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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第1章 出会いと旅立ちと……
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1.6 正体ばれたり

 ばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれた。


 その言葉が永遠とリガンの頭の中を反芻する。けど何故ばれたのか、リガンはそう思わずにはいられなかった。

 それが顔に出たのだろう。トルクが説明に入る。


「だって君の手は体に対して小さすぎる。それに服が濡れているにもかかわらず乾かそうとしない。それでおかしいなと思ったんだ」


 それを聞きまだ誤魔化せるとリガンは感じた。


 (トルクはまだ私が女であると確信した訳じゃない。落ち着け、落ち着け。まだ挽回出来る)


 心は準備出来ていた、しかしそれに体が追い付かなかった。


「だっだから何です。ま、まだ僕が、女だと言う証拠はな、無いじゃないですか」


 しまった、しかしそう思ったときすでに言葉、声は口から離れている。

 この時リガンの声は人前でする低い声ではなく、本来の女性特有の高い声である。その上慌てているのがまるわかりである。そのためトルクが確信を得るには十分過ぎるほどであった。


「やっぱり女の子じゃないか」


 しかしそんなふうに不躾に言われると、反抗心が生まれるのがこの年齢の少女の特徴であり、リガンも例外ではなかった。


「だっだらなんです、何か私にしますか。言っときますけど何か私にしようものならこちらも容赦しませんからね」


 開き直り、一人称を僕から私に変えるとリガンは右の腰に着けてあるポーチからメガトリの粉が入った小袋を持つと臨戦態勢に入った。

 それを見てトルクは素早く手のひらをリガンに掲げる。


「待ってくれ、別に君に危害を加える気はない。ただ早くそれを脱がないと風邪をひくと、そう言いたかっただけだ」


 そう言いトルクはリガンが羽織っていた外套を指し示す。

 確かにこのままでは風邪を引いてしまうのは明らかである。

 意外に優しい所もあるじゃないか、リガンはトルクへの心象を少しばかり変え、お言葉に甘え外套を脱ぎ始めた。


 外套を脱いだリガンは旅人というより、両親に大切にされている村娘のような雰囲気を帯びていた。

 フードによって隠されていた薄い橙色の髪は肩に触れるぐらいの長さである。服装に至ってはズボンを履いた一般的な女性の旅人のスタイルであり、胸の部分は男性にはない、膨らみがあった。

 それだけでも彼女が本当に女性であることが分かるだろう。

 その上所々彼女の服には、白い糸によって紡がれたかわいらしい装飾がなされていた。

 これは旅に出ても、綺麗で有りたいというリガンの願望が少しだけ体現した結果でもある。

 先程の全身を外套に身に纏った不気味な格好から、女性的な立ち姿に変わったリガンを見て、トルクは少しだけ目蓋を上げた。


「驚いた、君ちゃんとした格好をしていたんだな」


 驚く所はそこなのか、そう思わずにはいられないリガンである。ではどういう反応を望んでいたか、それはリガン自身にも分からなかった。


「ちゃんとした格好って……別に私は普通ですよ。外套は胸を隠し為だけの物ですし。問題は身長を誤魔化す方なんですよ」


 リガンは足を上げトルクに見せる。その足にはおよそ20cmもある厚底の靴が履かれていた。


「これのおかげで身長を誤魔化すことが出来るのですが、凄く歩きづらいんです。何とかならないかなと思ってはいるんですが」


 疲れきったような声でリガンは話をしたが、トルクには理解出来ないようである。男が皆言うであろう言葉を口にした。


「だったら男の振りなんて止めれば良いじゃないか」


 出来ないからこうしてるんじゃないか、そう叫んでやりたい気持ちを辛うじてリガンは押さえた。


「私だってそうしたいですよ、けど女一人旅だとどうしても弊害が有るんです」


 リガンが変装するようになってから秘密を打ち明けたのはトルクが初めてであった。

 それ故にリガンの声には今自分が置かれている状況を少しでも相手に理解させたい、助けてほしい。そんな感情が無意識のうちに含まれていた。

 そんな声に心動かされたのか、トルクはこれまた男が考え事をするときみたく腕組みをし、顔を下にうつむかせた。


 しばらくたち、もう寝てるんじゃないかとそうリガンが思い始めた頃になってようやくトルクは組んでいた手をほどき顔を上げた。そしてとんでもないことを口走ったのだ、それこそリガンが予想していなかったことを。


「次の街まで着いていくよ」

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