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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第4章 祭典と凶報と……
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4.8 勇者は家宝を受け取ったか

「店主さん実は私たち貴方に聞きたいことがあって来たんです」


 貴術語でリガンは話を始める。一方貴術語が分からないトルクは口をつぐんでいる。

 貴術語のリガンに対し、魔岩である老人の店主も貴術語で答えた。


「なんだい、お嬢さん」

「店主さん、貴方は四年前ここで起こった三連の戦いに参加していましたか」

「参加していたとも、まぁ兵士ではなく後方支援だったがね」


 リガンの真剣な問いに、店主の魔岩はごまかしたりふざけることなく真面目に答えていく。


「三連の戦いには多くの人間が参加しており、店主さんはその人間達の武器の手入れを担当していたと聞いたのですが」

「あぁしていたとも実の兄と一緒にな。それがどうかしたかい」

「その中に魔具を所有していた人物がいませんでしたか、魔具を知っているとしたらですけど」

「私の専業は武器屋でね、今は祭だから武器じゃなくこうしたアクセサリーを売ったりしているがちゃんとその方面の知識はあるよ」

「つまり?」

「魔具は知っているよ、それにそれを所有していた人物も」

「それって本当ですか!」


 出店の台に手をつき前のめりとなりリガンは尋ねる。その姿勢に店主はにこやかに微笑む。そのような笑みで見つめられリガンは己の行動を客観視する。そして自らが恥ずべき行為をしているのだと気づいた。


「……すいません、急に叫んだりして」


 手をどかし半歩後ろへ下がるとリガンは店主に謝る。それを店主は変わらない笑顔で微笑む。


「いいんだよ、それほどまでに知りたいんだろう」

「はい、知りたいんですその人の事を。それでもしかして持ってこられた魔具は火属性の剣の魔具でしたか」

「お嬢さんの言った通りの火属性の剣の魔具だったよ。それもとびっきりの上物だ」

「その人の外見はどうでしたか」

「茶髪に、茶色の瞳をしていたねぇ」


 その言葉を受けリガンは確信した。三連の戦いに勇者トレンは参加していたと。魔王討伐前の勇者の情報であるが、それでもリガンの胸は高鳴った。


「その魔具の所有者について何か分かることは有りますか。例えば戦い後の行方とか」

「うーん分かることと言えば、仲間がいたぐらいかねぇ」

「どんな人達が一緒にいたか分かりますか」

「魔具を持っていたのは人間の青年で、貴術と魔岩、それと獣丸とあと人間の少女が一緒にいたねぇ」


 勇者達と別れた時と変わらない面々にリガンは安堵する。それは勇者達が誰一人欠けることなくここまで来たということだから。

 しかしだとしたら何故都市キリヤルに着いたとき勇者、トレンさんは一人きりだったのか、その疑問はますます強くなる。

 リガンが考え事をしている最中、店主が再び口を開いた。

 

「そうそう、そう言えば三連の戦いが貴術・魔岩連合の敗北に終わって皆が敗走し始めた時、うちの兄貴が戦場に持ってきていた我が家に伝わる家宝を、その魔具の持ち主に渡すとか言って出ていったんだよ」


 店主が思い出したの如く付け足す。その内容にリガンは興味を抱いた。


「家宝?一体どんな家宝なんです」

「それが分からないんだよ、家宝の中身は長男である兄にしか伝えられていないからねぇ。さらに付け加えるなら兄貴はそれ以後すっかり姿を消しちまったから渡せたかどうかすら分からないんだよ」


 プライベートが入った内容に、リガンは申し訳ない気分になる。


「すいません、その……兄の事思い出させちゃって」

「いいんだよ、もう四年も前のことだから」


 言葉でそう言っているが、店主の目は悲しげに揺れていた。



「トルク、勇者は三連の戦いに参加していたみたい」


 店主に礼をいった後、リガンは広語でトルクと話し合った。


「そうか……、それで現在の勇者の行方について何か分かったことはあるか」

「それが分からないの、三連の戦いの後どこへ行ったかも。けど勇者はこの店主さんのお兄さんから家宝を受け取ったらしいの」

「家宝?一体どんな物なんだ」

「それが分からないの。私の推測としては剣だと思うのだけれど」

「剣?何故そう思うんだ」


 トルクには何故剣と推測したのか分からないようである。

 それもそのはずリガンが剣と考えたのはトラルンでカタンに聞いた内容から導き出したものだからだ。


「私が勇者と別れた時、勇者は火属性の剣の魔具を持っていたの。それがトラルンでカタンに聞いたことによると勇者は魔具の剣の他にもう一本剣を持っていたようなの。それを考えると私が勇者と別れてから勇者が魔王を倒すまでの約三年の間に新たな剣を入手したことになる。それに家宝と呼ばれる程の物なら凄い代物だろうし、剣であるならば勇者はきっと身につけると思う」

「だから剣……か」


 トルクはそう呟く。しかし彼の表情は納得したというより、何か考え事をしているかのような、そんな思案に暮れる表情であった。

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