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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第4章 祭典と凶報と……
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4.5 戦いの参加者

「思い出した、君は4年前貴術・魔岩連合と魔剛軍がここカラカラ砂漠にて行った三連の戦いに参加していた人間じゃないか」


 ヤハラはトルクに指を指す。トクトが語るトルクの予想外の経歴にリガンは驚きトルクの顔を見た。

 しかしながら当の本人であるトルクは何の感銘も受けていないようである。


「確かに三連の戦いには参加したが、君の顔には見覚えがない」


 あっさりと言うトルクとは異なり、リガンは話の内容について行くのに精一杯である。

 

「え、ちょっと待って。ここって三連の戦いが起こった場所なの」


 話題が逸れているのは承知の上でリガンは尋ねる。そしてそんなリガンの問いを変わらない気さくな顔のままヤハラは答えた。


「そうさ、ここは僕らが魔王配下の魔剛達に大敗北した因縁の地、カラカラ砂漠さ。だからこそその汚点を流すためにここで祭を行う事に決めたんだ」


 ヤハラがここで祭を行う事に決めた理由をリガンらに話す。

 リガンは当時貴術族の村にいた為、貴術と魔岩が魔剛に戦いを挑んでいた事は幼いながらも知ってはいたが、ここカラカラ砂漠が戦いの火蓋となった地までは知らなかったのだ。

 それ故にリガンは驚き、思わず後ろを向く。

 そこには生命の営みなど微塵も感じさせない不毛の大地が広がっていた。


 カラカラ砂漠から視点をヤハラに戻す際、トルクが視界に入る。

 そしてもうひとつ驚くべき事実があったことをリガンは思い出した。


「三連の戦いがここで起こったのも驚きですがトルク、あなたが魔王への反乱組織にいたのも驚きですよ」


 身ぶり手振りで自信の驚きようをトルクに伝えるリガンである。


 魔剛族率いる魔王に世界エラントが侵攻されていた当時、人々は3つの行動から一つを選ばざるを得なかった。

 逃げる、受け入れる、戦う。以上の3つである。

 魔王侵攻の際逃げる事を選んだ人々は、街から街へ転々とし、やがて魔王がいる都市キリヤルから最も離れたラスルト地方西部にあるマリエルへとたどり着く。

 受け入れる人々は言葉の通り、逃げることも戦うこともせず、魔王の配下を受け入れた人々であり、多くの人々が魔王や魔剛の力に恐れなしこの選択をした。

 最後に戦うもの、これは逃げることも受け入れることもせず、運命に逆らおうとした者達が選んだ選択肢である。

 しかし世界エラントが魔王に完全統治されたの知っての通り、戦う者の待ち受ける運命は等しく敗北の二文字である。

 しかし敗北後、戦う者はさらに三つに分けられた。魔王の支配を受け入れる者と、敗北後逃げることを選択した者、敗北した後生き恥をさらしてもなお新たな戦地へと赴く者、以上の三つに。

 

 トルクが三連の戦いに参加したということは人間社会が魔王の手に落ちた後も他種族の為に戦い続ける事を選択した、もっとも果敢で諦めの悪いそして人々思いな人間ということになる。

 リガンはトルクを見つめる。彼がそんな人だとはリガンには思えない。

 何故なら彼は人助けを何より毛嫌いしている質であったからだ。

 ならトルクは人々の為ではなく、自分の為にやったのか、戦う事で得られる物があるというのだろうか。戦う力を持たないリガンには分からない領域である。

 そんなリガンの興味津々な視線を、トルクは邪険に扱った。


「僕の過去はどうだっていいだろ、それよりヤハラ僕の事を知っているということは君も三連の戦いに参加していたのか」


 トルクはリガンの視線を受け流し、ヤハラに尋ねる。一方のリガンと言うとトルクに無視同然の扱いをされ、少し拗ねていた。

 そんなリガンとは関係ないヤハラは、特に気にすることなくトルクの質問に答えた。


「勿論参加していたさ、何せ貴術族最大の街セイナイの男だからね俺は。三連の戦いの準備をしていた時トルク、君を見かけたんだ。人間も結構参加しているなとその時思ったよ」


 人間?その単語がリガンには引っ掛かる。


「ということはトルク以外の人間が三連の戦いに参加していたのですか」


 リガンは拗ねている状態から一転ヤハラに前のめりになって尋ねる。

 尋ねられたヤハラは素直にリガンの質問に答えようとしたが、彼より先にトルクが答えた。


「当たり前だ、三連の戦いには多くの人間が参加していた。僕ら以外にも」


 僕ら、そうトルクはいったがリガンの関心はそこには向かなかった。

 

「多くの人間が参加したということは勇者もそこに参加していたかも知らないんですよ」


 リガンに指摘されトルクは顔を変えた。その可能性に初めて思い立ったような顔をして。


「……おい、ヤハラ魔具は知っているか」


 重苦しい声音でトルクはヤハラに尋ねる。

 下手に触ったらこちらが傷つけられると思われるほど、危なっかしい雰囲気を纏うトルクにヤハラは無論、リガンですら身を引いた。


「え、えぇ、知ってますがそれがなにか」


 つまりながらヤハラは話す。急に雰囲気が変わったトルクを内心恐れたからだ。

 そんなヤハラに関係なくトルクは続ける。


「だったら火の魔具の剣を持つ人間の男を見たことはあるか」

「い、いや、自分は三連の戦いの時只の一兵士だから知らない。け、けどもしかしたらあの人なら知っているかも」

「あの人?あの人とは誰だ」


 トルクは手を伸ばし自身より高身長なヤハラの胸ぐらを掴む。その行動にリガンは割って止めさせようとしたが、トルクの鋭い目付きにけおとされ、動きを止めてしまう。

 勇者の事となると人が変わるのがトルクであり、それは初めて会った頃から変わることはない。

 一方のヤハラは体を震わせる事はなかったが、目には恐怖の色が浮かび、トルクから目を逸らしている。


「この先を真っ直ぐ行くと、出店が立ち並ぶ所がある。そこに魔岩族がやっているアクセサリー屋がある。そこの店主は三連の戦いの際人間達の武器の補修を受け持っていた。だからその者なら魔具を持っていた男を知っているかもしれない。」


 怖がりながらヤハラはトルクの怒りを誘うまいと、言葉を詰まらせることなく話す。それに対しトルクは何もせずそれだけ聞くとヤハラから手を離し、リガンを無視して祭会場の奥へと走って行き姿を消した。

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