3.24 重い一撃
メガユイ粉とは空気に触れることで光を発する言わば、簡易の閃光魔術である。
しかしメガユイ粉の性質上メガトリ粉より精製が難しく、また相手を攪乱するのにメガユイ粉でなければならない状況は極端に少ない。またわりかし高値な小瓶を割らなければならない事もあり、リガンはメガトリ粉の方を好んで使っていた。
しかしこの敵味方入り乱れた状況下では数少ないメガユイ粉が功をなす場面であった。
地面に叩きつけられ割られた小瓶からメガユイ粉が大気にさらされる。
大気にさらされたメガユイ粉一粒一粒が光を発っした。一粒一粒が小さな光でも集まればそれは強烈な閃光となる。
今この瞬間リガン周囲に居た者は、全員叫び声に惹かれリガンの方を注視していた。その為リガンがメガユイ粉を用いて放った閃光をこの場にいたほぼ全員が直視したのである。
閃光から避けれたのは、閃光を放った本人であるリガンと彼女の体と顔を密着させられ直視することを避けれたラヒン、そしてリガンの行わんとする意図を見抜き目をつぶったトルク以上の三名である。
それ以外の者は目に手を当て悶え苦しむ結果となった。
被害者はカタンの手下共に加え、トラルンの住民にもおり、その事に少しばかりリガンの心が痛んだが、ここから逃げ延びる以上仕方がない事ではあった。
立っているのはリガン・トルク二名のみであり、それ以外の者は地面にて顔を手で押さえ、悶絶している。
トルクは魔具である剣を鞘に納めるとリガンに近づく。
「ありがとう、お陰で助かった」
「……人の善意を受けとるのは嫌いじゃないんですか」
トルクの礼にリガンは突っかかった言い方をしたが、これは彼女なりの照れ隠しであった。
そんなリガンの返答に、トルクは以前と変わらぬ、平坦な声音をあげる。
「君とはもう他人同士ではなく旅の仲間だからな。仲間同士なら助け合うのは当然だ」
顔を背けたリガンにトルクは生真面目に説明する。その考え方は若干都合が良いようにリガンには思えたが時間がない以上、追究はしない。
時間がないという考えはトルクも同じらしく、リガンの胸に抱かれていた獣丸の子供であるラヒンを脇目で見ただけで、追究しようとはしなかった。
同様に起きているトルクを見ても、ラヒンは質問しようとはしなかった。
……本当はラヒンがこの時言葉を発しなかったのはトルク相手に緊張していたからなのだが。
「話は後だ。それよりここから早く出よう」
トルクの提案にリガンは首肯すると、リガンが先頭を取り走り出す。
出口である門までの道案内をするためである。
道中、カタンの手下達である監視係達に出会ったが、先程の奴らと同じく手が離せない状況下にあり、リガンらを追ってくる者はいない。
その為出口である門まで楽な道中の筈であった。
そうやって走り続け出口である門が見えてくる。しかし門の他に別の存在がいるのがリガンには見えた。
門の前に一人の男が立っている。最初輪郭しか見えず、リガンには誰が立ち塞がっているのか分からなかったが、近づいて来るにつれ相手の体格そして顔が分かってきた。
背をまっすぐ伸ばした姿勢のいい立ち姿。濃くなく、さっぱりした顔つき。灰褐色の刈り上げた髪。
その男はカタンである。リガンらを逃がさぬよう門の前で待ち構えていたのだ。
カタンの右手には杖が握られており、それをリガンらに指し示た。
それを確認した瞬間にはもう手後れであった。
「トルク止まって!」
リガンは直ぐ立ち止まりトルクの方、後ろを振り向く。しかしそんなリガンの目に入ってきたのはカタンの魔術を腹に受け、後ろに吹き飛ばされるトルクの姿であった。




