命活動を停止する。その後、使用者は他者の血液を取り込み、死者のまま蘇生する。また、使用者は血液を与えられたものに絶対服従する。』


ただのネクロマンサーポーションだったか。

これはこれで酷い。

最後は『凶化ポーション』か。


『凶化ポーション:ランクA

強化ポーション:ランクB が神威権限『誤字』により、変質したもの。このポーションの使用者は、永続的に『状態異常:精神崩壊』『エンチャント:オールシフトⅤ』『エンチャント:存在昇華』が、付与される。』


バーサクポーション改ですね分かります。

精神崩壊が永続的とか、他二つのデスポーションより酷いぞ。

これらは封印確定だな。

それぞれ見たが、一つ神威権限『誤字』と言う共通点があった。

アーカムさん、文字音痴ではなかったんですね。よかった。

他にも虫眼鏡で、良さそうなものをいくつか見つけた。


・回復ポーション:ランクB ×3

・マナポーション:ランクB ×3

・EXPポーション:ランクB ×2

・幸福薬 ×1

・ミスリルナイフ ×1

・刻遠竜の長杖 ×1


……何か変なのが混じっている気がするが、私は幸福です。

試しにEXPポーションを試したいが、まだ、机、本棚、実験道具を調べてないので後回し。

次は机だ。


--------------------


机の上は羊皮紙の束が乱雑に積まれている。

虫眼鏡で調べられる範囲で調べ、めぼしい物を見つけていく。


・異空間収納術の秘伝書

・抽出魔法の秘伝書

・加工魔法の秘伝書

・炎魔法の秘伝書

・水魔法の秘伝書


秘伝書シリーズはこれくらいだ。

ちなみに秘伝書というのは、契約書のように自分を表す印を押すことで、その技や魔法を手に入れる事ができる。

と、虫眼鏡が教えてくれた。

もちろん、消費だ。


『時空魔法:異空間収納

 自身の最大保有魔素量に比例して、異空間を精製する魔法。異空間精製に関しては魔素を消費しないが、物を出し入れする時に必要となる。制約として、生物を入れることはできない。』


『物理魔法:抽出

 自然界の物質の不純物を除外し、純粋な物質に抽出する魔法。抽出する規模に比例して魔素を消費する。熟練度による追加効果あり。制約として、分解魔法ではないため、加工品や生物の抽出は不可能。』


『物理魔法:加工

 自然界の一定以上の割合の物質を、好きな形に加工できる。加工する規模に比例して魔素を消費する。熟練度による追加効果あり。制約として、生物の加工は不可能。』


秘伝書が燃え上がると、光になり、手の甲についた。

また刺青が増えるかと思ったが、最初の魔方陣に紫と灰の線が追加されただけで、特に変化はなかった。

秘伝書を使ったんだが、水魔法と炎魔法の秘伝書は使えなかった。

血印を押したはいいが、そのまま血印が消えてしまった。

追加で虫眼鏡で調べると、自身の魔素が少なかったり、魔法に適正がないと、無効化するらしい。

適正か。

自分についても調べる必要が出てきたな。いや、元々調べるつもりだったが。


まだ机の紙束は終わらない。

と言っても、こっちが大半を占めてたが。

それは設計図だ。

虫眼鏡で調べるも、『異世界の設計図』とか『■■の設計図』とか、よくわからん。

だが、八割り以上が暗号化して、わからん。

しかし、残り二割で経験が発動する。 

一部が知ってる暗号だった。

……サバイバルできて、暗号解読って、何者?

まあいいや。

で、その設計図を解読したのがこれだ。


『第八世代型汎用ライフル:ペイルライダー

 全身150cm 高さ55cm 重さ13kg。陸上、空中、水中を想定した汎用ライフル。従来のコンピューター制御を撤廃して、軽さ、強度、安定性を追及した。最大射程1750m フルオート、セミオート、三点バースト可能。専用弾使用』


第八世代?

俺の知ってるのは第五世代だ。

ということは、俺の元の世界の未来の銃なのか。

最大射程1750mでフルオートとか、想像できないな。

というか、なぜコンピューター制御外したし。

そして、銃に懐かしさを覚える俺は、平和の住人ではなかったのか。

まあ、それより今だ。生きねば。

付随して、他にも設計図がある


『ペイルライダー拡張ユニット:銃剣』

『ペイルライダー拡張ユニット:弾薬』


これは後回しだ。

残りの二つだが…。


『第九世代型重歩兵兵装:イーグル

 全長48cm 高さ25cm 重さ8kg。宇宙軍の甲型エイリアンとの近接戦闘を予想したパイルバンカー。甲型エイリアンの皮膚装甲を突破可能。エナジーシールドの貫通に関しては、拡張ユニットを使用すること。動力はリチウム重合金の電池を使用。』


『イーグル拡張ユニット:動力電池』


第九世代は宇宙と戦争してるのか。

釘打ち機で近接戦闘って…ロマンかな?

とりあえず、これが解読した設計図で、虫眼鏡ではどれも『異世界の設計図』と表示している。

でしょうね。


あと20枚ぐらい設計図あるが、解読できないのでパス。

そのまま異空間に収納。

次は本棚だ。


----------------------


数えたところ、30冊の本があった。

どれも恐らく、300ページ超えの本だ。

まずは気になる本をピックアップする。


・ネクロノミコン

・魔石-魔法-魔物大図鑑

・錬金術入門書

・死霊術入門書


まともな本がない。よくても大図鑑ぐらいだ。

ほとんどの本がSAN値を著しく低下させるような本ばかりだ。

一応、ピックアップした本が最もまともに見えたものだ。

まあ、本は時間を見つけて読むとしよう。


最後に実験道具だ。

シリンダーや、フラスコが散乱してるが、すべて中身が空だ。

特に見るところもないかなぁ。


「ん?これは…」


実験道具の中央にある魔方陣。

よく見れば埃がない。

台座の木は古くなり、焦げ茶色に変色しているが、そこだけ埃がない。

試しに触れてみる。


ゴツッ


ガラスに当たる感触があった。

目には見えないが、そこに何かあるらしい。

次は両手で持ってみる。


「布が巻いてあるのか?となると…」


布を剥がしていく。

すると、何もない空間から黄緑の光が漏れる。

布をすべて取り払う。


「こ、これはいったい!?」


中には胎児のような生物がいた。

全身が白く頭が異常に大きい。

あまりに予想外の事態に狼狽したが、これだけでは終わらなかった。


「………」


目が合った。あまりの動揺に、硬直してしまった。


「………はっ!」


今までの急展開で耐性を得たのか、復帰にさほど時間はかからなかった。

気付いたら、胎児は目を閉じていた。

俺はとりあえず、布を裏返しにして、再び巻いた。

また不可視化されると困るし。

小屋に入ってかなりの時間が経過した。

これからどうしたものか。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

5/1 誤字修正

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