表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第3章 支配と解放と……
75/381

3.41 死に場所

 トルクの剣が蒸気に包まれる。カタンの炎壁を斬ったことにより剣が高温になったのだ。そしてその高温により、トルクの魔具である剣は冷気を纏えなくなっていた。

 故にカタンの体を斬ったとき、その傷口は氷で塞がれず、傷口から血が溢れ出たのだ。しかし、斬られ胴体から血を流しながら、カタンは笑みを溢す。


「これだよ、これこそが僕が望んでいた戦い!」


 カタンの声音は高揚で満たされていた。

 カタンは餓えていた、戦いを、生死をかけた戦いを。

 そして今この瞬間カタンの望みは叶っていた。胴体に疼く痛みすらカタンにはいとおしく、その傷をつけたトルクとの戦闘はカタンの願望を叶えるものであった。


『土壁』


 斬られた衝撃で胴体を仰け反らせながらカタンは杖を振る。すると地面から土の柱が現れ、トルクに向かい隆起する。

 しかしその魔術は先程と同じ物である。同じ攻撃を二度くらうトルクではなかった。


『そりたて、壁!』


 対抗するようにトルクが魔具である剣を振るう。するとトルクの足元から氷の壁が出現した。土と氷、互いがぶつかりあい動きを停止する。

 カタンの放った土の魔術とトルクが放った氷の魔術、双方の壁によりカタンの視界からはトルクの姿が見えなかった。

 

 どこだ、どこにいる。カタンは目を左右に動かし右、左どちらからでも来て良いように構える。

 この時カタンはあることを失念していた。戦闘は横だけの2次元ではなく、縦もある3次元だと言うことを。

 カタンに影が射す。今までは陽の光が射していた筈なのに。

 つまり……


「上か!」


 カタンが上空を仰ぐとトルクが太陽を背に、飛び降りて来ていた。

 トルクは魔術の壁を回り込んで移動するのではなく、かけあがり上から仕掛けてきたのだ。

 そしてこの距離は武術の、剣の距離である。


 トルクは斬った、カタンを。カタンの体から血が溢れ出て、同時に激痛が彼の体に走る。しかしそれでもカタンは倒れない。

 着地したトルクに向け杖を向ける。


『白針っ』


 余裕綽々の時とは一転、苦しげな声で詠唱し、白針を打ち出す。しかしながら今のカタンの体力では連弾は不可能であり、一発だけである。

 だが着地したばかりのトルクでは避ける暇がない。

 

「ぐっ」


 嗚咽と共に白針をくらったトルクは後方に吹き飛び、カタンの土壁に当たり止まる。

 氷の層を体に貼らせての防御も間に合えず、直撃である。

 土壁に当たり、動きが止まったこの瞬間をカタンは見逃さない。

 

『電空』


 杖を上空に向け詠唱する。すると爆音と共に上空から雷が降り注ぎ、トルクに向かう。当たれば即死の一撃必殺技である。

 それを前に飛びトルクはかわす。トルクとカタン両者の間は避けようのない距離となった。

 

 この時カタンは笑みを浮かべていた。戦いに餓えていた彼は同時に死に場所を求めていた。

 そして今彼は死に場所を見つけたのだ。自分以上の手馴れにより与えられる死、それ以上の価値を彼は知らない。


 トルクの剣はカタンの胴体を捉え、肉体へと差し込まれた。溢れでる血はもう戻ることはない。

 カタンは自身の血の海の上に、仰向けになって倒れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ