4.20 場違い
リガン達がたどり着いた祭会場の中央、騒ぎの中心地点は活況に満ち溢れていた。
そこは広々とした広場で、沢山のテーブルが設置されておりそのほとんどが、魔岩・貴術族で埋まっていた。
魔岩だけ、貴術だけが固まっている訳ではなく、混合グループが多数であり、二つの種族の仲の良さがうたがえる。
リガン達がそこに足を踏み入れた時、皆一瞥したり、時には声を上げて人間だ、と叫ぶ者がいたが、どれも疎外感を感じさせる類いではなく、ただの興味本意での感心と思われた。最初昼間のときとは大きく異なる反応である。
その事でリガンは昼間にあったお調子者のヤハラが、偉い立場の者だとやっと実感出来たのだ。
先頭にいる魔岩に案内され、幾つものテーブルの脇を通りすぎていく。
貴術や魔岩の体格に合わせられた大きなテーブルにこれまた屈強な魔岩・貴術族の者達を通り抜けていくにつれ、人間の中でも小柄なリガンがより小さく見えてくる。
とあるテーブルには大小さまざまな形をした石と、石で出来た棍棒を隣に並べて談笑している魔岩の人達もおり、一体あれは何なのかとリガンは気になったものである。
また通り抜けていくその度にリガンは貴術族や魔岩族から一声かけられたが、苦笑等をしてその場を切り抜けた。
リガンには酔っぱらいに対する耐性はない。そもそもリガン自身酒を飲んだ事がないため、酔っぱらうという感覚が理解出来なず、それ故に酔っぱらいへの耐性、もとい対応の仕方が分からないのだ。
そんなリガンであるが、先程まで酔っぱらっていた魔岩に案内され広場中央にある、酒場のカウンター席へと着く。
ここの広場で飲まれる酒は全てここの商品らしく、大量の酒瓶が、それこそ何mもあろうかという奥の棚に納められている。
カウンターは魔岩や貴術の体格に合わせられているためか、リガンらが席に座ってしまえば、顔だけ出すのがやっとと思われるぐらい高いものであった。
そこのカウンター席の一席に魔岩は座る。そのとなり、二つの席は魔岩と比べ椅子が高く作られている。どうやら子供用の椅子であるらしい。
座ると石であるが故の、ひんやりとした感覚が味わえた。
ここ祭会場はここまでの移動手段と気温調整を貴術族が行う代わりに、魔岩族が運搬と会場設置の準備をする。
魔岩は住処である洞窟内の苔やキノコを食べる草食の種族であるが、貴術族のような植物の専門家ではない。
彼らの得意分野は住処故の鉱石であり、家具類は全部石で作られる。
その為祭会場においても全ての建築物が石造りであった。それこそ椅子やテーブル、カウンターでも。
人間の街では味わえない石独特のひんやりとした感触を味わうリガンである。
カウンター席に誰かが座ったことに気づき、酒瓶の整理を行っていた貴術族のマスターは棚からカウンターの方へ向き直った。
「いらっしゃいませ……なんだテストお前だったか」
「俺じゃ悪いのか」
「いや、悪くはないがてっきり酔いつぶれて寝に行っちまったかと思ったよ、まさか人間をつれてくるとはねぇ……」
マスターはリガンらの方へと向く。この時テストと呼ばれた魔岩の右にトルク、またその右隣にリガンといった形で座っている。
またテストとマスターがこの時話していた言語は魔岩語であり、それ故にリガンは彼らの言葉が分からず、突如としてマスターに見つめられた今、内心どうしたらよいかと悩んでいた。
そんなリガンの変化に気づいたのか、マスターは言語を変える。
「こっちの方がお好みかなお嬢さん」
爽やかな笑みと共に人間の言語、広語をマスターはリガンに対し使いだした。




