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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第4章 祭典と凶報と……
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4.18 酒の香り

「はいよ、見事なほどに治ったよ」


 店主から預けていた魔具をトルクは受け取った。


 カラカラ砂漠はもう夜であるが、リガンらがいる祭り会場は松明の明かりが至るところで灯っており、昼間のような印象を受ける。

 そういう意味では常日頃夜でさえも光を灯すことなく暗がりであった、かつて暮らしていた貴術族の村とはだいぶ異なる印象を受け、ここが日常ではなく祭という非日常なんだと改めてリガンは思い知る。

 実際、アクセサリー店近くの出店地帯は賑わいがないものの、向こう側、祭の中心地点ではここからでは見えないが、騒ぎ声がここまで聞こえるほど大きい。


 トルクは店主から白剣を受け取ると、その場で鞘を抜き刀身を確認する。

 リガンは剣の類いは分からぬがそれでもだいぶ異なる印象を受ける。それほどまでに白剣は見違えるほど変わっていた。

 白き刀身はこの世に誕生したばかりのように美しく、これまで以上に純白の輝かしい光を放っている。

 トルクは白剣を鞘に納めると、腰に着ける。どうやら修復状態に満足したようだ。


「ありがとう、見違えるほど良くなっている……本当にただで良いのか」


 トルクは押し入るように確認する。実際それほどまでに素晴らしき仕事を店主はしたのだ。


「いいんだよ、ワシも貴重な魔具を見られて満足だからねぇ」


 首をゆっくりふり、店主はやんわり断る。

 

「ただ……」

「ただ?」


 店主は何かいい足りぬようで、再度口を開く。


「お前さんの魔具とかつて三連の戦いの時、若造が持ち込んだ火属性の剣の魔具。細部まで似ているんだよ」


 店主はトルクの腰にある、氷属性の剣の魔具を見つめる。


「ワシは思うんだが、もしかしてあの時の若造が持っていた魔具とお前さんが持っている魔具、同じ職人が同時期に作ったものかもねぇ」


 その発言をトルクは目を細め聞いている。まるで何か心当たりがあるかのように。


「分かった、何か機会があるかもしれない。覚えておくよ」

「覚えておいて損はないからね、それよりもお前さん方今日はここに止まるんだろう」


 ここカラカラ砂漠は夜中、昼間とはうってかわり尋常じゃない寒さが襲う。

 その為ここカラカラ砂漠ではリガン達はトラルンで貰った防寒具を纏い体を丸め、寒さに堪え忍ぶのだ。

 しかしここ祭会場は貴術族が温度調整を行っている為か、夜でも昼間と同様の快適な温度となっていた。


「出来ることなら止まりたいんですが、宿泊所が有るんですか」

「普通の者達なら魔道導を通って貴術族の街セイナイで寝泊まりするんだがね。酔いつぶれてここに泊まる者もいるんだよ。その為の施設だから質素なことこの上ないが有ることにはあるよ」

「それでいいです、そこで泊まることにします」


 店主はあまりオススメはしないと言った様相であるが、リガンにとっては寝床がある分だけましである。

 喜びながらそうリガンが答えた時、祭の中心方向から来たと思える、酔っぱらいの魔岩が一人やって来た。

 その者は足をふらつきながらこちらに歩いていき、やがてリガンやトルク、人間族を見つける。


「なんだぁ、こんなところに昼間の人間がいるじゃねぇか。こんな所に来てないで俺達の所に来いよ」


 ろれつ回らぬ声と酔っぱらい特有の大声で、その者は叫ぶが、無論言語が魔岩語なので、リガンは無論トルクには分からない。


「こら、お前さん。その言葉ではこの者達には通じぬよ。貴術の方の言葉じゃなければな」

「貴術なら分かるのかよ、分かった。それで喋るよ」


 赤い顔をしながら酔っぱらっている魔岩は、店主に言われ喋る言語を変えた。


「これで通じるか、人間達」


 不安定な抑揚で、言葉を変える。その言語はリガンが聞くことができる貴術語であった。

 

「それなら聞くことが出来ます」


 リガンは顔をバレない程度にひきつらせながら答えた。リガンとしては酔っぱらい等はあまり好まない者達であったのだ。

 そもそもリガンは酒を飲んだことがないので、どっちかというと理解出来ないといった感じであったが。

 そんなリガンに、酔っぱらいの魔剛はずかずかと近づいていく。


「ようし、それならこっちに来て付き合えや」


 そう言うと酔っぱらいである魔岩は突如リガンの腕を掴んだ。


「!、ちょっ止めて下さい」


 突然腕を捕まれた事に無論リガンは驚き、抵抗する。だが、恵体である魔岩の力は尋常ではなく、抵抗するリガンを連れて行こうとする。

 そんな時、リガンを掴む魔剛の腕が逆に掴まれた。

 魔剛の腕を掴む肌色の手は、顔を見ずともリガンには察しがつく。

 リガンを助けたのはトルクであった。

 トルクはリガンを掴む魔岩の腕を握り、彼の顔を睨み付けていた。


「リガン訳してくれ、これ以上するとこちらとしても出しざるを得なくなるってな」


 空いているトルクの左手は、鞘に納められている白剣の柄に添えられている。

 そんないつもと違う真剣な顔ざしのトルクに、リガンは少しばかり時間を忘れた。

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