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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第3章 支配と解放と……
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3.23 再会

 取られていたポーチを取り返したリガンらはトルクがいると思われる声の方向、建築地区目掛けて走っていた。

 

 働かされていた農業地区を出て、リガンと胸に抱えられたラヒンはカタンの住居であり石造りの塔を横切る。

 初めてカタンの塔を見たときリガンは石造りが織り成す雄大さ、頑強さに心奪われ、しばしの間看取れていた。

 しかし今やその心はなくなり、塔を見てもリガンの心は動く事はない。

 しかしリガンがそうでも他の者、特に初めて見たラヒンにとっては驚嘆しべき光景である。

 リガンに抱かれていたラヒンは始めて見る石造りの建物に心奪われ、凝視していた。


「凄いもん……」


 意識せずに出たのであろうラヒンの感嘆の呟きを耳にし、リガンは思わず苦笑した。

 虐げられている人々への思いや、そして物珍しげな物を見たときの反応といい、人間も獣丸も思うところは同じだと分かったからであった。


 塔を通りすぎリガンらは建築地区へと足を踏み入れた。

 建築地区は農業地区と同様混乱状態であったものの時間が経った為か、落ち着き始め住民達は監視係の管轄下に置かれ逃げられないように見張られている。

 そんな只中をリガンらは走り抜けた為、当然ながら目立つことこの上なく、周りの者から注視された。


「お前なに逃げてんだ、早く元の場所へ戻れ!」

「止まれ、さもなくば命はないぞ!」


 カタンの手下共がリガンらを止めようと口々に制止を勧告するが実力行使に働こうとする者は現れない。

 カタンの手下である者達からしてみれば、監視の立場を離れ、リガンらを追いかけたら、自分の管轄下である住民達の制御が効かなくなるのは自明の理であり、また逃げ出した者を追いかけるほどの人員が今はいなかったのである。

 その為リガンらは捕まる心配なく走り抜けることが出来たのだ。

 そしてその結果を作り出した人員不足の原因は、トルクであった。


 リガンらはようやく声の発声場所であり、トルクが眠っていた場所である建物へとたどり着く。

 リガンらがここを離れてから約四時間が経過している。

 そんなリガンらがたどり着いて早々目にした光景はカタンの手下共とそんな敵に囲まれながら善戦しているトルクの姿であった。


 トルクを囲む相手の数は10人は越えており、魔具を手にしたトルクでも、倒されはしないにしても時間が掛かりそうである。

 しかしこのような状況下においてもトルクは魔具による氷の魔力で刀身を包み込み、斬っていく相手の切り口を凍らせ止血させていく。

 リガンとしてはその魔力を攻撃方面へと回せばいいのではと思うのだが、トルクに助言などすれば戦っている相手に自らの存在を示してしまうことになり、危険を省みればそうすることは出来ない。

 しかしだからといってこのまま見守っていれば時間がたち、トラルンの混乱状態はいずれ鎮静化し逃げることなど不可能になる。

 リガンらが逃げ延びる為には今の、この混乱状態を利用するしかないのだ。

 その為にもトルクには早く戦いを終わらせてもらわなければならない。

 リガンは二つあるポーチの中からメガトリ粉ではないほう、メガユイ粉を取り出した。


 基本メガトリ粉を使うリガンに取ってメガユイ粉は使う機会があまりなく、トルクと出会う前に一回使ったきりである。しかしこのような敵味方入り乱れた状況下にあっては催涙性を持つメガトリ粉は適切ではなく、メガユイ粉の出番であった。


「トルクっ!」


 リガンはそう叫んだ。

 この時初めてトルクを含め戦いの渦中にあった者は自分達を静観してした者の存在に気づいた。

 カタンの手下達は声を叫んだ者の正体が誰なのか、また何故自らの存在を公開したのか、そしてその者が手にしている物が何なのか誰一人分からなかった。

 しかしトルクは違う。トルクは叫んだ者がリガンであり、そして自らの存在を公開したこと、そして手にしている物が何であるか理解していた。


 そしてトルクが取った行動は目をつぶる事であった。皆が目を開いているなかトルクのみが目をつぶっている。

 リガンはトルクが目をつぶった事を確認したのちラヒンの顔を体に密着させる。


「むごっむごむご」


 突然の行動にラヒンの息が苦しくなるが、メガユイ粉を使う以上リガンはそうせざるを得なかった。

 こうして準備が整い、リガンは手にしたメガユイ粉が入っている小瓶を地面に叩きつけた。

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