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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第4章 祭典と凶報と……
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4.7 魔岩族

 様々な者達が走り行く人間の少女を見つめる。ここでは人間なんて珍しいからだ。

 そんな視線をお構い無しにリガンは走り抜ける。今すべき事を分かっているからだ。そして走り出して数分後トルクの姿を見つける。

 トルクは魔岩族が開いている出店の前に立っていた。その出店には宝石を加工し製作した様々なアクセサリーがあり、こんな状況下でなければじっくり見たい程である。

 しかしそんな訳にもいかず、リガンはトルクに声をかけた。


「トルクっ、さっきの態度はないんじゃない」


 リガンに気づきトルクは振り返る。振り返ったトルクの顔を見てリガンは意外に感じずにいられない。

 ヤハラの胸ぐらを掴んだ時と比べ幾分穏和になっていたからだ。

 何があったのか、リガンは疑問に感じる。


「その事ならすまない。つい自分でも我を忘れてしまった」


 トルクは素直にその事を謝った。そんな彼の態度にリガンはますます分からなくなる。


「ならいいですけど。けどトルク何かあったの、さっきのと随分雰囲気が変わったけど」

「何があったって言っても、何もないよ。ただ魔岩族の言葉を知らない事に思い至っただけだ」


 両手を肩まであげ、お手上げだと言わんばかりの仕草をするトルクである。トルクの前には、出店を経営している魔剛族がいた。

 魔剛と話せないから、それで足止めをくらって、冷静になる時間が与えられたのか。リガンはそう考えた。

 しかし問題は魔岩族の言葉をトルクは無論のことリガンすらも知らない事である。

 どうすればよいかリガンは分からず、頭に手を当て考える仕草をする。その時、掌にベタついた感覚がないことに気づいた。頭に汗が流れていないのだ。

 先程カラカラ砂漠の中にあるここ祭り会場で、全力疾走したにも関わらずにである。

 本来、日中のカラカラ砂漠の熱さなら歩くだけで汗がかく筈であった。

 リガンが首を傾け、その事を考えていたのだが、そんな彼女に話しかけてくる者がいた。

 

「人間さん達、ここは初めてかい」


 年配である証であるシワを顔に刻み、出店のカウンター奥に座る魔岩族がリガンに話しかける。

 洞窟内に自生する蔦を全身に巻き、服代わりにする魔岩族は人間からしてみれば、はしたないの一言だがそういった細かい事をリガンは気にしない。逆に気になったのはその魔岩が貴術族の言語を話したという点である。


「はい、初めてきたんですけど……それがなにか」

「人間さん気にならないのかい、何故ここがこんなに涼しいのか」


 人間の老人のような話題を誘導する口調にリガンはまんまと乗せられる。

 その老人の言葉でリガンはようやくここの涼しさに気がついたのだ。ここにくるまでのカラカラ砂漠はあんなにも熱かったのに対し、ここはむしろ寒いくらいである。


「確かに涼しいですね……けどどうしてここが?まわりの砂漠はあんなにも熱いのに」

「それはな、貴術族の皆さんが頑張ってくれてるからだよ」

「貴術族がですか」

「いかにも、貴術族の皆さんがここまでの道とここの気温調整を魔術で行い、わしら魔岩族はこの肉体を生かし物資の運搬そして会場作りをしたのじゃ」


 店主は右腕を叩き、己の筋肉を強調する。老人であっても魔岩族である店主の筋肉は、人間では作ることが出来ぬ程盛り上がっていた。

 

「すごいですね。ここは貴術と魔岩双方による努力の結晶なんですね」


 素直に感心し、リガンは説明してくれた店主に笑顔を向ける。

 店主としても人間の少女に誉められたことを素直に喜んだ。

 そんな二人とは違いまたしてもトルクは困惑している顔をしている。

 トルクは笑っているリガンの肩を叩く。叩かれたリガンはトルクの方を振り向いた。


「一体何を話しているか説明してくれ、そもそも彼が話しているのは何語なんだ」


 そう言われリガンは改めて自分達が話している言語が貴術語であることに気づき、またしてもトルクを置いてきぼりにしてしまったことを謝罪した。

 今まで話していた内容が勇者とは関係無いことを説明し、勇者の事に関して聞いてみると約束した。

 そしてリガンは店主に向き直った。

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